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<50>カリっとジューシー

「からあげー、からあげー、勇者秘伝のからあげー♪」


 錯乱状態の姉を落ち着かせるため退出した姉妹は、きっちり5分後に俺の前へと戻ってきた。

 そして交渉再開に先当たり、姉がミリア、妹がノアだと名乗り、綺麗にお辞儀をした。

 

 休憩前は色々と爆弾発言を繰り返した姉のミリアだったが、どうやら落ち着きを取り戻したようで、再開後の話し合いはスムーズに進んだ。


 まず、こちらが状況説明と成果報酬として、兄達から逃げていること、対抗するために協力して欲しいこと、成功した暁には相応の地位を約束することを伝えるた所、ミリアが、それでしたらー、私を側室にしてくださいー、と要求してきたので、サラとアリス、クロエが了承、無事(?)に商人の協力者を得ることが出来ました。

 ちなみに、呪いや魔法などで操られてないかのチェックや嘘の有無のチェックもクロエの時と一緒な方法で女性陣がやってくれたので、裏切りとかの心配はなさそうだ。


 ってな訳で、またしても俺の同意が無いまま、嫁が3人に増えました。


 ……これあれか? あいつ、3人も嫁居るとかマジ勇者だなー、的なやつですか?

 勇者、勇者、って言われてたが、もしかして、バカにされてた感じか?


 ……いやいや、俺の仲間はみんな優しい子だし、そんなことあるはずないか。……ないよな??


「お兄ちゃん、全部運び終わったよー」


「……ぁ、あぁ、ありがとう、それじゃぁ、食べようか。

 逃亡生活中なため、あまり豪華とは言えないが、ミリアとノアも遠慮せずに食べてくれ」


「ありがとねー、……ハ、ハルくん」


「ありがとう、兄様」


 そして、応接室での交渉が終わり、親睦会を兼ねて食事会をすることになった。

 料理はいつも通りクロエに担当して貰い、サラダや煮物、から揚げなどが、控え室の机の上に並ぶ。

 席順は、お誕生日席に俺、右手にミリア、ノア。左手にサラ、アリス、クロエだ。


 一応、俺が主催者で、立場が1番高いとのことなので、開始の音頭をとった。


 商人の姉妹は、別にあんた達と仲良くなる気なんて無いんだけど、一応、側室と義理の妹になったんだから、敬語はやめなさいよね、とアリスから言われ、ハルくんと兄様呼びだ。


 妹の方は食事の準備中に慣れたようだが、姉の方はまだ照れているようだ。まぁ、彼女がこの中で1番年上みたいだし、そのうちなれるだろう。


「……うん、うまいな」


 この世界では主催者や地位の高い者が最初に料理を食べるのがマナーらしいので、本日のメインディッシュである狼のから揚げを口に入れる。


 歯があたった衣はサクっと切れ、中からジュワーっと肉汁の旨みが溢れ出し、口いっぱいに幸せが広がる。

 独特の香りがあるものの、商人姉妹から買い取った塩でしっかりと味付けされた狼は、ご飯がやビールが欲しくなる味だった。

 欲を言えば、塩味より醤油をしっかりと染み込ませた物が良かったのだが、醤油が無いのだから仕方がない。

 

「さすがクロエだ。どこか懐かしい味がする。ありがとな」


「えへへー、お兄ちゃんに喜んで貰えて嬉しい。……あむ、……んいひーー」


 俺に続いてから揚げを頬張ったクロエは、相変わらずの笑顔で頬をパンパンにしている。


「初めて食べたけど美味しいわねー」


「うん、なんか、すっごい高い味って感じがする。

 こっちの野菜系の揚げ物も美味しい」


 どうやら商人の姉妹にも良い印象を与えたようだ。


 勇者主催の食事会は品格が大事とか言ってたわりに、メインがから揚げってどうよ? とか思ったのだが、揚げ物は総じて高級品らしい。

 流通している油が魔物由来の物だから値段が高く、それを大量に使う料理は、それこそ王族や貴族でないと口に出来ないのだとか。


 そして、揚げ物に慣れ親しんだ日本人の俺が、サクサク感や塩加減、ジューシーさを監修。

 2人の姫にも太鼓判を押される物が完成した。

 ちなみに、小麦粉は畑でクロエがバトル。油は1000Pを使って油スライムを召喚し、油スライムに作って貰いました。

 

 そうそう、ダンジョンのレベルアップと共に召喚出来るようになった新しいスライム達なのだが、それぞれ、名前通りの物を体内で作り出すことが出来るらしい。

 ただ、作り出したものはダンジョン外に持ち出すと消えてしまうのだとか。


 外界との魔力の流れを閉鎖した空間で、とか、コアの管理下で制御された場所での、とか、ダンジョンコアが色々言っていたが、結局のところ、理由は良くわからなかった。

 とりあえず、ダンジョン内だけの特殊能力だと理解しようと思う。


「あ、そういえば、兄様達を捕らえるための兵が募集されてたけど、大丈夫なの?」


 談笑を交えながら進められた揚げ物パーティの最中、ノアがそんなことを言い出した。


「…………あぁ、……もちろん、大丈夫だとも。

 迎え撃つだけの準備は着実に進行しているよ。

 …………ちなみにだが、決行日は何時頃だかわかるか?」


「えっと、たしか、集まり次第決行予定って話だったかな」


 ……いや、そんな話聞いてないぞ。

 

「……ノアは、それを何処で聞いたんだ?」


「生まれた村だよ」


 ……なるほど、カラス達を通して、王都の状況は最大限に把握していたが、それ以外の町は盲点だったぜ。

 

 それから、30分ほど、飯の片手間に、洞窟で待機させていたカラスを飛ばして周囲の状況を確認したところ、周辺で1番大きな町に、槍や弓を持ち、訓練に励む集団を見つけた。


 彼らの話を盗み聞きした結果、どうやら3日後に出発するそうで、今は俺達を倒すための訓練中らしい。


 数は100人ってところか。


 一方、俺達の戦力は、戦える人間が、クロエとアリス。魔物がスライムと油スライム。

 防衛拠点は、洞窟、入口、通路、コアの部屋。通路の両サイドに来客用の部屋やそれぞれの自室、畑などがあるが、戦力にはならない。

 

 …………やばい、王都の兄達に変わった動きが無いからって完全に油断してた。

 ここに敵が到着すると思う時間は3日と半日ほど。


 …………どうしよう。 


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