表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/139

<2-8>岩のある部屋

「……あれ? 他のやつらは?」


「あ、兄様。おはよう。

 えっと、皆は忙しいから、不参加だってさ。

 サラ姉とアリス姉は土の魔玉造りで、クロ姉は新人さんと一緒にダンジョン改造って言ってたよ」


「人数が少なくて心配かも知れないけど、お姉ちゃんが居るから大丈夫よー。

 なにがあっても守るからねー」 


「……了解。頼りにさせてもらうよ」


 魔力を流出させてから5日。


 空を飛ぶ大きなマリモを発見した日から、朝食前にみんなで魔物の増え具合をチェックすることが、最近の日課となっていた。


 あ、そうそう。マリモを倒したときにドロップした藻なんだが、お湯で茹でて塩で味を調えたら普通に美味しかったぞ。イメージ的には、アオサのスープって感じだった。

 出来れば味噌汁にして飲みたかったが、味噌が無いから仕方がない。


 まぁ、そんなわけで、今日も日課を果たすべく、昨日と同じくらいの時間に洞窟へ転移したのだが、そこに待っていたのは、ミリアとノアだけ。

 他のメンバーは別で作業をしてるため、来れないらしい。


 メイン戦力であるクロエとアリスが居ないのは正直心もとないが、いままでダンジョン内で出会った魔物はマリモだけで、戦闘らしいことなんて一切無かったし、いざとなれば移動の魔玉で逃げれば良いか、ってことで、3人だけでダンジョンに突入することになった。


「それじゃぁ、いきますか」


「はーい」


 そんなゆったりとした掛け声と共にカラスを2匹呼び寄せて左右に配置し、万全の体制でダンジョンの入口を潜る。

 すると、すぐに大小様々な石が点在する部屋に出た。


「うーん?

 今日も真ん中の石がすこしだけ大きくなった……かなぁ?」


「どうだろな。俺的には昨日と変わらない気がするが」


「お姉ちゃんは、おっきくなったと思うわよ」


 とは言っても、新しく石のある部屋を作った訳ではない。


 魔力を流した翌日。

 やっぱマリモだけじゃ意味ないよなぁ。ってことで、より多くの魔物をダンジョンに住まわせる必要があると思い、その手段として、部屋の増築や魔力流出量の増加を考え、ダンジョンコアに話を持っていったのだが、却下された。


 ダンジョンコア曰く、現状で部屋を増やしたり魔力量を増やしたりするよりも、部屋の中に障害物などを作ったほうが、より早く魔物を成長させれる、と言われたので、そういうことならと、石スライムを購入し、部屋の中で放し飼いにした。


 今更発覚したことなのだが、従者として召喚するスライム達は、もともとダンジョンに仕え、ダンジョン内を整備する者であり、放し飼いが正しい使い方らしい。

 

 そんなわけで、魔力を流した中部屋は、石スライムの整備のお陰で、石や岩がゴロゴロ転がっている部屋になった。

 現状では、1番大きな石でも、俺の腰くらいまでの高さしかないが、時間経過と共に石が大きくなっているため、そのうち、俺の身長を通り越し、天井まで到達するのではないかと思っている。


 どうでも良い話だが、この世界では、細石が岩になって苔がむす、ってことも不可能では無いらしい。


 現在、侵入者の立場である俺達からすると、初期の頃の部屋と比べて物陰が多く、部屋全体が見通せなくなったため、不意打ちなどの危険が増したが、ここを住みかとする魔物達にとっては、暮らしやすい空間になったことだろう。


 ……まぁ、俺にはカラスが居るから、障害物なんて関係ないんだけどな。


「うっし、やりますか。

 ちょっとだけ意識を分散させるから、周囲の警戒よろしくな」


「はーい」


「任せてねー」


 念の為、2人に声をかけ、合計8匹のカラスを動員し、部屋の中をいろんな角度から眺めていく。すると、岩と岩の隙間や、岩の陰に隠れるように身を潜めていたマリモを発見。


 その日は、部屋全体で20匹くらいを発見することができた。


 昨日が16匹で、今日が20匹だから、魔物の数自体は増えてんだけどな。戦闘力の無いマリモをいくら増やしたところで、兄達に対する防御力にはならないしな。

 流出させる魔力量を200に引き上げるべきか? 石スライムだけじゃなく、草スライムとかも放し飼いにしたほうが良いのかな? けどなー、増やすと大きなお風呂購入が遠のくな……。

 手持ちは、油スライムと普通のスライム。油まみれのダンジョンとか嫌だな……。


 なんて思っていると、部屋中央を飛んでいたカラスの目に、見慣れない生物が映りこんだ。


「……新しい魔物らしき生き物を発見した。

 場所は中央の岩陰。ちょうど、俺達から見て岩の真後ろに居る」


「新種!?

 強そう? 頼りになりそう?」


 即座に警告を発した俺だったが、返ってきた言葉は、ワクワクと言った感じの物。

 そんなノアの問いかけに対し、再び新しい魔物に目を向けるが、その見た目は、なんとも返答に困る感じだった。


「……あー、なんだ。

 強そう、……には、見えないな。

 なんだろう、見た目には、クロエが喜びそうな感じだな」


「クロ姉が喜ぶ?」


「あぁ。

 まぁ、確かめる必要があるし、接触してみるか。

 それでいいよな?」


「うん」


「大丈夫よー」  


 そういうことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ