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<2-23>侵入者10

10万ユニークを突破しました。

誠にありがとうございます。

「このタイミングでトップ会談がしたいと言う事は、停戦協定かそれに準じるような内容か?」


「……あぁ、その通りだ。話が早くて助かるよ。

 しかし、その前に、すこしだけ確認したいことがあるだ。いいかい?」


「確認したいこと?

 ……まぁ、いいか。聞くだけ聞こう。答えるかはわからないがな」


「それで十分だよ。

 ……何故、子供だけで戦闘を? しかも、君以外は、全員女性じゃないか」


 最初の質問が、俺達の軍の構成について。


 ただし、これは別に調査をしているとかではなく、心の底から思った疑問なのだろう。

 なにせ、戦闘中も戸惑っていたくらいだしな。


 まぁ、このくらいは答えてもいいか。


「…………俺達は肩身の狭い思いをしていてな。

 女、子供でも戦わないと生き延びれなかった。その結果だな」


 サラとアリスは王族の嗜みで覚えたらしいから、全員が全員ってわけじゃないんだけど、まぁ、みなまで言わなくてもいいだろう。


「……そうか。……っ!!

 ……あそこに居られるのは、サラ様とアリス様にそっくりなのだが、本人だろうか?」


「……王族が前線に居られると思うか?」


「しかし、あの魔法……。いや、いい。気にしないでくれ」


 ッチ。一応納得したような返答を返してきたが、恐らくはバレたのだろう。

 

 姫2人の所在が知られたからと言って、なにがが起きるって訳でも無いんだが、敵に渡る情報は少ないほうが良かったんだがな。

 このことが、俺達の不利にならなきゃいいが……。 


「それじゃぁ、次の質問だ。

 何故正面から正々堂々戦わない? 君達の戦闘力なら、正面から立ち向かってきても十分戦えたはずだが?」


 ん? どういうことだ? 正面から正々堂々?


 ……もしかしてあれか?

 歴史上のいつか知らないけど、我こそは何々である、いざ尋常に勝負!! 的な事を言って、1対1での戦闘がメインの世界ってことか?


 でも、魔法使いが居る世界だろ? 範囲魔法でバーン、みたいな世界だろ?


 ……あれ? いま思えば、アリスが範囲魔法使ってるの見たことないな。もしかして、魔法使いも1対1でって感じか?


 いや、さすがにそれはないか……。

 ッチ、こんなことなら、サラとかに、この世界の戦闘に関する常識を聞いとくんだった。……いや、けど、俺の仲間って常識はずれな面子がほとんどみたいだし、聞いていたとしても無だったかもな。

 それに、今回の戦い方についても、誰からも非難されなかったしな。


 ……もしかすると、誰一人として、この世界の正々堂々を知らないんじゃないか?

 あー、えーっと、どうっすかな。

 この質問に対して答えを濁すってのは拙いよな……。


 ん? そういえば、クロエ、ノアが切り込む直前、リーダーの魔物がこちらも待ち伏せをするぞ的な事を叫んでいたっけ。

 確かそのときに卑怯がどうのこうの言ってたような気がする。


 ってことは、待ち伏せが卑怯、罠を張るのが卑怯、姿を見せて戦いなさい、ってことか?

 

 あー、今思い返せば、これだけ近くで銃をぶっ放しているのに、場所がばれないとか、岩を盾代わりに使っているサラ達も、攻撃の瞬間だけは、敵に見える位置に出て行ってたりとかしてたな。


 居場所がばれないのは、相手が銃を知らないからだ、なんて思っていたが、それに加えて、攻撃は見える敵からしか来ないってことが常識だと思っていたからってのもあるのかもな。


 それを先に気がついていれば、サラ達に、ずっと隠れて攻撃してて欲しい、って言ったのに。


 どーも、初めてのまともな戦闘で焦っていたんだろうな。


「……知っていると思うが、俺はこことは成り立ちから違う世界より召喚された身であり、この世界の戦い方には疎い。

 戦闘の作法に間違いがあったならば、謝罪しよう。

 ただ、今までの戦闘方法が正々堂々では無かった、という言葉は取り消して貰いたい」


「……どういうことだ?」


「俺達は、自分達が出来る最大限の方法で戦っている。

 勇者としての誇り、戦士としての誇り、騎士としての誇り、魔法使いとしての誇り、貴族としての誇り、様々な誇りがあると思うが、俺が誇りとしていることは、仲間の安全を守ること、ただその1点だけだ。

 それ以外は小事であり、より安全な戦い方が出来るのであれば、それ以外のことはすべて切り捨てる。

 俺は、いや、俺達は、その矜持に則って正々堂々と戦っている。

 貴方には貴方の誇りがあるように、俺には俺の誇りがあるということだ」


「…………、……なるほど。

 理解は出来ないが納得はした。

 戦闘方法を見る限り、交渉しても守られないのでは無いかと思っていたのだが、どうやらこちらの知識不足だったようだ。

 それに、君達の誇りを汚す発言をした部分に関しても、訂正して侘びを入れよう。申し訳なかった」


 ……どうやら、俺達が信用できるかどうかも含めた質問だったようだ。 


「さて、本題に入ろう。

 単刀直入に言うが、俺達をこのまま帰してもらうことは出来ないか?

 戦況は五分五分、互いに決定打に欠けた状態で、このまま続ければお互いに損失を出し合うだろう。

 こちらから攻めているうえに、そちらの忠告を無視しての突撃だ。むしのいい話だとは思うが、君も仲間を失いたくは無いのだろう?

 もちろん、2度と君達には手を出さない。どうだろう?」


 たしかに、戦況を考えると、このまま帰って貰うのが1番良いな。

 互いが激しくぶつかりあっている現状では、クロエ、ノアの2人を筆頭に、誰かが死に至ってもおかしくないし。


 最初の不意打ちが失敗した時点で、俺達の有利はかなり減ってしまっているしな。


「……そうだな。俺も悪くない提案だと思う」


「よし、だったら決まり――」


「いや、悪いが断らせて貰う」


 確かに魅力的な提案ではあったのだが、俺が出した答えは、拒否。

 

 和解という甘く美味しそうな道を振り切り、俺は戦闘の続行を選んだ。

 今にも挫けそうな弱い心を無理やり押し付けながら。

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