第132話 魔力の元
視界に二人の人物を捉えながら他の気配がないか探る。
「居ない……」
魔力を感知してここまで来たので、他に居ないとなると魔力の発生源はこの二人となる。
もちろん、この部屋に入る時も魔力を感じながら進んでいたので、折り重なっている二人の場所から漏れていることはわかっていた。
しかし、人間は魔法を使うことをしないと漏れ出ることはないはずなのだが。
「これは、回復魔法?」
近づいてみると二人は女性で、修道服のようなものを着ている。そのうちの一人が微弱ながら回復魔法のようなものをもう一人の方にかけているのだ。
「大丈夫ですか?」
危険はなさそうだが、一応警戒しながら近づいてみる。
「うぅ……」
意識があるのか、うめき声のような返事が返ってきた。
「失礼します」
生存を確認するために二人の態勢を直す。脈はちゃんとあり生きているようだ。桃色の髪をしている女の子がこの間も回復魔法を絶やすことなくかけ続けている。
「もう大丈夫ですよ」
魔法を使い続けて魔力が欠乏しかかっているのか、顔色がよくない。もう一方の髪が橙色の女性は攻撃されたであろう服の破れ方をしているが、傷口は見当たらず容体も安定しているようだった。
「回復魔法で傷が塞がっているのか」
今まで回復魔法を見たことがなかった。怪我をすれば薬草を使った薬で治していた。回復魔法が必要な怪我をした使用人もいたが、その時は教会に行って治して貰っていたので、目の前の少女が使っている回復魔法がとても珍しかった。
少女は安心したのか、回復魔法をやめて意識を手放したようだ。取りあえず髪が橙色の女性から外へ運び出す。
「アシム君!」
マーシャがこちらに声を掛けてくる。危険があるかもしれないので、出てきてもすぐ駆けよらないようにと事前に言っていたため、近づいてくる人はいなかった。
「その人は? 魔物はいなかったの?」
「うん。魔物はいなかった。あの魔力は人間のだったよ」
「人間? 人間から魔力が漏れ出てたのか?」
ユーリが不思議そうにする。修行で魔力を感じ取れるようになったからわかるのだろうが、普段人間から気配が出ることはあっても、魔力が漏れ出るということはない。
「騎士の人呼んで診てもらって。あと一人いるから連れてくる」
「わかりました」
テラが護衛で付いてきている騎士の元へ行く。騎士は生徒に内緒でついてきていたので、簡単に見つかったことに驚いていたが、話を聞くうちに真剣な顔になっていった。
洞穴に入ると先ほどの少女が大きな胸を上下させながら気持ちよさそうに眠っていた。
「案外大丈夫そうだな」
服が酷く汚れていたので、ここにたどり着くまで困難な道のりだったことが伺えるが意外と大丈夫そうだった。





