第45話 夜遅くの帰宅
「オウ゛ェーーーー!」
可愛らしい女性から出る音とは思えない、音をジャムが発していた。
「落ち着いたら行くよ!」
既に王都の門の前まで来ており、ジャムの体調回復待ちだった。
「今度はもっと揺れないように、走らないとな」
「今度!」
ジャムがこちらに勢いよく振り向く。
「うおっ! 汚ねぇ!」
うら若き乙女に言ってはいけない言葉だが、本当に汚かった。
「オウ゛ェーーーー!」
どうにか一刻ほどで回復してもらい、王都に入る。
「すっかり遅くなっちゃったから、今日はうちに泊まっていきなよ」
「お世話になります」
ジャムをサルバトーレ家に案内する。
「はぁ~! 貴族様のお屋敷ってこんな大きいんだ」
「父上に紹介するから、こっち来て」
「うん!」
アシムの後ろをジャムがついていく。
「父上!」
父の書斎をノックして入る。
「どうしたアシム! 連絡もないから心配したぞ」
「すみません、アクシデントがあったので」
「何?」
「入って」
ジャムを部屋に招く。
「し、失礼します!」
「君は?」
アダンは、眉をしかめる。
「ジャムといいます! アシム様に助けていただきました!」
感謝を伝え、お辞儀をするが、アダンの顔は険しいままだ。アシムは感触がよくないと少し焦ったが、次の言葉でその理由がわかった。
「君、話はアシムから聞いておくから、まずはお風呂に入ってきなさい」
「あ! 失礼しました!」
ジャムは慌てて部屋を出る。
「アシム! 風呂場の案内と、服をメイドに持ってこさせなさい」
「わかりました」
一人部屋を出て、オロオロしているジャムのところに行き、案内をする。
「風呂場いくよ、服はメイドに持ってこさせるから」
「あ、ありがとう」
素直にジャムは従う。案内を終え、アダンのところに戻る。
「それで、あの娘を助けたと言うのは?」
「はい、外に魔物を狩りに行ってたんですが」
「ん? ハンターの仕事はしばらくやらないんじゃなかったのか?」
「今日は、下見ですよ」
「そうか」
アダンは、アシムのハンター活動に理解を示しているが、流石に一人というのは心配なため、一緒に狩りに行ってくれる人が見つかるまで、休業しているのだ。
「ちょうど下見が終わった帰り道に、襲われているジャムを見つけて助けたんです」
「それで、あの子はどうするんだ?」
「はい、訳があって村を出たらしいのですが、当てもなく困っていたそうです」
「その訳を聞くことは?」
「まだ話していないのでわかりませんが、後で聞いてみます」
「わかった、お前はあの子をどうするつもりだ? 村へ返すのか?」
「いえ、事情を聞いてからですが、専属メイドとして雇おうと思っています」
「そうか、お前も貴族位を持っているから、ちょうどいいだろう」
アダンの了承も得られ、大丈夫そうだ。





