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最凶無比の魔女王は静穏を願う。  作者: ぶるどっく
黒薔薇の魔女王は影で暗躍する。
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聖なる王国と呼ばれし国。

 

 豪奢な調度品に彩られ、不必要に金銀・宝石の数々で彩られた豪華絢爛と言えば聞こえは良いが、好ましく思う者の品性を疑うような聖王国の王宮内にその王の執務室はあった。


「ええいっっ!!

 この役立たず共がっっ?!!

 あの汚らわしい亜人共から魔女一匹の情報も得る事も出来ず、見つけ出す事すらできんのかっっ!!!」


がしゃあぁぁぁんっっっ!!!


 その部屋の中には豚よりもなお肥え太り、欲に塗れた神聖なる聖王国と謳われる王国を治めし"聖王"とは思えぬ姿を晒す者がいた。


 聖王国国王、周辺国には聖王と呼ばれし"コンスタント・バリー・フォン・ウォルステンホルム"である。


 怒りにまかせて己の目の前に跪き、報告を行う騎士の一人に対して王は持っていた葡萄酒がなみなみつがれた杯を投げつける。

 その杯は騎士の頭へとぶつかり血が流れ、騎士は小さなうめき声を上げてしまう。

「……陛下、そのような役立たずはさっさと見せしめにしては如何ですか?

 ふふ、わたくし、また面白い処刑方法を思いつきましたの。」

 執務室であるというのに、王の隣には数年前より王の寵愛を得て、正妃にまで上り詰めた妖艶で美しい女"レオノーラ・ミラ・アーランド"がいた。

 そして、その父親でありこの聖王国の公爵の一人であり、娘の助力により宰相となった"ダスティン・エリク・アーランド"もいた。

「おお、レオノーラ。

 よしよし、こんな役立たずでもお前を楽しませる事が出来るなら少しは役に立つというものだ。

 ふん、さっさとこの役立たずを牢にでも繋いでおけ!!」

「なっっ、お許し下さいっ、陛下っっ!

 わっっ、わたしはっっ、ま、まって……」

「さっさとせぬかっっ、お前達も処刑されたいのかっっ」

 王の命令は間違っていると思いながらも、その矛先が己に向く事に怯えた兵士達は命令に従うしかなかった。

 半ば無理矢理とれ出されていく憐れな騎士の叫び声だけが、虚しく木霊した。



 聖王国の国王であるコンスタントは、本来王位を継ぐ予定ではなかった。

 しかし、優秀な兄であった人物の不慮の事故によって王位が転がり込んできたのである。

 王となったコンスタントにより、長い年月を掛けて確かに進んでいた聖王国の貴族達の腐敗は一気に加速した。

 賄賂は当たり前、貴族達による奴隷のコレクションや人身売買も蔓延する"聖王国"とは名ばかりの国へと変貌を遂げていた。


 ……そんな貴族達の中でも、高潔な人物達はいた。

 彼等は真っ先に王を諫めようとし、その命を適当な理由を付けて奪われていったのである。

 そんな地位も、名誉も、富も、美しい女達も手に入れたコンスタントが、最後に欲したのは不老不死だった。

 数々の不老長寿の効果があると言われる食材や薬を集めさせたコンスタント。

 そのコンスタントに一つの噂話がもたらされる。

 それは、魔女の生き血を飲めば不老不死になれるというものだった。

 それ以降、コンスタントは血眼になってその魔女を求め続けているのである。


 ……コンスタントを王に戴いた聖王国は、滅びの道を辿り続けていた。





「ねえ、陛下。

 いっそのこと汚らわしいあの国なんて滅ぼしちゃえば良いんじゃないかしら?

 陛下の優秀な血を継いだ子供達に兵を率いて貰えば、きっと魔女を捕まえてくれるはずですもの。

 それに、わたくし新しいオモチャが欲しいの、陛下ぁ。」

 美しい笑みを浮かべたレオノーラは、甘えるように王へと提案を口にする。

「おお、そうか、レオノーラ。

 お前を楽しませるオモチャは必要だな。

 それに、お前との子供を王位に就けるのにあの王子達は邪魔だからなあ。

 魔女を連れてきたものに王位を与えるとでも言って、前線に立たせれば無駄な手間も省けるしな。」

 王にはすでに5人の王子と、7人の王女が他の側室との間に生まれていた。

 傲慢で欲深い王に子供達への愛情など無く、王女は他の国などにくれてやる政略の駒でしかなく、王子達など邪魔な存在でしかなかった。

「陛下、もう一人あの昼行灯もこの際です。

 死んで貰えば如何ですか?

 生きてその血を受け継がれても面倒です。」

「うむ、そうじゃのう。

 良いぞ、王子達共々死んで貰おう。

 ダスティンよ、良きに計らうが良い。」

「陛下のご英断、臣下として心より尊敬いたしております。

 貴方様の様な名君に仕える事が出来た事こそ、我が計り知れない程の名誉にございます。」

 宰相は芝居がかったように王を褒め称える言葉を述べ、深く頭を下げてみせる。

「うむ、これからも励めよ。」

 その姿に満足したように王は頷いて見せた。

「ああん、陛下。

 難しい話は終わらせて下さいませ。

 陛下のお好きな遊びで、わたくしを可愛がって下さいませ……。」

「おお、寂しい思いをさせてすまなかった。

 レオノーラ、可愛い奴じゃ。

 余が今宵も可愛がってやるかろう。」

 王は、色欲に塗れた醜い笑みを浮かべて後宮へと姿を消していくのだった。



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