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勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


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28 勇者は、廃街に着く

 

 魔族領を進むにつれ、風景は明らかに変わっていった。

 木々はまばらになり、道は整備されていない。踏み固められた痕跡はあるが、人の往来というより、魔物が徘徊した跡のように見える。


 そして――街が現れた。


「……ここが、街……だった場所か」


 石造りの建物が並んでいる。並んでいる、はずだった。

 屋根は崩れ、壁は焼け焦げ、扉は壊されている。人の気配はない。音もしない。風が吹くたび、どこかで軋む音だけが響いた。


 魔力感知を広げる。


(……反応、ほとんどなし)


 魔物の反応も、魔族の反応もない。

 だが、それが逆に不気味だった。ここまで大きな街が、完全に空になっている。


(逃げたのか……それとも)


 考えたくない結論を、無意識に避けながら歩く。


 武器屋らしき建物。

 棚は空。壁に剣を掛けていたであろう金具だけが残っている。


 道具屋らしき店。

 薬瓶の破片だけが床に散らばり、中身はすべて持ち去られていた。


「……徹底的だな」


 略奪か、避難か。

 どちらにしても、この街に“使える物資”はほとんど残っていない。


 そんな中で、ふと目に留まった建物があった。


「……冒険者ギルド、か?」


 看板は割れているが、文字だけは読めた。

 街の規模を考えれば、冒険者ギルドがあっても不思議ではない。


 中に入る。


 受付カウンターは倒れ、掲示板は剥がれ落ちている。

 床には干からびた血痕が残っていた。


(……ここで、何かあったのは確かだな)


 慎重に奥へ進む。


 そのとき――


(……?)


 魔力感知に、かすかな反応が引っかかった。


 弱い。

 魔族どころか、魔物ですらない。

 だが、確かに“何か”がある。


「……魔道具、か?」


 反応の元は、受付裏の棚だった。

 崩れた木箱の中に、指輪が一つ、転がっている。


 拾い上げる。


 地味な銀色。装飾は少ない。だが、はっきりと魔力が込められている。


(鑑定)


【耐魔の指輪

 魔力干渉耐性・中

 精神干渉耐性・小】


「……なるほど」


 派手さはないが、実用性は高い。

 しかも、ここが魔族領だと考えれば――


(これ、かなり重要な装備だったんじゃないか?)


 指輪をしまい、周囲を見渡す。

 すると、カウンターの奥、床に落ちていた一冊の帳面が目に入った。


「……日記?」


 表紙は汚れているが、文字は読める。


 中を開く。


 そこには、震えるような筆跡で書かれた文章が残っていた。


『影が出た。魔物とは違う。倒しても血が出ず、煙のように消える』


『夜が深くなるほど、影は強くなる。灯りを消した瞬間、背後から……』


『自分の影から、出てきた。これは攻撃じゃない。干渉だ』


 ページをめくるたび、状況が悪化していくのが分かる。


『光があれば近づきにくそうにしている。だが、完全には防げない』

『魔力を使った者から、先に狙われる。魔法使いや身体強化を使ったものが真っ先に狙われた。』

『指輪がなければ、もっと早く……』


 そこで文章は途切れていた。


 俺は静かに日記を閉じた。


「……影の者、か」


 以前倒した、影のような魔物。

 血も残さず、煙のように消えた存在。


(通常でも厄介だが……闇が深くなると、さらに強くなる)


 しかも、自分の影から現れる“干渉”。


(物理攻撃だけじゃない。精神、魔力、存在そのものへの干渉……)


 視線を指輪に落とす。


(この指輪があるから日記の人は生き延びれたのか...)


 逆に言えば。


(これがなかったら、この情報も得られなかったかもしれない。)


 日記の人は、指輪を置いてどこに行ってしまったのか。それはわからない。


 街を見回す。

 物資はない。

 人もいない。

 だが、ここには確かに“戦いの痕跡”が残っている。


「……影の者」


 そして、その背後にいる存在。


(監視してる可能性は、高いな)


 俺はそっと街を後にした。


 耐魔の指輪と、日記。

 それは小さな収穫だったが――


(影の者と戦うなら、光と魔力管理が鍵になる)


 確かな手がかりでもあった。

 そして何より。


(……こんな装備があって、それでも滅びた街、か)


 魔王城へ向かう道は、まだ遠い。

 だが、進まなければならない理由は、確実に増えていた。

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