魔女王様と御前試合。
「待たせたわね。
これより、第3回御前試合大会を開催するわ。
各々、今までの鍛錬の成果をたっぷりと私に見せてちょうだいね。」
黒薔薇の魔女王の開催の言葉に触発されるように、再び大歓声が上がる。それを満足そうな笑顔で頷き、魔女王は己のために用意されたイスへ座るのであった。その側には、古代龍の翁と、鬼才の宰相の姿も見える。そして、一番楽しそうに国賓としてその席にいる事が許されているサラサの姿があった。
闘技場の観客席に囲まれた闘いの場へ立っているのは、黄金の獅子将軍、女王の執事、女王の侍女を筆頭に、軍の中より選抜された20名の兵士達、そして一番の注目を浴びているのが深紅の髪と瞳を持つ密偵の"ロキ"の計24名だった。
各6名ずつの4つのトーナメント形式で、それぞれ4面ある枠の中で闘いを繰り広げる。対戦カードはくじ引きで決定しているが、名前が挙がっている4人に関してはそれぞれのトーナメントに一人ずつ配置されるようになっている仕組みだ。各者順調に勝ち進み、予測通りの結果とも言えるがやはり勝ち上がってきたのは、その4名であった。
そして、女王の手により対戦カードが観衆の面前にて引かれ、組み合わせが決定する。
決勝トーナメント 第1試合 黄金の獅子将軍 VS 女王の執事
第2試合 女王の侍女 VS 深紅の密偵
第1試合は、獣人としての強い筋力としなやかな身体を持ち、女性の身でありながら軽々と黄金の装飾の施された一般的に普及している物より一回り以上大きな身の丈ほどもあるクレイモアを軽々と振り回す"ナギ"。
対するは、正確無比な槍術の技術と己の魔力によって最大にまで強化された肉体に、聖銀を用いて鍛え上げられ、まるで氷で出来ているかのように透明な輝きと冷気を放つ直槍をその手に握りしめている"レディウス"。
二人の闘いは壮絶さを極めた。両者共に女王の御前であるという事で互いに譲る事はなく、激しくも美しい、黄金と白銀の麗人達が剣舞を舞っているかとも思える闘いであった。
しかし、闘いに決着は付きものであり、激しい闘いで消耗した体力により出来てしまった一瞬の隙を、闘いを専門にしているナギが見逃すはずもなく、レディウスの手より槍が飛ばされてしまったことで勝敗は決したのであった。
第2試合は、エルフとしての高い魔力をその身に秘め、魔力による身体だけでなく、薄い黄金色の刃と中央にはめ込まれた大粒の翡翠色の魔石を核に魔力による刃の強化までも行っている双剣をその両手に構えている"アイリス"。
対するは、肉体強化によりさらに俊敏な動作ほこり、決して外す事がないほどに熟練した投擲技術を持ち、魔力の籠もった柄の短い短剣と投擲用ナイフを装備した"ロキ"。
二人の闘いは、速さと技術を競う闘いとなった。アイリスがロキの懐に入り込もうと接近すれば透かさず10本程度の投擲用ナイフを全て急所に当たるように放ち、防御に回ったところで距離を詰め、攻撃しては離れると言った動作を繰り返していた。次第にお互いの思考の先読みをする闘いとなっていき、アイリスの攻撃に転じる一瞬の隙を探り当て、投擲ナイフにてバランスを崩したところを一瞬で距離を詰め、決着は付いたのであった。
こうして、最終対戦カードは決定した。
黄金の獅子将軍と深紅の密偵の対決にて優勝者が決定する事となった。観客達は予想外のこの白熱した展開に徐々に興奮の色を強くしていっている。
闘技場の中央に現れた二人は、互いに相手の力量を探り合い、己の得物を強く握りしめる。闘いの火ぶたが切って落とされると同時に、ナギが走り出す。投擲ナイフにて牽制するロキに対し、急所を狙う数多のナイフに動揺することなくロキへ向かっていく速さを減速する事はないナギ。
両者の距離が急接近し、ナギのクレイモアによる大剣を扱っているとは思えないほどの速さで繰り返し、繰り出される連続した重い攻撃を凌ぐロキ。その合間を縫って、ナギのより深い懐に入り短剣で必殺の一撃を狙う。しかし、ナギの猛攻にロキは徐々に耐える事ができなくなり、ナギの力強い腕がロキを捕らえた時点で勝敗は決したのであった。
以上により、この第3回御前試合大会は黄金の獅子将軍、ナギの優勝で幕を閉じたのであった。




