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<40>狩りをしよう

「俺達は昨日、悔いの残らない正しい選択をし、600ポイントをすべて消費した。そして、今現在、ダンジョンの防御力はゼロに等しい。

 このままの状態で敵が攻めてきた場合、俺達は全滅するだろう」


 まくし立てるように言葉を繰り出し、緩急をつけるために、一度言葉を区切る。

 俺は、俺の声に耳を傾ける人々を見渡し、たっぷりと時間をかけてから、次の言葉を浴びせかけた。


「だが、安心して欲しい。俺達には、生き残る道がある。それは、魔物を狩り、ポイントに変換することだ。

 ポイントがあれば、俺達に不可能はない。そして、狩りをすれば食料が手に入る。悪いことなど何も無い。

 さぁ、狩の時間だ。哀れな子羊共に、俺達の恐ろしさを教えてやれ。いざ、出陣だー」


 そういって、右手を天井に向けて大きく突き出すと、少し遅れて、クロエの小さな手が挙がる。


「おーーーー」


 食料と聞いてテンションがあがったようだ。


 肉だけの焼肉朝食を食べ、今後の予定を演説のように彼女達に伝えてみた。その結果、クロエのテンションをあげることには成功したものの、サラとアリスは突然のことに、ついてこれなかったようで、キョトンとしている。


 どうして俺がこのような行動に出たかと言うと、勇者らしく、彼女達に激励を飛ばしたかったからだ。

 やはり、戦闘に赴く際には、リーダーの声が必須であろう。



 ………いえ、嘘です。

 怖かったんで、冗談な感じでしか言えなかっただけです。

 

 いや、だって、あれだぜ。今から狼と戦いに行こう、命が危ない場所に行こうなんて、言えるわけないやん。


 戦闘をして、ポイントを稼いで、防御力を高める。それ以外に俺たちが、生き残る道は無い。それは分かってるんだけどな。

 一歩間違えば死ぬってのは、予想以上にキツイ物がある。


 死ぬのはすごく怖い。それこそ、死ぬほど怖い。だけど、それ以上に、彼女達が死ぬかも、っていうのが1番怖い。

 

 多くの人、つまりは、見ず知らずの人々を守るために、仲間と共に敵の懐へと切り込むのが勇者だとしたら、俺は絶対に勇者にはなれないと思う。


 しかし、だからと言って、このまま留まっていては、いずれ死ぬだけなのもわかっている。ゆえに、本気半分、冗談半分の形になってしまったというわけだ。


「要するに、ポイントを稼ぎに洞窟の奥に行くってことだ。

 この先に何が居るかわからんからな、それぞれの戦闘力を把握するぞ、問題ないよな?」


 そういって3人に顔を向けたが、反対する人は居ないようだ。 


「まず、サラだが、たしか、物に魔法を付与することが出来て、その魔法は自身の能力、または協力してくれる人の能力だったか?

 もしアリスと協力して付与したなら、土魔法を付与できるって認識で間違いないよな? 直接的な戦闘力はあのか?」


「そうだね。付与魔法に関してはあっているし、直接的な戦闘力は皆無と思ってくれれば間違いないよ」


 彼女の武器に関して付け加えるならば、豊富な知識だろうが、それは今確認しなくても良いだろう。


「それじゃ、次な。

 クロエが戦えるってのは、実際に見たから、みんな知ってると思うんだが、1得意な戦闘方法ってなんだ?」


「んー? 1番?

 基本的に、何でも使えるんだけど、1得意なのはナイフかな?

 1本だけよりも2本持ったほうが戦いやすいよ」


 ナイフの二刀流? アサシン的な感じか? こっちの世界じゃ主流なのかな?


 とりあえず、俺がナイフを持ってても仕方ないし、そのうち俺の護身用ナイフを渡しておくか。


「アリスは、土魔法だよな?

 俺を助けてくれた盾と攻撃用の石を飛ばす魔法などで、扱える土や石の量は1日に自分の体の3倍くらいか?」


「……え、えぇ、そうね。発動できる量は、そのくらいって事になってるわね。

 本当は、アリスに限界なんて無いんだけど、世間にあわせて、そのくらいに制御してあげてるのよ」

 

 うん、どうやら、自身の3倍程度で間違いないらしい。

 洞窟の奥を塞ごうとしてたとき、限界っぽいのがそのくらいだったしな。


「最後に俺だな。

 俺は、召喚魔法で敵の位置を把握することが出来る。

 補助魔法、直接攻撃、魔法攻撃。みんなの能力を俺が補佐すれば、どんな敵が出てこようと負けることなんてありえない。そんな能力だ」


 そう自分に言い聞かせ、洞窟の奥へと足を踏み出した。

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