<3>姫に召喚されまして 3
自分の妹を買う。
その言葉を脳内でリピートさせ、意味を理解しようと心がけてみたが、不可能だった。
そもそも、俺は一人っ子で、妹どころか、兄妹がゎわ居ない。
それに買うってなんだよ。神様にでも会って、妹が欲しいので売って下さい、とでも言えば良いのか?
それともあれか? 神じゃなくて、コウノトリさんから買うのか?
そんな俺の表情を見かねてか、サラが助け舟を出してくる。
「……また説明不足のようだね。……どうやら、私は人と話すのが苦手なようだ。
不本意ではあるが、キミに話の主導権を譲ろう。何でも質問してくれて構わないよ」
不本意と言いながらも、その表情は、思わず惚れてしまいそうなほどの明るい笑顔だった。
召喚された直後から、彼女はずっとキラッキラだ。
「……あー、そうだな。
とりあえずは、不本意といいながも笑顔な理由から教えてもらって良いか?」
「あぁ、構わないよ。主導権の譲渡はたしかに不本意なのだが、話すことが苦手だという新しい発見が出来たからね。
その喜びの方が上回った結果だと判断するよ」
…………意味がわからない。苦手が発見出来てうれしいとか、変態なのだろうか?
「いや、もしかすると、こうして人と話していることが、楽しいと感じているのかもしれないな。
しかし、それも可能性の範疇を出ない。なにせ、サンプルが少なすぎるからね」
「サンプルが少ないってどういうことだ?
友達とはあまり話さないのか?」
「いや、ボクに友人など居ないよ。
物心付いてからは、ずっとこの研究室に引き篭もって居たからね。
両親どころか、最近では乳母ともあまり話さないよ」
なるほど、ひとりぼっちで研究していた結果、すごいものを発明した訳か。
天才なのか、変態なのか……。
今までの印象から考えると変態の可能性の方がたか…………。
「……いや、ちょっと待て。
たしか、その研究結果のせいで命を狙われてるんだったな?」
「あぁ、そうだよ?」
「そして、研究のせいで友達も居ない訳だ」
「その通りだね」
「………助けてくれそうな人は?」
「居ないね。
逆に聞くが、研究狂いの変態姫を助けてくれる人など居ると思うかい?」
どうやら、変態の自覚はあるらしい。
「…………お金で護衛などは雇えないのか?」
「それも無理なんだよ。兄達の息の掛からない者など探しようが無い。
護衛なんて雇えば、裏切られて殺されるのがおちだよ」
そっか、国全部が敵みたいな状態なのか。
「……………俺みたいな奴をドンドン召喚するとか」
「素材も魔力も足りないね」
「………………本当に命を狙われているのか?
話す機会も無いような兄弟だろ?
勘違いなんてことはないか?」
「いや、それは無いね。研究結果の中には、盗聴器もあってさ。それで、兄達の会話を聞いたってわけだ。
どうやら、決行は1週間後。クーデターの首謀者として、捕らえるつもりらしい。
今頃は、証拠の捏造に勤しんでいるはずだよ」
「…………………」
このひとりぼっちな姫様を助けるとか、無理じゃない?
俺にどうしろと?




