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王都ギルド

朝食を終えた嬢子達は、王都へ向かうべく支度をし、

10時には預けていた馬車と馬を引き取った。

ホテルの玄関では、通常通りコンシェルジュがお見送りした。

嬢子は、自分の世界のホテルと同じような対応に驚きながらも

オルガにあれこれ言われる前に、黙って馬車に乗り込み

ナトクの騎士達と共にホテルを出発した。


「ここから先は、休憩はないの?」

『いえ、王都との中間地点で小休止出来る村で休憩を取ります』

「村で休憩が出来るの?」

『はい。宿泊施設もありますが、泊まるほどの距離はないので

1時間程馬を休ませたら、出発します』


ただひたすら何もないが、道として舗装された平坦な土地を馬車で通る。

でこぼこ感が少なく、馬が横整列して10頭並べそうで

軍事面が結構整っている気がする。

小休止で立ち寄った村は、カフェがあり、旅人を持て成す。

(完全にカフェだよね。しかも、江戸時代を思わせる外観)

コーヒーときな粉もちが出て来て、驚かされ。

それを嬢子以外は、何も思わないのか美味しいと平らげている。

(これ、美味しいけど。この世界の物で作られているけど、

発案は違うはず。この人達、知ってるのかしら。

これは、私と同じ国の人でないと、知らない物。

もしかして、私の他に同じ世界から来た、同郷の人がこの国に

いるというのかしら?)



小休止を終え、また馬車で揺られてようやく王都に入る門で止められ

王都へ入る為の行列に並び、身分証明を確認され、ようやく城下町へ入ると

夕刻になっていた。

傭兵達がギルドで宿を紹介してもらう連絡をしていたようで

全員でギルドへ向かった。

この国では、宿へ直接出向いて空きを確認するよりも、

宿が登録されているギルドで空きを確認して貰った方が速いというシステム。


ギルドの施設前で、馬車や馬を預かってくれる職員に渡し、

施設へ入ると、オルガと傭兵1人が宿案内の受付へ向かい

後は施設内にもカフェコーナーがあり、それぞれテーブル席について

寛いでいた。

(お酒を飲むところもあるかと思ったけど、カフェなんだ)

物珍しさから嬢子は、施設の内部をジロジロと見た。


図書室があそこで、仕事の掲示板があそこか。

ランクごとに掲示板が別れているのか。

受付は王都にあるだけあり、人数が多い。

テーブル席が多く、空いている席よりは埋まっている席が多い。

獣人、エルフ、いろいろな人種がいる。帯剣している人が多い。

人族は少ないのかな。

そんなことを思いながら、ふと扉から初めて見る人族が入って来た。

その人物が、どうしても自分と同郷の予感がした。

ララや他の騎士達、傭兵達がよそ見をしている間に

静かに席を立ち、その人物の跡をつけた。


受付を通り過ぎ、奥の部屋へと歩いて行く。

途中中庭に出て、その奥には訓練施設があった。

キョロキョロしながら、はぐれないようについて行く。

「俺に何か用か?」

訓練施設と書かれた扉前で、先を歩いていた人物が振り返る。

キョロキョロ辺りを見回していたので、跡をつけていた人物が

振り返ったことも立ち止ったことも知らず

その人物にぶつかって、嬢子はしりもちをついた。

「いったああ」

「わ、悪い」

相手は慌てて手を出し、しりもちをついた嬢子を引っ張り立ち上がらせた。


「ごめんなさい。初めて来た場所だから、あちこち見てたの」

「そうか。俺に用は?」

「あ、そうそう。聞きたいことがあったの」

「聞きたいこと?」

「私、浜名和はまなわ 嬢子じょうこ。貴方、私と同郷の人じゃない?」


その質問に、マチは驚いた。

目の前の少女は、どこから見ても、あちらの世界の人間。

「え?ということは、異世界召喚?」

「そうなんです」

「・・・。また、どうやってここへ」

「今はナトク国の人間として、商人で」

「俺に声を掛けたってことは」

「あの、帰り方知らないかと思って」


侍女や諜報部の騎士達と一緒に来ていると伝えると

訓練施設へ入らせ、そこでここまで来た経緯を話す。

「それは、酷いな。戦争の道具か。というか、初めて俺に会ったのに

よくそこまで話せるな」

「だって、同じ国の人だから」

「・・。あ、そう。同じ国だからね。信頼されていいけど。

危機感がなさすぎる」

残念な顔をすると、嬢子は自分は間違ったのかと怖くなった。

「貴方、悪い人なの?」

「いや。俺は、普通にこの国に住んでいる異世界の人間。

ギルドに登録してるし、学校へも行ってる」


詳しいことは話すと厄介な事になるので、当たり障りのない

事実を述べると、彼女はホッとしたようだ。

「そうなんだ。帰ることが出来るんだ」

「俺の知り合いが、元の世界へ帰せる。どうする?このまま連れて行って

やろうか?」

「今は、無理。私が行方不明になれば、一緒に来ている騎士達が

殺されてしまう」

逃亡出来ないよう、王がこの見学という諜報活動に牽制の為だと

条件を付けて来た。

それが、10日間の猶予。

この国を調べ、必ず戻ることを約束させられた。

もし、逃亡すれば、自分に優しくしてくれた人達とその家族が殺される

ことになる。


「私は、帰りたい。戦争の道具にされたくない」





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