第119話 精霊事情
火の精の説明によると、精霊とはエネルギーらしい。
そのエネルギーがヒト型を取り、会話で意思疎通までしていることに混乱を招いているが、人間には理解できない事象なのかも知れない。
「うーん。説明が難しいなぁ。精霊は人間に精霊力を分け与えられるんだけど、その時に与えるエネルギーというのは精霊自身なんだ。魔力に例えたけど、魔力とは違うエネルギーだから効果が違ったりするんだけど、できることが似ているから人間には魔力って説明した方がわかりやすいかも知れないね。」
つまり、魔力とは別に精霊力という新たなエネルギーということだろうか。
「精霊力?」
「精霊力というのは自然のエネルギーだね。精霊力を与えすぎたからといって精霊が消えてしまうことはないんだ。まあ精霊にも扱えるエネルギー量が決まっているから、それを超えちゃうと一旦消えて回復するまで待たないといけなくなるんだけど」
自然エネルギーだからといって無限に使えるわけではないらしい。
「魔力と差別化するなら、魔力は人間が生み出すエネルギーで、精霊力は自然が生み出すエネルギーといったところかな? もちろん自然は膨大だから魔力よりも大きなエネルギーだと思っていいよ」
同じエネルギーでも、規模が違うということなのだろう。
「そのエネルギーを使えたら、使えない人よりも……」
「そうだね、2倍以上のエネルギーに質も上がるからお得だね!」
軽く言っているが、膨大なエネルギーを持っていたら最強なのではないだろうか。
少なくとも魔力量で相手に負けることはほとんどなくなる。
「そんな精霊とどうやったら契約できるの?」
「言えない……というよりそんな方法はないよ。契約するには精霊に気に入られないといけないけど、姿を現さない精霊に気に入られると思う?」
かなり難しいだろう。そもそも精霊に好かれる行動などわからない。
「人間側から干渉しようとしても無理なんだ。それに精霊のほとんどは人間に興味がないからね。こんなに面白いのに勿体ないよね!」
「君が人間観察が好きなのは分かったけど、結局精霊と契約はできないってことか。君は人間が好きだから契約したの?」
精霊が人間に姿を見せないということはわかったが、目の前にいる火の精霊は先ほどから違う反応を見せている。
「精霊にも色々な奴がいるってことさ! 僕からみたら堅物ばかりだけどね、そうそうこの前なんてさセレネの奴が人間に肩入れするなんて何事だー! って怒っててさ」
精霊の愚痴を聞かされたが、セレネという水精霊が非常に真面目で口うるさいということだけがわかった。





