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最凶無比の魔女王は静穏を願う。  作者: ぶるどっく
黒薔薇の魔女王は静かに力を蓄える。
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とある冒険者達の事情 前日編。

 イエンソド大湿原の側にある小国の宿屋において、冒険者の一団が次なる目的地への議論を交わしていた。彼らは、この大陸において有名な冒険者の一行であった。虎の獣人の戦士をリーダーに、エルフと人間の剣士、女性の人間の魔法使いと"神官"であった。

 

 彼らの次なる目標は、未だ誰も踏破し戻ってきた事のない"イエンソド大湿原" であった。



「・・・我らが故郷の事情に巻き込みすまん。」

「そんな事言いっこなしだぜ、ギル。」

「そうよ、ギルは依頼を受けただけだもの。」

 獣人の男の言葉に、人間の男性剣士と女性魔法使いが慰めるように言葉を掛ける。

 彼らは亜人の国より大湿原の探索を依頼されていた。昨今、聖王国の圧力により亜人の国は危機にさらされていた。なぜなら、彼らも与り知らぬ物を献上するように要求されているからである。

「だが、本当にいるのだろうか?」

「・・・探すしか有るまい。」

「でも、居たとしても私は関わり合いたくは有りませんわ。

 いえ、ランスロット様が行くなら何処までも一緒に行きますけれど。」

 疑問の声を上げるエルフの男性剣士に対し、嫌悪感を露わにしていたかと思うとエルフの剣士に対し媚びを売るような女性"神官"の言葉が続く。

 彼らが探し求めているのは、聖王国や帝国でさえも見つける事が叶わなかった"魔女"であった。

 その"魔女"は、どんな怪我や病気でも一瞬のうちに癒す力を持っているという。数年前より噂が増えたその"魔女"は、彼女を求め、害する国々を滅ぼし尽くしているという。しかし、その"魔女"の生き血を飲めば不老不死になれるという事を信じ、探し出して捕らえようとする王侯貴族は後を絶たなかった。

 そんな"魔女"をいつの頃からか、亜人の国が囲っているという噂が流れ始めた。それ故に、現在亜人の国は聖王国の圧力によって押しつぶされそうになっていた。彼らのような大国が血眼になって探しても見つからない"魔女"。亜人の国の重鎮達は、一つの結論に達した。未だかつて踏破された事のない未開の大地。その何処かに、"魔女"は潜んでいるのではないかという事を・・・。


 しかし、未開の大地はあまりに危険な場所であり、軍を出したところで満足に探索できるような場所では無かった。そのために、白羽の矢がたったのがこの大陸内において有名な冒険者パーティーの一つであり、獣人がリーダーを務め、エルフも居るこの冒険者パーティー"電光の牙"であった。


 しかし、そんな彼らは困った事情を抱えていた。それは、この"神官"のことであった。

 もともと、彼らには回復役として別の神官が仲間になっていた。しかし、1ヶ月ほど前よりその神官が申し訳なさそうに理由も告げずにこのパーティーを去っていった。そして、教会より無理矢理と言って良いほどの強引な手段で、この"神官"がパーティーへ所属する事になった。

 最初のうちは、それでもわかり合おうとした彼らだったが実力も伴わず露骨なまでにエルフの剣士へ媚びを売るこの"神官"に対し、良い感情など抱けるはずもなかった。

 その上、この依頼が来てしまったのである。不安要素を抱えていたとしても、早期での達成を強いられた彼らに出来る事は少しでもこの"神官"を使えるようにした上で、回復用の魔法薬を大量に準備する事だけであった。


 しかし、彼らの判断は甘すぎたと言わざるを得ない。心の何処かで有名になった彼らは失念していたのである。

 なぜならば、どんなに凄腕の冒険者一行であったとしても未知の大地へ不安要素を抱えたまま挑戦する事が、どれほどまでに無謀であったのかという事を・・・。

 彼らはまだ知らない、彼らの向かう"イエンソド大湿原"には数多の恐怖が待ち受けている事を・・・。

 そして、彼らが絶望に包まれる未来を・・・、今はまだ知るよしもなかったのである。



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