第127話 勝負師
「満場一致でいいかな?」
班のリーダー決めは貴族がいる場合地位の高い人物がなるが、今回は男爵である自分と子爵家であるマーシャがいる。
正直地位の差はそんなに大きくないのでどちらがなってもいいのだが、みんなの意見では満場一致で俺のようだ。
「はい!」
勢いよく手を挙げた俺にみんなが注目する。
「なんだ? 多数決で勝てないからって貴族様の権力でも使おうってか?」
マーシャが苦笑いをしているから、そのブラックジョークはやめた方がいいと思うぞ。テラにいたっては、怒っているのか聞き流しているのかわからない表情をしている。
「違うよ。その代わりって訳じゃないけど、僕のことを様づけで呼ぶのやめてくれない?」
「なんだ、いつも通りじゃねえか」
ユーリは普段俺の名前すら呼んでくれない。家では執事長などに怒られるので様づけで呼ぶが、学園の寮に入ってからはよくて呼び捨てだ。
「ユーリじゃないよ。マーシャとテラだよ! 同級生なのに様づけは悲しいよ……」
距離を置かれた可哀想な子を演じて同情を誘ってみる。マーシャとテラは困ったような表情で弁明を述べてきた。
「恐れながら、アシム様は貴族家の主という立場でございます。子爵家とはいえ、その子供と使用人では立場が違います」
テラのいうとおりなのだが、自分の立場がややこしくて歯がゆい。独立を認められているとはいってもまだしていないので、そういった扱いはやめてほしい。
せっかくの学園生活だ、青春を謳歌したいと思っている。それが同級生の様づけで壁を感じるようなことにはしたくない。
「独立はまだしてないよ! それに、友人関係にそれはなしだよ……」
こちらの悲しそうな雰囲気を感じ取ってくれたのか、マーシャとテラは顔を一度見合わせてこちらを見る。 正直自分の使用人に呼び捨てにさせている時点で気づいてほしい。自分は敬語で話されるのが苦手であるということを。
勿論立場や、場所といったもので言葉遣いを使い分けるのは必要だと思う。同級生という立場の人たちに、学園という場所ではせめて様づけをやめてもらいたい、敬語もだが……
「わかりました! そこまで言うのならマーシャ様だけでも敬語はやめましょう!」
「ちょっとテラ! 今の雰囲気ならあなたもでしょ!」
使用人のいきなりの裏切りに驚いているマーシャ。確かに使用人の立場にいるテラは敬語をやめるのは難しいだろう。
「わかった、それで手を打とう!」
「アシム様!」
瞳に涙を浮かべマーシャを見つめる。
「うっ!」
この世界の顔は中性的なので、上目遣いが武器になる。男としてはどうかと思うが、使えるものは使っておく。これが勝負の鉄則なのだ。
「降参よ……アシム君」
「うんうん! 交渉成立だね! それじゃあ僕がリーダーってことでいいかな?」
テラとマーシャが頷く。マーシャは少し不機嫌そうだが、問題はなさそうだ。
「キモッ!」
隣の使用人から辛辣な評価が飛ぶが気にしない。俺は勝負には絶対勝つ勝負師なのだ。





