表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/139

<53> 裏でコソコソ

祝 日間50位 以内


2015.8.17 49位になりました。

誠にありがとうございます。

「隊を半分に分けて、洞窟の近くでテントを建てだした。そこを本拠地にするようだ」


「なるほどね。隊を半分に分けたということは、本拠地を囮にして、ボク達を釣り上げようって作戦だと思うよ」


「……囮って言う割には、大将が普通にそこに居るんだが?」


「それだけ自分の作戦に自信があるんだと思うよ」


「……まぁいいか。本拠地の設置場所が予想より近いおかげで、ポイントが少なくて済みそうだし、准男爵様には感謝しねーとな」


「無能な味方は優秀な敵より厄介らしいからね。それが1番偉いとなればなおさらだよ」


 商人の姉妹(ミリアとノア)に討伐隊編成の話を聞いてから3日。

 討伐隊に洞窟を包囲される中、俺達はダンジョンコアの部屋に集まり、カラスの目を通して、敵の様子を伺っていた。

 

 敵はどうやら洞窟の前に本拠地を構えるようで、兵士達が必死に穴を掘ったりテントを広げたりしている。

 その一方で、洞窟周辺に多くの兵を散開させていた。


 サラ曰く、囮作戦らしい。


 恐らくは、無防備に本陣を設営している部隊に攻撃を受けさせ、周囲に配置した兵で挟撃しようと考えているのだと思うが、どうにも士気が低い。

 スピード重視で突撃し、トップである准男爵を確保してしまえば、一般兵達は即座に逃げ出すと思う。むしろ、俺達が突撃した時点で、何十人と寝返りそうな雰囲気さえある。


 もし俺が准男爵の立場だったら囮作戦なんて絶対やらないな。士気の関係から、成功率が皆無に思える。


 そんな敵を見て、普通に突撃しても勝てるんじゃね? こっちにはクロエが居るし、とも思ったが、囮作戦自体が囮の可能性も捨てきれないので、この3日間で準備した作戦を実行することにした。


「よし、それじゃぁ俺達も動き出すぞ。

 クロエ、例の中部屋を通路6つ分奥に配置してくれ」


「うん、わかったよ。

 コアちゃん、通路の設置と配置換えをお願いね。

 …………ん、ありがと。お兄ちゃん、配置終わったって」 


「了解。それじゃ、全員をその部屋に飛ばしてくれ」  


「はーい。

 魔力さん、距離を縮めて欲しいな。お願いね」


 目を閉じてクロエの可愛い詠唱を聞いていると浮遊を感じ、少しだけ間を置いて目を開けた。


 辺りは応接室と同じ大きさの石の部屋で、足元は膝が浸かるくらいの深さの油があった。

 なんだか、油の屋内プールって感じの部屋である。ボディビルダーとかが、泳いでそうな感じだ。……万が一、そんなプールがあったら、俺は絶対に行かないな。


 この油は、油スライムによって生み出された物で、出入り口の扉をアリスの土魔法で固め外に漏れない様にした後、3日間で出来る限りの量を部屋に充填した。

 クロエ曰く、ユーちゃんは魔玉を食べたら、食べた分だけ油を出せるんだって、との事なので、ドンドン与え、どんどん生み出してもらった。

 

 その頑張りのおかげで、俺の靴やズボンばベタベタである。……移動前に脱いで凝ればよかった……。


「ん? ……何故か知らないが、散開していた敵が本拠地に戻ってきた。再び散開する前に発動させてしまうぞ。

 サラ、土魔法を付与した魔玉を貰えるか?」


「あぁ、かまわないよ。これが頼まれていた物だね」


 サラからアリスと合同で作った魔玉を受け取り、ミリアとノアにも手渡す。そして、壁に左手を着き、右手に持った魔玉を胸に当てる。


 目を閉じ、イメージを膨らませ、体の中にある魔力を魔玉に流し、そこから体を通って壁へと魔力を伝える。すると、天井に半径5センチほどの丸い穴が開いた。

 その穴を覗けば遠くに地上の光りが見える。


 どうやら成功のようだ。


 同じ要領で3個、4個と穴の数を増やしていく。


「……ちょ、お姉ちゃん? 無理しすぎじゃない?

 すでにあたしの倍くらい穴あけてるでしょ?」


「んー? 問題ないわよー。だって私はお姉ちゃんだもの。ノアちゃんやハルくんよりがんばらないとー」


 クロエやアリス、サラはこの後の事を考え、魔力を残しておく必要があったため、俺とミリア、ノアの三人で、部屋の天井に細工を施す。


 そしてその数が100を越えてきた辺りで、異変が起こった。


「……ちょ、お姉ちゃん!? …………あー、兄様。お姉ちゃんが魔力の使いすぎで気絶しました」


「そうか……。まぁ、ミリアもノアも貴族じゃないのに魔力があるってだけですごいんだ。むしろ、気絶するまで頑張ってくれて助かったよ。

 それじゃぁ、アリスに仕上げをして貰って脱出するぞ。

 アリス、クロエ、準備はいいか?」


「大丈夫に決まってるじゃない。アリスを誰だと思ってるのよ。

 クロちゃん、アリスのタイミングに合わせなさいよね」


「うん、よろしくね、アリスお姉ちゃん」


 言葉こそ強気なものの、不安に押しつぶされそうな表情をしたアリスが両手を壁に着け、詠唱を行った。 

 すると、天井と壁の境目に亀裂が入り、一瞬の静寂の後に天井が俺達目掛けて落ちてくる。


「魔力さん、距離を縮めて欲しいな。お願いね。出来るだけ早く移動して欲しいの」


 そして全員が押しつぶされる前に部屋を脱出、再びダンジョンコアの部屋へと戻ってきた。

 

 敵の本拠地を見張っていたカラスと感覚を共有すると、すべての敵が、部屋の崩落によって出来た穴の中に落ちていた。

 

 ふぅ、なんとか当面の危機は去ったか。


 そうほっと一息つき、隣で不安そうな表情で床に座りこんでいたアリスの頭に手を載せ、撫でる。


「敵は穴に落ちた。アリスの魔法は成功したぞ」


「……そう、よかっ、……ふん、当然の結果じゃない。

 …………けど、ご褒美は貰ってあげるわ。もっと撫でなさいよね」


「了解」


 今回の作戦の大部分がアリスの土魔法頼みだった。素直にリクエストに答えてやろう。


 さぁ、それじゃぁ、勇者らしく、脅しタイムといきますかね。


 まずは、カラスに松明を持たせて、自分達の状況を把握してもらう所から始めるかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ