一か月という時間経過
あれから状況はそのままで一か月経った。
諜報部とギルドの暗部の成果で
隣国の異世界から来たという者が、少女ということが判明。
しかも、マチと同じ時代で、同じ国出身ということまで。
王は、在人に携帯で何度か相談し
在人もいろいろ自分なりの意見を述べていたが
戦争の準備は進んでいる。
国の雰囲気は、まだ明るいものの、隣国が国境から望遠鏡で見える範囲に
軍隊で攻めてくる様子が伺えたら
直ぐに反撃するつもりで、南の国境から離れているものの
道が王都へ続いていることもありホテルは休業し、軍が占領している。
もちろん在人が了承して。
ホテルの従業員は、自分から了承した者のみ残り、後は当座の給金を渡し
実家に帰省させていた。
なので、実質ホテルには創業当時からいる仲間20人で運営されていた。
『戦争は嫌だけど、このホテルで最期にしたいの』
在人とエフィルの家でお世話をしているメイドは、既に帰る故郷も
家族もいないことで、ホテルの従業員を家族だと思って
過ごしている。それは、メイドの彼女だけでなく
残った者達は、皆同じ想いだ。
在人は、ホテルから離れる従業員達を見送った後、
何度もため息を吐いている。
エフィルと話をし、トーイ(マチの父)と娘エリイに
相談し、マチが残していった防犯カメラとトーイが開発した魔道具を
使って、一同で対応することになっていた。
『貴方、大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫。やることは分かっているよ。私は医者だから。
皆が怪我をしたら、直ぐに治療していく」
『そうですわね』
在人の決意に、エフィルは頷いた。
ふと顔をあげて、エリイと話をしているトーイに視線を移す。
「トーイ君」
「はい、義父上。どうされました?このホテルは、私も守らせて頂きますから。安心を」
あちらの世界での仮の姿は返上し、今やこちらの世界の最強魔術師として
本来の姿に戻り、トゥーレ・カールナーとして返事をしてくる。
元々姿を消した時に、バレないよう姿を変え、名前も偽っていた。
それは、妻もその両親も承諾済。
「あ、まあ。その姿に戻るなら、トゥーレ君と呼ばないといけないかな。
今はその本来の姿は心強い。いや、本題はマチのことだが」
「呼び名はどちらでも。マチですか?一応、学園のテキスト3冊目に入っています。
1か月で5年分の3割近くの学習をさせていますので
少し疲れがあり、週1は休憩を取らせています」
自分はSEだと言って、マチはその道に進み、父親である自分の出自については話をしてこなかったものの、実は父は魔術師なので
SEで仕事をしている息子が
魔術師になってくれないかな?という遠い願望はあった。
それが、どういうわけか、隣国がおかしな行動をとったことで
自分の遠い願望が今叶おうとしているので、父親としてホクホクな
テンションが高い人になっていた。
「トーイ。ちょっと浮かれてるわよ。大丈夫なの?」
「ははは。だってマチがどんどん新しい魔術を完成させていくのが
嬉しくてさ。俺の学生時代のようで、流石俺の息子って思ってさ」
怖いくらいにイケメンがだれた顔。
彼の義両親と妻は、イケメンの最高に崩れた笑顔は見たくなかっただろう。
そんなホテルでの会話がなされている頃。
隣国ナトクでは、異世界から召喚された少女が、王女のような扱い
王族の部屋のような豪華な部屋で、寛いでいた。
「凄いわ。これがファンタジーの世界。私、もしかして勇者?」
そんな言葉に、侍女としてお世話をすることになったオルガ首を傾げる。
『ファンタジー?勇者?』
「え?違うの?だって召喚されて、魔物とかに魔術を使って倒すんだもの。
相手は魔王なの?」
『マオウ?それは何でしょうか?』
侍女と話がかみ合わない。
それが少女にはもどかしい。
「ええ?それじゃあ、何故魔術で攻撃練習するのかしら?」
召喚されて一か月経つのに、何故魔術訓練があるのか理解せずに
毎日訓練している彼女。
実は召喚された次の日に
理由を言われたにも関わらず、異世界に来たことで興奮して
最期まで話を聞いてなかったので、まだ理由を知らなかったというオチ。
それを周囲は気付いていない。
本人が分からないと告げているのに、あれだけ説明したのに
(召喚した日から、訓練前まで詳しく説明をしているので
興奮してあちこちに目が行って、話し半分しか聞いてないとは
思ってもいない)
分からないなんておかしいと、勝手に周囲もこれまた
少女の行動や告げている言葉に耳を傾けていなかったので
コミュニケーション不足といえよう。
『ジョーコ様、そろそろお時間になります。お支度を』
「あ、お昼ね。今日は何かしら」
異世界から来た少女
浜名和 嬢子 はまなわ じょうこ 16歳
大企業の令嬢 茶髪 黒目 我儘 人の話を最後まで聞かない
性格は、良い時と悪い時と半々
根は良い子だがツンデレ
異世界では、皆名前が上手く呼べず「ジョーコ・ハーマ・ナーワー」
侍女
オルガ・ソーテ 16歳 茶髪 茶目 160センチ
ナトク国出身 嬢子の世話担当




