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魔法使いと初遭遇!

 カイとウェリン様が睨み合っていると(いや、どっちかって言うとウェリン様が一方的に睨んでる?)、復活したらしいライナさんが、そそっとカイの横に並んだ。ちょうどカイの背後にいるわたしと、斜めで並ぶ形だ。


「ウェリン様、わたくし、あなたとは結婚できません!」


 鋼メンタリストであるところのライナさん、カイを盾に破談を申し入れるつもりらしい。たしかにウェリン様はおっさんだ。こんな人と結婚させられるとか、全力で回避したいよね!


「ライナ!?」

「なんだと!?」


 焦ったのはライナさんパパだ。もちろん予想外の婚約者の申入れに、当事者であるウェリン様も顔色を変える。

 ライナさんはそれを煽るかのように、無理やりカイと腕を組んで見せた。


「わたくし、昨夜はカイ様と過ごしましたの!」

「はぁ!?」


 この爆弾発言には、カイも声を上げた。いや、気持ちはわかるけど、人を巻き込む嘘はいけないと思いますよ!?


「昨日、ライナさん、いない!」

「黙りなさいちんちくりん! わたくしは、昨夜カイ様と二人でいたの! 間違いありません! ウェリン様、わたくしはもう乙女ではございません。あなた様には相応しくありませんわ!」

「待て、昨日は俺は部屋にいな……」

「なんだとぉっ!?」

「ライナ、なんてことを!」


 まさに阿鼻叫喚。結婚から逃げたい一心のライナさんの嘘によって、その場は地獄絵図と化した。


「カイ、わたし一緒! 昨日」


 カイとライナさんを引き離す形で、わたしは二人の間に割って入った。しかし頭に血の上ったウェリン様には届いていないようだった。


「ら、ライナ……! 貴様、わしのライナになんてことを!!」

「誤解だ! 俺は昨日ナギの部屋にいた!」


 ウェリン様は顔をどす黒く染めてカイに詰め寄った。カイが否定しても聞く耳を持とうとはしない。


「はぁあ!? 貴様、なんて白々しい嘘を! わしのライナに手を出しておいて、そんな態度とはどういうことだ! 《きたれ、炎よ!》」

「ダメ!」


 ウェリン様が手を振り上げたのを見て、わたしはカイが殴られるのかと思い、咄嗟にカイの前に出た。

 しかし、目の前に現れたのは手ではなく、炎とそれを防ぐ水の壁だった。


「なんだとぉっ!」

「えぇっ?」


 呆気にとられるウェリン様とわたし。その目の前で水の壁は炎を飲み込み、するりと消してしまった。


「貴様、魔法使いか!?」

「……バルルークの、護り石の力か」

「おじいちゃんの?」


 見ると、首から下げていた蒼い石が光っている。そっか、これが助けてくれたんだ! バルルークのおじいちゃん、ありがとう!


「くっ、もうこうなったら手段を選んではおれん! ハーウェル殿、花嫁は連れて行くぞ! 《開け、移動の陣よ》」


 業を煮やしたウェリン様は強行手段に出た。なにか呪文らしきものを唱えると、ウェリン様の周りにうっすら光る魔法陣が現れる。


「こい! ライナ!」

「いやぁっ!」


 ウェリン様はライナさんを魔法陣に引きずり込んだ。途端、魔法陣が強く光る。


「ライナさ……」

「カイ様!」


 魔法陣が光るのをただ見ていることしかできなかったわたしたちに、ライナさんが手を伸ばした。

 手を伸ばして……その瞬間、視界がくるりと回った。


「えぇっ!?」

「ナギっ!」


 なんでわたしとライナさんの位置が入れ替わってるの!?


 身動きする暇もなく、わたしの視界は光に飲まれた。

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