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勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


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32 勇者は、四天王に苦戦する


 大地が、唸った。

 正確には、俺の足元に突き刺さった魔法が、大地を抉ったのだ。


 爆発。土煙。砕け散る岩片。

 咄嗟に避けたが、一瞬でも判断を誤れば直撃していた。


「……っ」


 俺は地面を蹴り、横へ跳ぶ。

 しかし、着地の直前――


 視界が、僅かに歪んだ。


 自分の影が、遅れて動く。

 足の感覚が、ほんの一瞬だけ重くなる。


(来た……)


 赤い魔眼。

 遠く、瓦礫の影に潜む巨大な蛇の眼が、一斉にこちらを向いている。

 魔眼は潰したと思ったが、潰れたのは一部だけ。まだ多くの魔眼は健在だ。


 見られている。

 それだけで、体が鈍る感覚。


 スキルや指輪によって耐性はある。

 だが、完全ではない。


「はあっ!」


 俺は剣を振るい、迫る蛇の胴を弾く。

 だが次の瞬間、蛇の体が不自然に“増えた”。


 幻覚。

 あるいは、視覚干渉。


 どれが本体か、即座に判別できない。


 ――その隙を、逃さない声。


「《圧縮魔弾・三重詠唱》」


 冷静で、感情のない声。

 上空から、三発の魔弾が同時に落ちてくる。


 俺は歯を食いしばり、地面を転がるように回避する。

 爆風が背中を掠め、皮膚が焼ける感覚。


(まずいな……)


 完全に、分断されている。


 前には蛇。

 後ろと上空からは、エルシアの魔法。


 距離を詰めようとすれば蛇が邪魔をし、

 蛇を無視すれば、魔法で撃ち抜かれる。


「……っ、厄介だ」


 思わず、呟く。


 その声を聞いてか、遠くでエルシアが小さく笑った。


「でしょ?正面から来るなら、ちゃんと止めるって言ったじゃない」


 彼女は、余裕を崩していない。

 魔力の流れも安定している。


(削られてるのは、俺の方か)


 魔眼による干渉。

 幻覚。

 行動遅延。


 一つ一つは致命的じゃない。

 だが、重なれば確実に体力と集中力を奪ってくる。


 ――その時。


 頭の奥で、別の感覚が浮かび上がった。


 覚醒。

 英雄。


 それを得た時、確かに感じた“違和感”。


(そうだ……)


 取得可能なスキルが、増えていた。


 だが、どれも異常なほどスキルポイントを要求する。

 強力すぎるがゆえに、後回しにしていた。


(全部は取れない。だから、保留してた……)


 だが。

 今の状況で、勝ち筋を描くなら。


(これしか、ない)


 俺、蛇の攻撃を剣で弾きながら、意識を集中させる。


 脳裏に浮かぶ、ひとつの選択肢。


 ――不可視領域(アンシーン・ドメイン)


 一定範囲内の認識を歪める。

 感知系が正常に機能しなくなる。

 魔力消費は、極大。


(短期決戦になるな……)


 だが、迷いはなかった。


【《不可視領域》を取得しました】


 次の瞬間。


 世界が、微かに“ずれた”。


 色が変わったわけでも、音が消えたわけでもない。

 ただ、すべての情報が――信用できなくなる。


 蛇の魔眼が、一斉に瞬いた。

 それまで正確に俺を捉えていた視線が、揺らぐ。


 右。

 左。

 後方。


 複数の位置に、同時に“いる”。


「……?」


 エルシアが、眉をひそめた。


「索敵が……?」


 再構築。

 だが、結果が定まらない。


 次の瞬間には、別の位置を“正解”として示す。


「……何よ、これ。毎秒感知の結果が変わってる...」


 蛇が動く。

 だが、その動きが、明らかに遅い。

 千の眼が、一斉に情報を送り、処理しきれずに混乱している。


(効いてる)


 俺は、音を殺して距離を詰める。


 気配遮断。

 歩幅を抑え、呼吸を整える。

 蛇の死角を、正確に通る。


 ――気づかれない。


「……っ!?」


 エルシアが、異変に気づいた時には遅かった。


 視界の端。

 魔力反応が、突然“近い”。


「いつの間に――」


 言葉の途中。

 俺の剣が、蛇の鱗を深く斬り裂いた。


 悲鳴。

 巨体がのたうつ。


「……なるほど」


 エルシアは、初めて真剣な表情を浮かべる。


「認識阻害系……?知らないわね、そんなスキル」


(当然だ)


 俺だって、つい最近取得可能になったスキル。おそらく、一般に知られているスキルではないだろう、


 使ってわかったが、不可視領域は強力だが、その実対策は簡単だ。


 【範囲から出ればいい】、それだけだ。


 だが、初見でそれを理解できる者は少ない。


 ましてや、戦闘中なら尚更。


(優勢だ)


 だが同時に、俺は理解していた。


 魔力の消費が、異常だ。

 長くは保たない。


(ここからだ……)


 蛇とエルシア。

 四天王との戦いは、ようやく本当の意味で始まったばかりだった。


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