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第110話 勘違い

「やっと戦えるなあ!」


興奮したモリトンがアシムに話しかける。


「僕何かやったか?」


モリトンと話したことなど1度しかなく、それも先生の介入により数十秒程度だった。


「気に食わねえんだよ!」


「何が?」


身に覚えもなく、いきなり気に食わないと言われても困ってしまう。


「始め!」


2人の会話が終わる前に先生の合図が聞こえた。


「お?」


何か話すのかと思いきや、モリトンは開始の合図より早めに動いていた。

 もちろんアシムにはその動きが緩慢に見えており、不意を突かれるわけもなく……


「な、何!」


「お前、魔法で戦うんじゃないのか?」


「ハッ! そんなこと一言も言ってねーよ! ズルとか言うなよ?」


「別に使ってもいいけど……」


その辺のルールは分かっているが、アシムの言いたいことはそうではない。

 ”不得意”な剣技をわざわざ使うより、最初から魔法で戦ったほうが絶対にお得である。

 無駄な体力を使わないで済むし、何より情報のない相手にわざわざ、不得意な戦い方をするリスクを取る必要は全くない。


「俺様の剣技についてこれるとはやるじゃないか!」


「ん?」


何故か褒められる。


「休む暇はないぜ!」


モリトンは怒涛のラッシュを仕掛けている……つもりのようだ。


「マジか……」


「どうしたどうした! 防いでばかりじゃ勝てないぜ!」


自分が有利と思っているのか、モリトンの威勢がいい。

 喧嘩を吹っ掛けられたとはいえ、アシムにも少しの良心は残っている、負ける気はないとはいえ、多少は勝負に付き合ってあげてもいいと思っていた。


「それじゃあ疲れる前に!」


モリトンの剣を弾き、がら空きになった脇へ剣を振るう。

 しかし見事な回避を見せ、間一髪で逃げる。


「チッ! なかなかやるじゃないか」


今のはもちろん手加減をしたので、避けれたのだが……


「お前もな」


意外と動けているという点で褒めておいた。


「俺の剣を弾いたことは褒めてやるが、俺が得意なのは剣よりも魔法なんだぜ! どうだ! ビビッて声もでねーか!」


「知ってる」


「何?」


「だから、お前が魔法が得意なのは知ってる」


「ふふっ! 有名な魔術師としての名がここで仇となったか。だがまあいい、貴様に勝つのに変わりはないからな!」


アシムの言葉に勘違いをしているようだ、この一週間同じ空間で訓練を受けてきたのだ、お互いにある程度実力はわかっているはずなのだが。


「はあ、御託はもういいから掛かってきなよ」


モリトンに手の甲を見せ、指をクイッとまげ挑発する。


「その余裕な態度むかつくなぁ!」


モリトンはアシムの態度に怒り、魔法を発動した。

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