第10話 専属契約
「なるほどな、それでこれどうするんだ?」
話している人は、ハンターを生業としているフェルツという男性の人だ。
「運べないので、このまま焼いてしまおうかと」
「おいおいもったいない! なら俺にくれよ!」
「いやいや、自分で狩った手柄を他の人に渡したくないですよ」
「ぐぬぬ」
変な悔しがり方をしている。
「坊主、お前そんなに強いのか?」
「ビッグブルを綺麗な状態で倒すぐらいには」
「なら俺と専属契約を結ばないか?」
フェルツが笑顔で、提案をしてきた。
「専属契約?」
「ああ、俺がその魔物を運んで売ってくるから報酬の四割を俺にくれ」
四割とは、流石に吹っ掛けすぎだ。
「話になりませんね」
アシムがやれやれと首を振りながら、火魔法を発現させる。
「無詠唱! 苦しいが、三割でどうだ?」
下げて妥協しましたよ感を出したいのだろう。
「はぁ、あなたが吹っ掛けているのは分かっているんですよ? 一割です」
「流石に一割はないだろう! 二割でどうだ!」
「条件付きならいいでしょう」
「条件?」
「はい、僕の戦闘にはついてこないこと、そして僕のことは秘密にする、何も聞かない、これが条件です」
「魔物を運ぶのに戦闘について行かないのか?」
「ええ、運んでほしい時は事前に待ち合わせをしましょう」
「お前はどうやって魔物を運ぶんだ?」
「何も聞かないこと?」
「う! せめて契約に支障がないぐらいは聞かせてくれよ?」
「いいでしょう、あなたは僕の狩ってきた魔物を運んで売って、八割を僕に渡すそれ以外のことはしないで下さい。」
「秘密主義ってやつか」
「ええ、それを守って貰えるなら契約しますよ」
「わかった乗ろう!」
フェルツにとってはとてもおいしい話だった。
命の危険を冒さないでお金が入るのだ、しかもビッグブルを綺麗な状態で狩れる実力者。
かなり高額な報酬が見込める。
「じゃあ、ハンター依頼所で契約を結びに行こう」
「いいですよ、目立ちたくないのでブルは置いていきますよ?」
「しょうがない、行こうか」
この目の前の一匹よりも信頼を築いたほうがいいと、判断したフェルツはビッグブルを諦める。
「よし!」
火魔法で焼き切り、他のハンターに横取りされないようにする。
「無詠唱……」
「何も聞かない!」
「分かってるよ!」
「それでいいです」
「敬語はやめてくれ! お前が契約主になるからな」
「わかった」
「それでいい」
むず痒かったのか、敬語は拒否されてしまった。
ビッグブルも焼き終わり、契約を結ぶためにハンター依頼所に向かった。





