第77話 組織の長
「ライゼンはいるか?」
「ああ? なんだこのガキ!」
「や、やめろ! 話聞いてないのか!」
「あ? 何が?」
「お前は人の話を聞かないから! 俺たちの新しいボスだ!」
「は!? 聞いてないぞ!」
「聞いてないお前が悪い! とにかく今は何も言うな!」
隣の事情が分かっている男がはげ頭を軽く叩いて黙らせていた。
「通るよ」
「ど、どうぞ! ライゼンさんは二階の一番奥の部屋にいます!」
アシムは何事もなく遊郭の中に入っていく。
過ぎ去る時に男たちの会話が聞こえてしまった。
「あいつそんなにヤバいのか?」
子供にペコペコする同僚に驚いたのだろう。
「ああ、化け物だ。俺はあの場にいたからな」
「そんなヤバいのか……」
組織の中でどう伝わっているかわからないが、化け物と思う奴がいるらしい。
アシムは言われた通りに二階の奥の部屋へ向かう。
途中でお姉さま方に悪戯されながらもなんとか部屋にたどり着いた。
「はぁはぁ! こ、ここは魔境か!」
扉をノックして中に入る。
「あ!? なんだてめぇか」
敗戦の将とは思えない態度で迎え入れられた。
「ダイン一家のボスに会いたい」
「殴り込みか? やめとけ一人じゃ無謀すぎる」
「つい最近闇組織を倒したから大丈夫だ。安心安全の実績だろ?」
「チッ! ガキの癖に何も言えねえじゃねえかよ」
実際に打ちのめされただけに何も言えない。
「ムール酒場を境界に今抗争中だ。ダイン一家の情報は入ってこねえよ」
敵にボスの居場所を知られるわけにはいかないのだろう。
「だが、奴がよくいく店がある。もちろん奴の縄張りだがな」
「そこでいい」
「本当に単独で行くのか? 何人か連れていくか?」
「そんなことしたら争いになるだろ。それにギュスタブを納得させるためだからな」
「チッ! アイツ何をやってんだ」
「ああ、ギュスタブを罰さないでくれよ? 今回勝負を受けたのは僕の意思だから」
「舐めた真似して放っておけっていうのか?」
「そうだな、僕もお前も舐められている」
「なら!」
「お前も舐めてるのか?」
「あ゛?」
「お前も俺を舐めてるんだろ?」
アシムは凄むわけでもなく淡々と言い放つ。
この時ライゼンはアシムに対して底冷えするような感覚を抱く。
しかし次の瞬間にアシムは笑顔に変わり、柔らかい雰囲気に戻る。
「これが僕の強みさ。相手が舐めてかかってくれる、まあ結果で答えを示すから今は見ててよ」
「わ、わかった」
「それじゃあね!」
ダイン一家のボスがよく現れるというお店に向かうべく外へ出た。
「エリゼとユーリのためなんだけど、まあついでかな」
自分の傘下に入った組織の面倒を見るのが普通だと思うので、ここでトップの実力を見せておくのもいいと思った。





