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勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


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42/42

42 勇者は、四天王ヴァルゼインと再び会う


 魔王城の内部は、静かすぎた。


 俺は気配遮断と魔力遮断を重ねがけし、無臭や無音行動も使い完全に隠密で進む。

 分厚い石壁、天井の高い回廊。

 人間の城を無理やり拡張した歪な構造が、至るところに残っている。


(……ゴーレムの記録がなければ、確実に迷ってたな)


 角を曲がり、段差を下り、使われていないであろう通路を選んで進む。

 魔族の気配は点在しているが、どれも遠い。


 正面でゴーレムが暴れているはずだ。

 城の注意は、そちらに向いている。


(今のところ、計画通り)


 そう思った矢先だった。

 通路が、不意に途切れる。

 視界が、一気に開けた。


「……中庭、か」


 この辺りは城の中心部。

 ゴーレムの記録では広い空間となっていたが、中庭だったのか。

 夜空がぽっかりと開き、月明かりが石畳を照らしている。


 噴水は枯れ、植物は枯死しているが、空間そのものは異様なほど整っている。

 魔力の流れも、淀みがない。


(嫌な場所だな……)


 本能が警鐘を鳴らす。

 だが、ここを抜けなければ最上階には行けない。

 俺は息を整え、慎重に半ばまで進んだところで――


 ――ぞわり、と。


 背筋を、強烈な寒気が走った。


(……来る)


 直感と同時に、空気が震えた。


 ゴォォォ――ッ!!


 重低音の咆哮が夜空を裂き、強烈な風圧が中庭を叩く。

 俺は即座に後方へ跳んだ。


 次の瞬間、巨大な影が空から降り立つ。

 石畳が砕け、衝撃が地面を揺らす。


 そこにいたのは――


 黒紅の鱗を持つ、巨大なドラゴン。

 翼を広げるだけで、周囲の空気を支配する圧倒的な存在感。

 そして、その背に立つ一人の男。


「……やはり、ここまで来たか」


 低く、よく通る声。

 月明かりに照らされ、鎧の輪郭が浮かび上がる。


 武の四天王――ヴァルゼイン。


 俺は、思わず舌打ちした。


(最悪のタイミングだろ……)


 ヴァルゼインは、こちらを真っ直ぐ見下ろしている。

 気配遮断も、魔力遮断も――意味を成していない。


「気配や魔力を消していたようだが」


 彼は、ゆっくりと口を開いた。


「一度戦った相手を感知できないほど、俺は鈍くないぞ」


 視線が、俺を捉えて離さない。

 逃げ場はない。

 ドラゴンの黄金色の瞳が、俺を獲物として認識している。


(……チッ)


 ここで戦闘になれば、確実に時間を取られる。

 そして長引けば、魔族の増援が来る。


 それでも――引くわけにはいかない。いや、引かせてもらえるとは思えない。


 ヴァルゼインは、ドラゴンの背から軽く跳び降りた。

 着地と同時に、地面がひび割れる。


「前回は一対一だったな」


 彼は、剣を肩に担ぐ。


「だが、魔王城まで来てしまっては話が別だ。容赦はできん」


 ドラゴンが一歩前に出る。

 その動きだけで、空気が圧縮される。


「卑怯と思われるかもしれんが――」


 ヴァルゼインは、僅かに口角を上げた。


「相棒と共に、いかせてもらうぞ」


 俺は、乾いた笑いを浮かべる。


「ご安心を」


 剣を構え、軽口を叩いた。


「エルシアも、魔物と一緒だったよ」


 だが、内心は冷や汗だらけだ。


(……ドラゴン付きは聞いてねぇ)


 ヴァルゼイン単体でも厄介なのに、空と地上を同時に制圧される。

 短期決戦以外、選択肢はない。


 ドラゴンが大きく息を吸い込む。


 熱を帯びた魔力が、喉の奥で渦を巻く。


(来る……!)


 ヴァルゼインが、剣を正眼に構えた。


「さあ、勇者」


 その声には、迷いも、油断もない。


「魔王城の中庭で、決着をつけよう」


 次の瞬間――

 咆哮と共に、戦闘が始まった。



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