旅立ちの朝を迎えて!
いつも読んで頂きありがとうございます。
これにて、第一章は完結となります。
これから、外の世界へ向かった彼等の物語は第二章へ続けていきたいと思います。
謁見が終わった数日後の朝、長年に渡り己の愛用している装具へ身を包んだギルバートとランスロットの姿と、旅の装いに身を包んだアイリスと翁の姿がルシファート王国の王城の中庭にあった。
「我が君、ちょっと行ってきますのう。」
「ええ、翁。よろしくね。」
「ほっほっほっ、任されましたぞ。」
見送りに出てきている女王へ翁が出発する事を静かに告げる。
「翁から申し送られた事はお任せ下さい。
侍女長、彼等が何か少しでもおかしな行動をしたらすぐに止めを刺して下さいね。
……こちらの阿呆は、必ず私が仕留めますから。」
「馬鹿猫にさせるまでもなく、私が仕留めますよ。」
「……貴方とは、ゆっっっくりお話しをすべきでしょうか?
(なま言ってんじゃねえぞ、糞犬が。この際どちらが上かはっきりさせるか?)」
「そうですね、以前より貴方とははっきりさせるべきことが有ると思っていました。
(貴方如きが私に勝てるとでも?寝言は寝てから言いなさい、この馬鹿猫が。)」
見つめ合うというよりも、笑顔でにらみ合う二人に周囲は呆れた視線を送る。
「アイリス、気をつけて行ってこいよ。
翁、アイリスを頼みます。」
「もう、ナギったら心配しすぎよ。」
「うむ、ナギよ。
儂がおるのじゃ、心配せずとも大丈夫じゃよ。」
心配するナギに苦笑するアイリス、そんな二人へ可愛い孫を見るような眼差しをおくる翁の姿が有った。
熱い火花を散らせる二人組や穏やかに別れの挨拶を済ませる彼等を尻目に、冒険者一行はマルスへ注意事項を言い聞かせるように取り囲んでいた。
「……マルスよ、くれぐれも、くれっぐれも、決して勝手な行動をしてくれるな。」
「何か行動する場合は、必ずアリアに相談するんだ。
いいか、大切な事だからもう一度言うぞ。何か行動す……」
「何回も言われたくても、わかってるつーのっ!
お前らの方こそドジ踏むなよっ!」
「マルスから出来る限り側を離れないように気を付けるわ。
だから、二人も気を付けてね。」
『ああ、頼んだぞ、アリア。』
マルスの行動が心配でたまらない二人の姿に苦笑しながらも、真剣な面持ちでアリアも二人へ告げる。
二人は、アリア一人にマルスの事を託してしまう事が申し訳ないのか神妙な面持ちをしていた。
謁見の間での出来事のおかげで、戦闘時以外での彼等の中のマルスへの信用度は下がりに、下がっていたのだ。
「三人ともっなんだよっ!ちくしょーっ!!」
叫び声を上げるマルスの声を聴きながら、翁の転移魔法によりアイリス、ギルバート、ランスロットの4人は外の国へ旅立っていったのだった。
「さあ、新しい私の民が到着する前に、もっと食料も、軍備も整えて力を蓄えなきゃね!」
黒薔薇の魔女王の明るい元気な声は、白亜の美しい王城の中庭に響き渡るのだった。




