とあるハンターの旅路
「クラリス明日もワイバーン狩りに行くのか?」
薄暗い酒場の片隅で客と店主の会話がなされている。
「いえ、目標の金額も貯まったし狩りはもう終わる予定よ」
「そうか! おめでとうと言わせてもらうよ。国で待ってる家族にようやく会えるのか!」
「ええ、子供と夫を待たせているから早く帰らなきゃね」
「そうだな、まだ小せぇガキどもに母親の顔をみせてやりな」
「プッ! ハハハハハハ!」
「何がおかしい?」
まじめな答えを笑われた店主は怪訝な顔を浮かべる。
「いや、その厳つい顔で言われるとな」
「悪人顔で悪かったな!」
店主は話すと明るく接しやすいが、見た目はどこかで犯罪を終えた顔をしている。
「笑ってすまない。本気で心配してくれているのはわかってるから」
「いいさ。お前がしっかり家族の元へ帰れるならな」
「プッ!」
クラリスは笑いを堪えるのに必死になっていた。
「ここに来てもう四年か」
店主はもう気にしていないように話す。
「そうね。ゆっくりしてたらあっという間に五年が経っちゃうわ」
「もうすでに五年目の半分終わるぞ?」
「ゆっくりしちゃってたわ」
二人で冗談を言い合い、日々の戦いの疲れをお酒と一緒に笑い流す。
「このあとまた行くのか?」
「止めないでよ? しつこいとは言え侯爵様には助けられてるんだから」
「その関係性は面倒なことになりそうだけどな」
「それでも、こうしないと家族の元へ帰るのがもっと遅くなったわ」
「まあ、お前がそれを選択したなら止めねえよ」
「ありがとう」
クラリスは日々の魔物狩りの納品を侯爵に直接行っていた。
ある日クラリスの活躍が耳に届いたのか、アプローチを受けていた。
「それじゃあ行ってくるわ」
「気をつけてな」
店主に見送られながら査定が終わったであろう侯爵家へと向かう。
夕飯時なのか街中は人通りが落ち着き各家から明かりや煙が漏れている。
ふと家の中に入る親子が目に入る。
「もうすぐ帰るからね、エアリス、アシム、アイリス」
我が子が幸せな人生を送れるように、稼ぎのいい場所を探していたら随分と遠くに来てしまった。
ここから帰るのに二か月の旅路を行かなければならない。
もしかしたら夫がすでに問題を解決しているかもしれないが、少しでも可能性の高い方法を選択したので後悔はない。
自分の家族を守るためという想いを胸に、土の道を一歩一歩進んでいった。





