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<2-25>侵入者12

「がはっ!! …………っ、……はっ、…はぁ、はぁ、……」


 背中に強い衝撃を受けて息が詰まる。

 頭もどこかに打ち付けたようで、痛みを感じた。


 ただし、それだけだ。


「…………生きてるのか?」


 思わずと言った感じて小さく呟き、その場で立ち上がり、軽くジャンプをしてみる。


 うん、変に痛い場所も無いし、五体満足のようだ。

 

 たしか、敵が放った巨大な火の玉に当たったと思ったんだが?


 自分の身に何が起きたのか、それを確認しようと周囲を見渡せば、味方が安堵の表情を見せた。

 そして、驚いた表情を浮かべる敵に向けて、攻撃を再開し始める。


「どうやら無事なようだね。安心したよ。

 恐らく何が起きたのか把握して無いだろうから、状況を伝えさせて貰うが構わないかな?

 もし、説明は必要ないと言うのであれば、カラスに突っつくよう命じて欲しい」


 そんな中、サラの声がカラスを通じて届いた。


 どうやら、彼女だけが状況を把握しているらしい。


 サラ曰く、敵の片方が制御だけに力を注いでいる点に着目し、炎の力を増してやれば、制御不能に陥り、魔法が消えるのでは無いかと考えたらしい。


 そして、自身の生活(ライター)の魔法をギリギリまで魔玉に付与し、投石器で巨大な火の玉に放り込んだ。

 すると、炎の量が急に増えたことにより、サラの予測どおり、兄の魔法制御が利かなくなり、空中で爆発した。


 その結果、俺は吹き飛ばされるだけで済んだ、と言うことらしい。


「……消滅じゃなくて爆発したことには驚いたが、こうしてキミも無事な事だし、結果オーライと言うことにしておいてくれると嬉しいよ。

 いやー、爆発したときは焦ったねー」


 ……おい、それって結構やばかったんじゃねぇの?

 消滅するってのと、制御不能で暴走して爆発するってのは、大きく違ってないか?


「ちょ、んっ、……ぁっ……。い、痛いよ。

 ……ボクが悪かったから、おっぱいを突っつくのはやめてくれないかな。

 罰なら、戦闘が終わった後で受けると提案させて貰うよ。…………2人っきりのときに」


 ギリギリな綱渡りだったと知り、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。

 

 ……まぁ、助かったのは事実だしな。サラに感情をぶつけるのもおかしな話か……。

 最後の方に何か言っていたが、俺には聞こえなかった、……そういうことにしておこう。

  

「偽勇者殺害は失敗か……。2人とも、魔力の残りはどのくらいだ?」


「……俺は、小さいのが数発と言ったところです。弟の方は……」


「すみません、魔力切れっす」


(偽勇者が武器から手を離したようだが、他は無傷か……。

 どうにか、偽勇者だけでも殺りたかったのだが、これ以上は無理だな)


「前衛に合図を送れるだけの魔力は残っているな?

 撤退の合図と同時に、全力で壁を張る。全力で撤退するからその――なっ!!」


 敵のリーダーが新たな指示を出すため、チラっと後ろを振り向く。

 すると、そこには自分の方へと向かって飛んでくる矢と、5人の男の姿が見えた。


「がふぁ」


「ッチ!!」

 

 瞬時に魔法の壁を自分の背後に展開したものの、飛んできた矢は全部で5本。


 自分の身は守れたが、炎の兄弟の方は間に合わなかったようで、2人の体に矢が深々と刺さった。


(なっ!! 背後から新手だと!?

 ……偽勇者(トップ)と姫2人を囮に背後から奇襲とは、常識を逸脱していると言うほか無いな。

 いや、それよりも、逃走ルートの確保のために、道中は隈なく索敵したはずだのだが。どうなってやがる)


 それまでずっとポーカーフェイスを保っていた敵のリーダーだったが、次第にその表情が崩れ始めた。

 そして、追い討ちをかけるように、新人兵(リアム)達が吼える。


「魔物共を駆逐するぞ!!」


「「「イエッサー」」」 


 どうやら自分達は敵に囲まれたらしい、そんな絶望的な情報に、前線を支えていた2人が、思わずといった様子で、後ろの状況を確認した。


 いくら経験豊富な兵士といえど、いや、経験豊富だからこそ囲まれる恐怖を知っており、振り返らずには居られなかったようだ。

 

 無論、その行動は大きな隙を生む。


「……はぁぁぁーー!!」


 初めに動いたのはクロエだった。


 敵の目が自分から逸れた瞬間、サイドステップで敵の横に回りこみ、スライムナイフをフックのような形に変形させ、敵の左肩に突き刺す。

 そして、そのスライムナイフを引っ張るように飛び上がり、渾身の力を込めて敵の喉を引き裂いた。


 どうやら身長差を埋めるために、敵の肩を利用したらしい。


「これで終わりかなー? 楽しかったよー」


 敵のリーダーが背後に気を取られたことにより遠距離攻撃を防いでいた壁が消えた。

 その隙を突いて、サラの放った石とアリスの土魔法が、左肩、右腕に直撃する。


 その結果、ノアの攻撃を防ぐ物は無くなり、短剣が腹を抉るように通り抜けていった。


 初めの2人に、リアム達が2人、クロエ、ノアが1人ずつで計6人。

 これで残るは敵のリーダーただ1人だけだ。


「近距離組みは放れて。

 遠距離組み全員で囲むように攻撃するぞ」


「「「「イエッサー」」」」


「えーーー、もっと、血が見たいー」


「……また今度な」


「…………はーい」


 気を取り直して、全員で周りを囲う。


 いくら防御が得意な魔法使いとは言え、俺、サラ、アリス、リアム達の8人で一斉に攻撃されたのでは、防ぐすべは無い。


 最後は、俺が撃った弾が頭に当たり、魔法を使う魔物達との戦闘が終わった。

 

 みんなに手を汚させ、死を覚悟する自体に発展し、結局俺は、何が出来たのだろう?

 防御施設をより強力にしないといけないな。


 ……それと、……この、…………人達を丁重に葬らないとな。 

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