第75話 来客
「ふふふ!」
アシムは本を片手にニヤついていた。
組織が持っていた”禁書”を奪い……譲り受け早速いじっていたのだ。
「共鳴……」
先日神聖魔法を使用したときに感じたことを確かめてみる。
黒い魔力が本を包み込み、感覚的に理解する。
「お前は神聖魔法の残り滓みたいなものか?」
自分の魔法と比べると酷く劣化しているように思える。
外側の形だけ残っており、中身がないのだ。
「そうか、この型を元に魔力を送って発動させるのか」
この禁書はあくまでアシストの役割を担っており、使用するには相応の魔力が必要になるようだ。
「溜めることができるのか。なるほどだからか」
この禁書を使用するには大量の魔力が必要になる。
魔力量に自信のあるアシムでさえ遠慮したい量を吸い取られる。
しかし魔力は溜めて使えるようなので、コツコツ溜めたのだろう。
「これは危険だな」
試しに魔力を込めてみたら一気に引っ張られる感覚があった。
「コントロールが難しいな」
アシムは魔力の操作には自信があったので禁書に流す量を調整する。
「次は神聖の魔力だけを流し込んでみるか」
共鳴を起こしたぐらいだ、相性がいいに決まっている。
最初は警戒しながらゆっくり流し込んでみる。
「あれ?」
抵抗や、余計に引っ張られるような違和感は感じない。
「やっぱり相性がいいんだ」
さらに流し込んでみると、普通の魔力よりも少ない量ですぐいっぱいになった。
「普通の魔力だと燃費が悪いのかな?」
神聖魔法を元にしているのだから、相性がいいのはしっくりきた。
魔力を流した感じだが、上手く扱えるのではないかと思う。
「神聖魔力を持ってない人にも使えるんだ僕も使えるだろ」
むしろ効率よく使える気がする。
「魔物に試すか」
人に向かって使うのは怖すぎるので、手ごろな魔物を探すことにする。
家を出ようとしたときにメイドのエリゼに呼び止められた。
「アシム様! お客様がいらっしゃっています」
「ん? 今日は誰とも約束していないはずだけど?」
アシムの独立は表沙汰にはなっていないものの、一部の貴族はすでに情報を掴んでおり、たまに縁談を持ってくることがあった。
「いえ、本日はまた違った方のようで。ギュスタブという方です」
「ギュスタブ? 貴族の人?」
「いえ、例の組織の人です」
その一言でアシムは理解する。
「もしかして、もう出てきちゃったかな?」
「出てくる……ですか?」
「ああ、エリゼも無関係というわけではないのか」
元はエリゼとユーリを巡って起こった争いだ。
「じゃあ話してくる」
「いってらっしゃいませ」
アシムは客間で待っているであろう人物のもとへ向かった。
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