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勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


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36 勇者は、一息つく


 地面に腰を下ろした瞬間、足から力が抜けた。


「……はあ……」


 吐いた息は、思った以上に震えていた。


 剣を地面に突き立て、身体を支える。

 魔力は、ほとんど底をついている。


(……無茶、しすぎたな)


 不可視領域。

 覚醒後でも、消費は桁違いだった。


 集中を切らした瞬間、視界がわずかに揺れる。

 立ち上がろうとして、やめた。


 今は休むべきだ。


 魔力感知を最低限に落とし、周囲を確認する。

 敵の反応はない。

 少なくとも、追撃は来ないだろう。


「……生死不明、か」


 四天王エルシア。

 命を落としたという確信は、ない。


 最後の暴走は、あまりにも異常だった。

 勝利というより、災害が収束した、という感覚に近い。


(禁忌魔法……代償は、相当重そうだな)


 もし生きていたとしても、しばらくは戦えないはずだ。

 ――そう信じたい。


 俺は指輪に視線を落とす。

 廃都で拾った耐魔の指輪。


(これがなかったら……)


 想像するのはやめた。


 体力の消耗だけじゃない。

 精神も、確実に削られている。


(四天王でこれか……)


 影の者。

 魔王。


 まだ上がいる。

 覚醒や英雄を手に入れて余裕だと思ったが、そう甘くはなかった。


 静かに目を閉じ、深く呼吸を整えた。


(でも――逃げるつもりは、ない)


 それだけは、はっきりしていた。


 少し休めば、また歩ける。

 そう自分に言い聞かせ、隠密スキルを発動させた後、しばらくその場で動かずにいた。


 *


 魔王城。


 情報の四天王ラザルは、静かに目を閉じていた。


 彼の視界には、今もなお鮮明な映像が残っている。

 飛行型使役魔物――小型の黒い魔獣を通して見ていた、あの戦闘。


「……なるほどね」


 ぽつりと呟く。


 謎の領域型のスキル。

 おそらくは感知を狂わせ、視線を歪める未知のスキル。


(あれは、勇者スキルじゃない)


 断言できる。


 王国が管理・把握している系統とは、明らかに異なる。

 そして何より――発動の癖が“個人特化”すぎる。


「エルシアが、不利になるわけだ」


 ラザルは、指先で空をなぞった。


 そこに浮かぶのは、戦闘の再生記録。

 蛇と融合した直後から、明らかに戦い方が荒れていた。


(理性が削れていくタイプの禁忌……)


 使うべきじゃない。

 分かっていても、エルシアは踏み込んだ。


 結果。


「……負けた、か」


 正確には、生死不明。だが彼女の魔力は感じ取れないし、姿も見えない。

 死んだと決まったわけではないが、戦闘の勝敗で言えば勇者の勝ちだ。


 使役魔物の視界が途切れた瞬間、ラザルは確信した。


 あの勇者は、生き残った。

 そして、次へ進む。


「ヴァルゼインの評価は、甘かったね」


 独り言のように呟く。


 勇者スキル未使用。

 それで四天王を一人、事実上無力化。


(成長速度が、異常だ)


 情報担当として、見逃せる存在ではない。


「……影の者に知らせるべきか」


 ラザルは少し考え、首を振った。


「いや。もう、気づいているだろう」


 影は、常に見ている。

 気配が消えた瞬間から、察しているはずだ。


「次に動くのは……」


 ラザルは、薄く笑った。


「ヴァルゼインか、影の者か、それとも──魔王様か。」


 どれにせよ勇者は、もはや偶然の存在ではない。

 確実に、魔王軍の中枢を揺らす存在になりつつある。

 ラザルは目を開き、静かに告げた。


「……エルシア。君の敗北は、無駄にはしないよ」


 魔王城の奥で、魔力の流れがわずかにざわめいた。


 戦局は、次の段階へと進み始めていた。

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