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近づく終わり

短いです。溜回

 事の次第。自分でもどうかと思わんでもないのだがまあその辺は振り切り、決断した。

 控えめに言っても優柔不断ということになるのだろうが俺は愛希や明日香や霞さんや華凜ちゃんと俺が笑い合っているのがいい。

『ふーん…』

 まあそういう次第を電話越しに伝える。

『まあいいんじゃない? それでいつ帰ってくるの?』

「いや、それは未定…」

『はぁ!?』

 今まで淡々と話を聞いていたものの、まだ帰らない予定だと言ったらさすがに怒声を浴びせてきた。

『何でよ。それで問題解決じゃないの?』

「どうかねぇ」

 考えさせてではなく待ってください、とそう言った。多分…信じたいのだがこればかりは分からん。

 というか愛希よ。お前はいいのか?

『んー…? 今さらじゃない? 華凜ちゃんとかずっとそんな感じだったしぃ~』

 そんな風に思っていたのか…いや、よく考えると確かにそうとしか言えんが。

 しかしだな。止めるなら今だぞ?

『いや、たとえばバカ兄貴が今さら『愛希だけを愛してるんだ!』とか言われてもぶっちゃけ胡散臭くて信用できないし』

 お前そんな風に思っていたのか。おにいちゃんちょっと悲しいぞ。

『それがバカ兄貴でしょ? それにしょうがないじゃない…好きなんだから。どうかなぁってそりゃ思うけど、そういうところも、そういうところが好きだなぁとか。そんな風に思っちゃうんだから、今さら身を固めるとかそんなことされても、困る』

 なるほど。決断し受け入れたはずの道で今でも悩んだり立ち止まったりしてしまいそうになったりすることがあるが、逆にそれまで悩んでいたことが思いの外、肯定的に受け入れられる時も来る、と。つまりはそういうことか。

『愛希が暴走し始めたので替わるぞ』

 後ろで頭を抱えて叫んでいる断末魔が聞こえた。

『まあ別に不満があるわけではないとも。たとえ誰もが後ろ指を差そうとも自らが誇れば問題はあるまい』

 強いて言うなら、と明日香は区切り

『我ら抜きで話を進め過ぎだな』

「あーそれに関してはすまん」

 勢いという部分もある。ケツに火が点いた状況で導き出したようなもので、けれどそれはいつでも俺の胸の内にあったことであるのだと、自らを誇る。

『ふっ…まあ精々覚悟しておけ。愛希のやつも今は色々とあって控えているだろうが冷静になればタガが外れるだろうさ』

 冷静になればなのか。言い得て妙というか…うん。霞さんを、連れ戻さないとな。

『それでどうだ? 霞の方は口説き落とせそうか?』

「そうだな。信じてるよ」

『そうか』

 ケラケラと笑う。答えになっているのだろうか、と思うが。

「よし。それじゃ華凜ちゃんに替わろうか」

『む。すまんな』

「…また忘れそうになってたのか」

『…我は…いや我だけではないか。実の所、華凜は油断ならぬ者と見ていてな。かと言って卑怯な方策を取るつもりは毛頭ないのだがどうにも排除しようとしてしまうのであろう』

 意識していないのではなくむしろ逆で、脅威を感じて遠ざけてしまう、と?

 真偽はともかく、確かに華凜ちゃんは明日香たちとは微妙に違う立ち位置だ。それはつまり華凜ちゃん自身も意識しているし、迫ってきた因縁があるのだが…

『しんいちおにーちゃん?』

 言い訳の様ではあるがとりあえず会話に集中することにしよう。

 とはいえ俺の考えを説明するのも憚られるのでとりあえず霞さんを必ず連れて帰る、とそれだけを伝える。

『そっか。よかった』

 ほっと溜息を吐く。

『またみんななかよしだね』

 何でもわかっているように俺の心を的確に突いてくるから困る。

『わたしもがんばるよ! とりあえずかえってきたら…』

『あ! 華凜ちゃんダメ!』

 何か言いかけた華凜ちゃんの言葉を遮るように愛希が叫ぶ。

 え? 帰ってきたら何があるんだ?

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