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第42話 必要悪

「お主らか! 最近の失踪事件の犯人は!」


なんと、正面から対峙していた。

村人と、フードで顔を隠した集団が向き合っていた。


「金はある、若い娘を五名買いたい」


「貴様!」


若い男衆の前に、村長なのか、先頭におじいちゃんが陣取っている。


「人は売り物じゃないぞ!」


「そうか、だが悪い話でもないと思うがな」


フードの男は村を見渡す。


「王都から遠い村では、生活も厳しいのではないか?」


この村は気軽に王都に行ける場所ではない、馬車があれば別だが。

行ったとしても、馬車がなければ多くの食料を持って帰れないのだ。


「この金があれば馬車を買い、食料を買い込んでもおつりがくるぞ?」


村の中に動揺が走る。


「それで若い女子(おなご)を犠牲にしろと言うのか!」


「犠牲ではない! この村にいる時よりも裕福に暮らせると約束しよう!」


女性達にも動揺の色が見える。


「まぁ、裕福に暮らせるだけの仕事はしてもらうからな」


「どんな仕事じゃ?」


「遊女だ」


「な! なんだと!」


「そうだ、遊女に偏見があるようだから言っておくぞ? 遊女は体が資本だ、酷い扱いはまずされない。さらに! 貴族に見初められる可能性のある職業だ! どうだ? 村が飢餓に陥って野たれ死ぬより、自らの価値を示して生きるのも悪くないだろう?」


村は状態が良くないようで、やせ細っている人しかいない。


「あのう、細い私でもなれますか?」


「ジャム!」


若い女の子が、名乗り出る。


「そうだな、そこはこちらがどうにかしてやろう」


「本当ですか? なら私行きます!」


「ジャム! やめろ!」


遊女になることで、村の人が助かり、自分の食い扶持も確保できるのだ、揺れ動くのも無理はない。


「止めないで!」


親なのだろう、壮年の男性と言い合っている。


「お前まで失ったら、どうすればいいんだ!」


「お母さんだけじゃなくて、ソーニャまで失うよりいいでしょ?」


家族を亡くしたのか、切羽詰まっているようだ。


「だが!」


「なら皆を食べさせてよ! お母さんは身体が弱くて死んだんだよ! もっと食べることができれば!」


女の子は泣き崩れてしまった。

父親は、何も言えず項垂れてしまった。


「村長さん? これがあれば村が助かるんじゃないですか?」


フードの男が畳みかける。


「強制はできん!」


「村長!」


非常な決断だろうが、村のことを考えると致し方ないのだろう。


「その心意気に免じて、三人までならこの金額を払いましょう、一人なら金貨五枚です」


一人に金貨五枚を払い、三人以上なら金貨五十枚を提示した。


「こ、これだけあれば何年も凌げる!」


男衆の一人が驚く。


村の流れは、受け入れる方針になっていた。



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