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<20>プルプルな契約

 途中で事前の打ち合わせになかった話も飛び出したが、最終的には、話がうまくまとまった。


 まぁ、うまいのは方向性だけで、なぜ2人を妻にすることになったのか、なぜ俺が勇者と呼ばれているのか、その辺りが良くわからないが、今更話を白紙に戻すわけにもいかないので、とりあえず気になった点だけを質問することにしよう。


「アリス王女。同盟を決意した理由は、俺を信用してくれたからだと思って良いんだよな?」


「……ふん。アリスの夫になるんだから、王女だなんて言わないで、アリスって呼びなさいよね」


 何故不機嫌なのか良くわからないが、とりあえず話を聞いてくれそうな雰囲気に安堵し、再度質問を投げかけることにする。


「……アリスは、俺のことを信用してくれるのか?」


「そうね。信じてあげようかとは思ってるわ。

 けど、勘違いしないでよね。あなたを信じたのは、かっこいいからじゃなくて、その黒髪のおかげなんだから」


 まったくもって、意味のわからない回答だったのだ。


「黒髪……?」


「そうよ、黒髪。

 絶対に、あなたがかっこいいから、この人だったら、妻になってあげても良いかな、とか思ったんじゃないわよ」


 うん、意味がまったくわからない。


「おそらくだが、アリスがキミのことを信用するに至った経緯は、過去の勇者の話を知る必要があると思うよ」


「……了解。なら、クロエ。その辺に関して教えてくれるか?」


「ふぇ? 私?

 うーんと、勇者様について話せばいいんだね?」


「そうなるな。よろしく頼む」


 過去の経験状、サラに説明を任せても理解し難いとわかっている。そして、アリスについても、その高圧的な喋り方から適任ではないと判断した。


「ちょっと待ちなさいよ。なんで、アリスに聞かないのよ?」


 無論、アリスの機嫌は悪くなったが、まぁ、もともと良くなかったし、気にしないことにしよう。


「クロエ。話してくれるか?」


「……話していいの?」


「ああ、問題ないよ。話してもらえるか?」


「待ちなさいって言ってるでしょ、アリスのは――」


「それじゃ、まずは創世の勇者様からね。この国が……」


 クロエ曰く、なんでも、昔、この世界を救ったとされる勇者は、黒髪であったらしい。

 そして、その後も数人の勇者が歴史の中に出現したが、そのすべての人物が、黒髪だったそうだ。

 ゆえにアリスは、彼女が生きてきた中で始めて出合った黒髪だったから、信じて良いかと思ったらしい。


 戦国時代で例えるなら、丸刈り頭で徳の高そうなお坊さんが言うことだから信じてみようか、と言った感じなのだろうか。


 少なくとも、現代に生きていた俺には、わからない感覚なのだが、とりあえず信じてくれるとの事なので、気にしないことにしよう。信用されないのは問題だが、信用してくれるなら、理由が理解できなくても問題ないしな。


「……とりあえずは、納得しておこう。これからよろしくな」 


「ふん、挨拶は良いから、目を瞑りなさいよ。さっそくだけど、契約魔法をしてあげるわ」


「契約魔法?」


 チラッと、サラの方に視線を送り、確認を取ったあと、アリスの指示通りに目を閉じた。それと同時に、アリスの歩く音が部屋の中に木霊する。

 服が擦れる音が耳に届き、ゆっくりと近づいてきた。そしてその気配が目の前まで迫ったと思えば、突然、右足に激痛が走る。


「ぃって!」


 思わず目を開き、足を確認すると、ピンヒールで足の甲を踏まれていた。勿論、犯人はアリスである。


「おま、なにすんだよ。痛いだろうが!!」


「ふん、あなたが無駄に身長を伸ばしたのが悪いのよ。怒ってないでさっさとしゃがみなさいよね!」


「無駄に伸ばしたってなんだよ。身長なんて、伸ばす伸ばさないじゃないだろ。ったく。

 ほら、しゃがんだぞ、これでまんそ――」


 しゃがんだ途端に、アリスの両腕が首の後ろに回され、柔らかな彼女の唇に言葉を遮られた。


 唇に触れるだけの優しいキス。


 あまりにも予想外な展開に、驚きの声すら上げられずに居ると、顔を真っ赤に染めたアリスが、俺の側から離れる。


「ちゃんと愛してくれなきゃ、ダーリンのこと土の中に閉じ込めちゃうんだからね。

 それじゃ、アリスは、荷物とってくるから、少しだけ待ってなさいよ」


 そんな言葉を残して、アリスは逃げる様に部屋を飛び出していった。


 自分の唇に手を当てながら、アリスが走り去った方向に目を向けていると、隣に居たサラに腕を引かれ、彼女の方へと引き寄せられた。

 

「余韻を楽しんでいるところで申し訳ないが、私も契約させてもらうよ。……恥かしいから、目を閉じてくれると嬉しく思うんだが」


 彼女のリクエストに答え、慌てて目を閉じると、抱きつくようにキスをされた。


「おにいちゃん。私もお兄ちゃんと契約するね。

 えっと、えっと、うん。妹の契約をするからね」


 なぜかクロエまでもが、契約をせがんできたので、彼女には、俺の方から近づいて、唇を重ねてやった。

 今思い出すと、かなりパニックになって居たんだと思う。


 まぁ、後悔なんて一切してないけどな!! プルプルだったし。


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