第69話 サルバトーレ家襲撃⑤
「ほう、流石に驚いたぞ」
「はぁはぁはぁ」
エアリスは間一髪のところで回避した。
しかし、もう武器は持っていない。逃げれば家の中の人達がどうなるか分かったものではない。
「大人しく捕まって貰おうか?」
「捕まる?」
「ああそうだ。理由は話さんがな」
「そう」
「どうやら無駄のようだな!」
一瞬だった、これまでのスピードとからは想像もつかない詰め方をされた。
「がぁっ!」
エアリスの腹に蹴りが突き刺さる。
なんとか後ろに飛び衝撃を和らげるが、ダメージは大きい。
「しぶといが、無駄だ」
男の言う通り、エアリスは次の攻撃を避ける力は残されていなかった。
「ん?」
エアリスは最後まであがこうと何とか身構えるが、男が何かに気づいた。
「ここは子供が兵士をしているのか?」
「エアリスさん! 大丈夫ですか!」
「ユーリ君!」
そこには数日前に紹介された男の子が立っていた。
ユーリは急いでエアリスに近づき男の前に立ちはだかる。
男はかける言葉もなく襲い掛かった。
ユーリはどうにか受けるものの、やはり大人との力の差は歴然だった。
「少し誤算だが、問題ない!」
ユーリは迫りくる男に対してじりじりと下がるしかなかった。
「ユーリ君逃げて!」
エアリスが叫ぶが、ユーリは逃げる素振りはない。
ついに追い込まれたユーリに容赦なく剣が突き出された。
「がはっ!」
必死に回避したものの、腕を切り裂かれてしまった。
「今ので捉えたつもりだったのだがな。いやはや、ここの子供達はただものではないらしい」
必殺のタイミングであったはずだ、少なくとも男は本気で殺しにかかっていた。
「まあいい。だがもう終わりだぞ?」
すると、別の方向から声が聞こえてきた。
「やっと追いついたか」
「アイツめ! 一人で突っ走るからこうなるんだ!」
「さっさと片づけるぞ! 周りに感づかれる!」
あの女の単独行動だったのか、悪態をつく集団が現れた。
「くそっ!」
ユーリはどうやって逃げるか考える。
この人数差で手負いのエアリスを庇いながら逃走するのは絶望的だった。
しかしユーリに残された手は、戦うか逃げるかのどちらかで時間を稼ぐことだけだった。
逃げる場合はエアリスを置いていくしかない。そうしなければすぐに捕まってしまい時間稼ぎにもならない。
戦う選択肢でもよく持って一分程度だろう。
「何もないのか!」
相手に聞こえない声で悪態をつくが、状況は変わらない。
「それじゃあ大人しく捕まって貰おうか!」
黒ずくめの集団がこちらに間を詰めた瞬間。
「ん?」
またも男が何かに気づく。
「よいしょーーーーーーー!」
相対するもの同士の間に、”空”から何かが落ちてきた。
”それ”は大きな轟音を立てながら地面を削り、砂ぼこりで視界を覆い尽くしながら止まった。
「何してくれてるの?」
アシムがちょっとしたクレーターを庭に作った瞬間だった。
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