こちらが新しい家族たちです!(予定含む)
「ということで、ナギと結婚する」
「ほぉう」
「はぁ!?」
「へぇ〜!」
夜、わたしたちは仕事を終えたバルルークさんと面会していた。イセルルートでの出来事と成果を報告し、お礼と謝罪--だって双子に仕事を休ませ同行させ、バルルークさんには船の手配を何度もさせたというのに、わたしときたら帰るのを諦めたのだ。なにをもって謝罪に替えられるかわからないけれど、平身低頭して謝らないわけにはいかない--をしたあと、今後の話になり、まぁ婚約の報告となったわけだけど。
カイがわたしと結婚すると宣言した瞬間、バルルークさんは眉を跳ね上げ、サジさんは苦い顔をし、ラズさんはニヤニヤしだした。
「いつ式をするんだ? 今のところ形だけとはいえ、ナギさんはわしの養女じゃ。準備はこちらでしよう」
「あの、そこまで迷惑をかけるわけには……」
「わしのとこはな、ボンクラ息子どもが結婚せんでな、妻ともども娘に憧れとったんじゃ。むしろ親孝行じゃ」
わたしに気を遣わせないための申し出だとわかっていたけれど、バルルークさんは堅固に譲らなかったので、有り難く受けさせてもらうことになった。
というか養女か。身分証の名前だけかと思いきや、実は戸籍とかも作られてたんだろうか。
「孫が産まれたら抱かせておくれな」
ニコニコと笑いながら言われると、なにも言えなくなってしまう。孫……つまりわたしとカイの子どもってことで。う。ダメだ、想像しちゃ。
「あの、式ってなにをするの?」
「神殿に行くか、神官を立会人にして、宣誓書にサインをするだけだよ。貴族なんかはダンスパーティ的なこともするらしいけど、庶民はそのあと家族や友人と食事するくらいかね」
むこうの世界の結婚式の略式みたいなものかな。訊けばドレスは白でないらしい。
「で、いつにするんだ?」
「ナギさえよければいつでも。今日でもいい」
「いや、準備はさせてやれよ、カイ。女心のわからんやっちゃな」
「そうよ! そのままフられちゃえばいいのよ!」
「なんか言ったか?」
「ひひれ! なんれもなひはよ!」
カイにほっぺをつままれてサジさんが悲鳴をあげている。ラズさんがそれを見て爆笑して、バルルークさんはニコニコと笑ったままだ。
そんなこんなで、わたしとカイの結婚は準備が出来次第--まぁおよそ一月後?--行われることになった。むこうで挙式するとなったらそんなんじゃきかなさそうだけどね。なんかお姉ちゃんが半年前くらいから悩んでたような覚えがある。
「住むところはどうすんだ?」
ラズさんに言われて初めて気づいた。住むところ……今まで放浪してたから、定住地なんて考えもしませんでした。どうするんだろ。
「家……買うか?」
「買うの!?」
「欲しいなら買うぞ」
なんでそんな簡単に言っちゃうの⁇ 家だよ⁇ 一軒家ってこっちだと安いの⁇
「アンタね……」
「そんな簡単に買うとか言って、買えるの?」
「二十年近く傭兵やってりゃ、軽く何軒か買えるくらいは貯まるだろ?」
さらりととんでもないこと言いだしましたよコノヒト!? なに、傭兵ってそんな稼げるの⁇
驚いたのはわたしだけじゃなくて、若干双子もヒき気味だ。
「そういや報酬高い依頼も軽くこなしてたわよね……」
「ギルド職員と大違いだな……」
「アンタは女に貢ぎ過ぎなのよ」
額を突き合わせてボソボソと話している背中に、なんか哀愁が漂う。
「まあとりあえずは黒猫亭に仮宿をとって、諸々決めるよ。どこに住むかなんかも話してないし」
「ここでいいでしょ!」
「実家、近いしな」
三人のやりとりに、もはや口を挟むことができない。
「そうよ、式までは実家に住むべきよ!」
「そうだなあ、お兄様たちと親交を深めようよ、妹。手始めにお兄ちゃんて呼んで!」
「うちに住むのか? それもいいのう」
双子の提案にバルルークさんまで乗っかってきた!
「実家に、住むわよね? ナギちゃん?」
「お兄ちゃん……お兄様でもいいよ? 呼んで?」
そっくりな笑顔で双子がぐいぐいきたので、わたしは逃げられずに白旗を掲げた。
「はい……お世話になります、お兄ちゃん」
「ふおおおお! オレ、なんか新しい扉開けそう! ヤバい! これヤバい!」
「黙れ変態」
興奮して抱きついてきたラズさんに、カイの鉄拳が落ちた。




