第131話 洞穴
「ほらあそこ……」
「本当ね」
出発前に話していた洞穴を班の全員と確認する。中からは微弱だが、かすかな魔力が漏れており何かがいることを告げていた。
「中に魔物がいるのか?」
ユーリの疑問に答える。
「うん。魔物かわからないけど微弱な魔力と気配を感じるからね」
「魔力を感じ取れるの?」
「まあね。ユーリも出来るよ」
「相手の魔力が強かったらだ。普通の人間の魔力なんてわからねえよ!」
マーシャが信じられないような目でユーリを見る。
「え! 出来るの!? 凄いじゃない!」
「サルバトーレの鍛錬をしたらできるようになるよ。マーシャもやってみる?」
「やめとけ……真っ当な人間でいたいならな」
今度はテラが信じられないようなものを見る目を向けてくる。
「そんなに凄いの?」
「もうこの話は終りね。興味あるなら今度教えてあげるよ」
そろそろ目的の洞穴に行きたいので、話を無理やり終わらせる。単純に魔法制御能力を上げて常に魔力をうすーく張り巡らせるだけなのだが、何もないところに魔力を維持することが難しいらしく、魔法が苦手なユーリができるようになったのは奇跡だとか言っていた。
「わかったわ。今度教えてね」
「了解。それじゃあ行こうか」
みんなで洞穴の前までくる。
「反応がないですね」
テラが身構えているが中にいる魔物が出てくる様子はない。
「中に入るのは流石に危ないからなぁ。どうしよっか?」
「普通なら何もせずに無視するだろ」
「だよなぁ。でもそれじゃあ訓練に来た意味がないんだよな」
ここは危険を冒してでも魔物と戦うべきか悩みどころである。
「ちょっと石を投げ入れてみるね」
近くにあった石を拾い洞穴に投げ入れる。これで気づいていないということはあり得ないと思うので、流石に何かアクションがあるはずだ。
「出てこないわね」
「そうですね」
ここまで反応が無いとなると、魔物が反応できないほど弱っている可能性がある。少なくともまだ生きているようなので、魔力を持つ魔物の姿だけでも見ておきたい。
「これだけ反応が無いとなると傷を負っているかもしれないね。僕が見てくるよ」
「え! 危ないわよ!」
「そうです! 様子なら私が行きます!」
「潜入なら俺は得意だが?」
テラとユーリが代わりを提案してきたが、万が一戦闘になった時生存率が一番高いのは自分だという自信はある。
「大丈夫だよ。魔物も相当弱っているみたいだし、それに戦闘になったら僕が一番生存率高いでしょ?」
これがベストであると他の三人に納得させる。
「わかりました。でも危ないと思ったらすぐ逃げてください」
「うん。逃げれる可能性が高いから行くんだしね」
班員の了解も得たところで洞窟の中に入る。万が一危険な魔物だった場合はもちろん逃げるつもりだ。それに、外には見えない位置で騎士が護衛についているので早々危ないことにはならないはずだ。
洞穴の中に入ると、奥の方に丁度部屋みたいになっている空間があった。魔力と気配がそこからするので十中八九何かがいる。
慎重に進み、部屋の中を覗き込む。
「あれは……」
目に映った光景は、折り重なるように倒れている二人の人間だった。





