第106話 挑戦状
第8回ネット小説大賞受賞しました!ツギクル様より書籍化予定です!
アシム達はあれから一週間何事もなく過ごした。
入学したばかりで何もないというのも寂しいことだが、どうやらアシムは皆に避けられているようだ。
避けられているといっても虐めの対象になっているわけではなく、どことなく距離感を測っているように感じるのだ。
「アシム君! 今日もよろしくね!」
放課後になりライアが喋りかけてきた。
現在アシムと関わりのある人物は、初日に話しかけてきたライアとマイア、マーシャとテラだけとなっている。
「ああ、とりあえず今日まででいいんだよね?」
アシムはライアとマイアにお願いされてこの一週間剣の鍛錬をつけていた。
本当は自分の鍛錬をしたいが、実践練習が終わるまでとお願いされ断りきれなかったのだ。
「うんわかってる! ありがとう!」
「アシム君の時間とっちゃってごめんね」
マイアが謝ってくる。
「いや、いいよ! 人に教えるのもいい勉強になってるからね」
自身のみで行う鍛錬とはまた違い、他の人の動きや考え方に触れることはアシムの勉強にもなっていた。
ユーリを鍛えた時もそうだったが、ひとりひとりの癖が出て面白いのだ。
ユーリは手数を増やすために最小限の動きで攻撃してくるのに対し、ライアとマイアは力のなさを補うために遠心力や、勢いを上手く使っていた。
「オイ!」
誰かを呼び止める声が聞こえたが、このクラスでアシムに話しかける人はほとんどいないので、そのまま教室を出ようとする。
「貴様! 無視するとはいい度胸じゃないか!」
アシムの進行方向を遮るようにモリトン・ヴァルデックとその取り巻きが立ちふさがる。
「アシム・サルバトーレ! 貴様ヴァルデック様を無視するとは無礼だぞ!」
右側の青髪が喚き散らしている。左側の赤髪の男の子はすましているのか、少し体を斜に構え手を顎に添えて決め顔をしている。
「ああ、僕のことを呼んだのか。気づかなかったよ、これは失礼した」
「ふんっ! 分かればいい!」
「それで、何か用かな?」
「明日の実践練習俺と戦え!」
「ん? どうして?」
ここ一週間は座学だけでなく、武術や魔術の練習も行われていた。
アシムはその中でまともに相手をできそうな人物がユーリしか見当たらなかったので、実践練習の相手はユーリにしてもらうつもりだった。
むしろユーリ以外だと虐めみたいになりそうなので、他の人と勝負する気はさらさらなかった。
「ははは! 2属性魔法を得意な俺にビビったか?」
4大属性を使える術師はいたりするが、それぞれの属性魔法が弱かったりする。
複数属性を扱えるのはそれなりに優秀だし、モリトンは2属性の練度が意外と高かった。
もちろんアシムはそれを鑑みて相手にならないと思っているのだが……
「別にいいよ」
「ちっ! その余裕な態度後悔させてやるからな!」
それだけ言うとモリトンはアシムの前から立ち去っていった。
「ユーリ明日は別の人と組んで」
「ああ」
明日の心配は、モリトンを早く倒してしまい暇になってしまいそうなことだけだった。
お読みいただきありがとうございます!
受賞できたのはここまで読んでいただいた皆様のおかげです!
月並みなコメントですけど本当ですよ?
応援していただける方がいるから書き続けられる、そして書籍化への挑戦もできる。
本当にありがとうございます!





