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ゼイ・アー・プラネターズ 4

 駐艦場を出発したソウルジャズ号は、艦橋にクルー4人全員を乗せ、航空機展示会参加のために、普段は閉じられているコロニー第1階層への入り口へと向かっていた。


 ちなみにミヤコのラジコンドローンは、マリが大人しくしててくれるから、ということで彼女へ貸し出されている。


「しかしまあ、あのチーム・プラネターズを生で見られるとは、いやはや思いも寄らない事もあるでござるな」

「ほー、有名なのか。あの連中」

「どえーっ、チーム・プラネターズでござるよーっ!?」

「やかましい。わざとらしく引っくり返るな。ひまなパンダかお前は」


 感慨深そうに目を閉じながら腕を組んでいたバンジは、操縦しながら極めて興味なさそうにそう言ったザクロの言葉に、床へ転げる無駄に大きなリアクションをとって驚く。


「んなリアクションをメアがすんだから、ぶっちぎりで1位とかなんだろうな」

「うーん。それは……」

「まあ……」

「シニアクラス30チームではブービーだね」

「あ? ブービー?」


 何の気なしにリキッドパイプをくわえながら言ったザクロの問いに、バンジとヨルが言いよどむ中、ミヤコが検索をかけた結果をそのまま言い、彼女の目を丸くさせた。


「大したことねぇんじゃねぇか」

「あくまでもシニアクラスでは。だね」


 助手席側の窓の前にある段差に腰掛けているミヤコは、思考操作で公式サイトのチームデータ表を正面のホロモニターに出す。


「ジュニアクラスは全部新記録で30戦全勝じゃねーか。なんでこんな下なんだよ」

「いくらレベルが違うって言っても、ここまでガクッと落ちるとは思えないけれどね」


 ミヤコが追加で調べてみていると、チーム・プラネターズ関連の記事がいくつかヒットして、


「……。うーん、これはひどいなあ」


 家賃が高い、まぐれ、インチキ、ジュニアクラスは忖度、買収などなど、憶測やら中傷でしかないものが散見された。


「消せ消せ。胸くそわりぃ」

「ボクも同感だ」


 眉間にしわが寄りきった、あからさまに嫌な顔をしたザクロが払うように手を振り、ミヤコはすぐに画面を消した。


「原因が何か分かればいいんですけどね……」

「調べようと思えば――」

「ミヤ、流石に仕事でもねぇのにそれはやめとけ」

「そうかい?」


 隙あらばハッキングをしようとしていたミヤコへ、ザクロはすかさず牽制をいれておいた。


「わあ、すごく混んでます……」

「クサカベ・スペース・レースは一大行事だからねえ。NP宙域での開催は年1回あるかどうかだし特に」


 話している間にコロニーの第1階層へと続く通路に到着したが、大小様々な艦船が順番待ちをしていて渋滞していた。


「ふーん、そんなお祭り騒ぎみたいな規模のイベントなんだな」

「クロー殿はもう少し催事に関心を……。いや、そういうお人でござったな」

「なんだそのオレが世間知らずみてぇな言い方は」

「あの。クローさん、通信が来てます」

「おう。ほいこちらソウルジャズ号」

「来たかクロー。よし通れ」

「おうよ」


 だが、事前に展示会協力者は優先パスを発行されていて、待たされずに通過する事ができた。


「あっ」

「どうしたヨル」

「あれってジュニアクラスの体験コースですねっ」


 隔壁扉を4つ通過して第1階層に入ってすぐ左側に、重力制御が解除されている事を示す、赤いホログラムの内側で、ホログラムの青いリングと同色のバーがいくつか並ぶエリアがヨルの指さす方向にあった。


「まあそう書いてあるしな。まあ、朝も言ったがオレぁやらねぇけど」

「ええっ」

「なぜだい? クローならアマチュア記録ぐらいは塗り替えできるじゃあないか」

「ご好評なのは何よりだが、オレにやるメリットねぇだろ」

「そうそう。クロー殿は恥ず――」

「あぁン?」

「なんでもないでござるよー……」


 ニタッと笑って茶化すような口振りをしたバンジへ、ザクロは人を殺しそうな目で睨みを効かせ威嚇して黙らせた。


「銭でも出るなら話は別だがな」

「記念品を貰えるぐらいだね」

「だろ? てなわけで無しだ」

「そんなぁ……」


 ヨルの哀しそうな目線を見ない様にしつつ、ザクロはにべもなくそう言って進路を公園等が集中する『東』区画へととる。


 目的地である『東』区画の草野球用2面グラウンドでは、すでに何隻か宇宙コルベット艦とその艦載機1機の組合わせで展示準備をしているところだった。


「わあっ。クサカベ・SF-07にヤツビシ重工・ジェットストリームゼロ、シュトルム・109、プレアデス・アルティメットコブラ、ユーイング・SF-15! あっ、カオシュン航空機SF/A-2Vまでっ。あれは……ナリミヤの初代クンプウですねっ」

「よく一目で分かったねえ。クンプウなんてもはや原型ないのに」

「いくら改造しても着陸脚は変えようがないですしっ」

「うんうん。結構特徴的な前輪だよね。おや、あれはカワモリ――」


 ずっとションボリしていたヨルだったが、眼下に並んでいるカスタマイズされた航空機の数々を目にし、すっかり機嫌が直ってミヤコと共にはしゃぎはじめた。


「……」

「――お嬢さまの機嫌直って良かったな」

「――やかましい」

「ああっ、貴重な天然麦わらになんてことを」


 聞こえない様に1つ息を吐いた様子を見逃さなかったバンジの耳打ちに、ザクロはそのとんがり帽子に水平チョップを入れて払い飛ばした。


 そのスペースのだいたい真ん中辺りにソウルジャズ号は着艦し、エアロック部分からの出入りのために高所作業車がスタッフによって横付けされる。


「ヨルはもう見てきてて良いぞ。オレとミヤだけで十分だしよ。メアお供を頼む」

「あ、はいっ」

「ええー、親友とはいえ――」

「駄賃は2千ぐらいでいいか?」

「はいはいはい、お任せでござる」


 眉間にしわを寄せ、口を尖らせて渋ったバンジだったが、ザクロが謝礼を自身の端末に送ったのを確認してあっさりひっくり返した。


「まあそれは良いんでござるがぁ、拙者これでもここではわりかし有名人でぇ」

「この目立つ格好やめたらいいだろ」


 ウザ絡みをしようとしたバンジは、ザクロにどこまでも冷ややかな目と声でそう言われ、帽子とポンチョとサングラスを容赦なく剥ぎ取られた。


「冗談でござったのにー。クロー殿のえっちー」

「うるせぇ上着無くなっただけだろ。さっさと行け」


 黒いレースの装飾がされた船内外服姿のヨルが、非常に行きづらそうに2階層の様子を階段の途中から覗っているのを見て、ザクロはバンジの尻に軽く蹴りを入れた。


「んもう、いつにも増して扱いが雑でござるなぁ」


 ベースの薄黄色い船内外服だけにされたバンジは、その猫を思わせる大きめのつり目を不満そうに細めつつ、ティアドロップ型サングラスに交換して階段を降りていった。


「ヨルに良い所見せたら良かったじゃあないか。後ろに乗っけてさ」

「なんと言われてもやらねぇよ。人殺しの技を誇ってどうすんだ」

「ああ、なるほどね」

「無駄話はいいからとっとと降ろすぞ」

「了解」


 ザクロに続いて階段を降りるミヤコは、作業用の服へ着替えに3階層へと向かう途中で振り返って、


「一緒に行きたいなら行ってきたらどうだい? ボクだけでも出来るし」


 開け放たれているエアロックを見やりつつそう提案した。


「持ち主不在にするわけにゃいかねぇだろバーロー」

「そうかい?」

「見透かした様な顔で笑ってんじゃねぇよ……」


 眉を寄せ、口をへの字に曲げてボソボソと言ったザクロは、階段横の格納庫へと降りる隔壁扉を開いた。

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