はぐれ狼のアリア 5
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「ようメア。お早いお帰りで」
「……」
「あー。いや、マジでスマン」
「とりあえず他人がいる所では本名呼びは止めるでござる」
インスピレーションを得て上機嫌で帰ってきたバンジは、フライフィッシュⅡを機嫌良く磨いているザクロへ、もう諦めた様子でため息を吐きながらそう言った。
「で、どうだ。なんかあったか?」
「そりゃあもう。ここの衰退していく様子は、訴えかけてくるものがあるでござる」
「ほー、どんな具合だ?」
「まず高齢化でござるな。第2階層は大半の住民が老齢で、破損箇所が放置されていたり手入れが行き届いていなかったでござる」
「ほうほう」
「次にそれに伴う商店の閉店でござる。階層の中央通りは大半が軒並みシャッターで、残っていてもコンビニ程度。おそらく、少し外れた所にあるモールが原因でござろう」
「第1階層はそうでもなかったけどな」
「単純に人口が多いからでござるな。人口比も若年層が多いでござるし、そちらはしばらく持つはずでござる」
「ほーん」
「最後は議員選挙が10年は行われていない事でござるな。どうもなり手がいないせいで全員無投票当選だとか」
「そんで、野菜が養殖ものでもない件は調べたよな?」
「無論でござる。船外プラントが隕石と衝突してそれっきりだとか」
「そういうことか……」
そしてこれは少々憚られる事でござるが、と言って周囲を見回したバンジは、ザクロとヨルに顔を突き合せる様にしてから、
「裏金献金し放題で、実質一部の富裕層が動かしている様なもの、でござったな」
「なるほど……。常識が古いまま残っているわけですか」
「うむ。そのせいか、飲食店の店主が平然と若い女性の業者にセクハラ発言をしていたでござる」
「うげえ、ヨル連れて行かなくて正解だったぜ」
ザクロとヨルは、先日行ったコロニーでの一件を思い出し、人を殺しそうな顔のザクロと眉をひそめるヨル、と程度は違えどそれぞれ嫌そうな顔をした。
「まあそれはもういい。じゃあヨル、留守を頼むぜ。あとメアはフライフィッシュⅡしまっといてくれ」
「はいっ!」
「合点承知」
かなり気合いが入っているヨルと、軽い調子で手を挙げるバンジに見送られ、レンタルしている浮遊バイクでザクロは1人再び第1階層へと向かう。
ザクロはまず、オギノメが良く出没するという情報がある、人口の河川敷へと足を運んだ。
そこは彼女がジョギングで立ち寄る、ジューススタンドのキッチンカーがあるのだが、近くの草野球チームの選手からこの日は出店していないと知らされた。
「なんだよ……」
次に、筋力トレーニングとシャワーを浴びに訪れる、というジムへとやって来たが、設備故障のために臨時休業になっていた。
その後も、ライク品プリンターソース販売店や古書店、スポーツ用品店に雑貨店、衣類販売店に複数の飲食店、と方々巡ってみるが姿を確認する事が出来なかった。
「ええいクソ……」
オギノメが行くという情報のある場所が弾切れになってしまい、ザクロは長期戦になるため後回しにしていた住居を当たることにした。
しかし最初に訪れた、見通しが良い公園に面したアパートは部屋番号が存在しなかったため、ザクロは一気に顔の険しさが深くなった。
「長くなりそうだな……」
時間を見ると深夜に差し掛かっていたので、ザクロはひとまず今日の所はソウルジャズ号へと帰る事にした。
「あなたが私を探している『ロウニン』さんだね?」
バイクに跨がったところで、ネクタイワイシャツに紺のパンツ、という賃金労働者といった出で立ちの女性がザクロの背後から話しかけてきた。
「そう言うアンタはマキ・ハギワラか」
ザクロは両手を挙げて振り返ったが、銃器を持っていなかったのでスッと下げた。




