表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚されたけど、勇者の結末はロクでもないのが相場なので疑ってかかってます~やだこの勇者全然言うことを聞いてくれない~  作者: ターシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/41

25 勇者は、都合よく覚醒する

 魔族領の奥へと足を進めながら、俺は何度目か分からないため息をついた。


 ヴァルゼイン――四天王の一角。

 武を司ると言っていたが、あれは本当だった。


 実際に刃を交えた感触が、まだ身体に残っている。


 剣を振るえば防がれ、魔力を流せば真正面から叩き潰される。

 魔力干渉も確かに効いた。最初の一瞬、ヴァルゼインの動きが僅かに乱れたのは間違いない。


 だが――。


(邪魔されるなら、力で押し切る、か……)


 魔力の流れを妨害されても関係ないほどの出力。

 速さも、重さも、威力も、すべてを底上げしてくる力技。


 少しでも判断が遅れていれば、あの拳を真正面から受けていたかもしれない。

 土砂を操り、石礫を叩きつけても、正面から穴を開け、拳で砕かれた光景が脳裏に焼き付いている。


 結果だけを見れば引き分け。

 だが、感触としては――ぎりぎり、だ。


(あれで互角……なら)


 影の者。

 四天王最強と称される存在。


 ヴァルゼインですら、実戦では敵わないと断言する相手。

 魔王はそのさらに上にいる。


 このままでは、届かない。


 剣を握る手に、自然と力が入った。

 魔族に、魔王に勝つためには...


 ――勇者用スキル。


 一瞬、その文字が頭をよぎる。

 王国が把握している、いかにも「切り札」らしい能力。


 取れば、きっと楽になる。

 正面から叩き潰せる力も得られるかもしれない。


 だが。


(……ダメだ)


 首を横に振る。


 勇者は王国の切り札であり、同時に管理対象だ。

 どんなスキルを持ち、どんな戦い方をするのか。

 それを完全に把握された状態で、魔王討伐後に「自由」があるとは思えない。


 便利な道具は、使い終わったらどうなる?

 壊れる前に、回収される。


(手の内を全部見せたら、逃げ場がなくなる)


 だからこそ、避ける。

 勇者専用と名の付くものは、これまで一つも取っていない。


 そんなことを考えているうちに、前方から魔物の気配を感じ取った。


 数は多い。目が赤く使役魔物だ。しかし統率は薄い。

 おそらく最初と同じく「侵入者を襲え」程度しか命令されていないものだ。


 足取りを変え、剣を抜く。

 以前なら数を見ただけで慎重になっていた相手だが、今は違う。


 身体が、勝手に動く。


 踏み込み、斬り、避け、流す。

 一匹ずつ確実に仕留めていく。


(……慣れたものだな)


 自分でそう思った。

 判断が、反射に近い。


 以前なら「どう動くか」を考えてから剣を振っていた。

 今は、振った後で「こうだったな」と認識する感覚に近い。

 確かに成長はしている。魔物や、並の魔族には勝てる。

 だが四天王や魔王相手には、足りない。


 最後の一体を斬り伏せた瞬間。


 視界の端に、見慣れたウィンドウが開いた。


【レベルが50になりました】


 一瞬、足を止める。


(……もう50か)


 実感は薄い。

 だが、確かに積み上げてきた感覚はある。


 いつもならこの表記で終わりだが、今回はそれに次いで今まで見たことのない表示が浮かぶ。


【特殊条件クリア】


「...ん?」


 思わず動きを止めてステータスを凝視する。

 そして、続けて表示された文字列に、俺は思わず息を呑んだ。


【レベルが50に到達】

【勇者専用スキルを取得していない】

【単独で使役魔物を100体撃破】

【単独で魔族を3体撃破】


 条件を、一つずつ目で追う。


(……ああ、なるほど)


 無意識にやってきたことが、全部ここに並んでいた。


【以上を達成したため、スキル『覚醒』『英雄』を取得しました】


 スキル説明が表示される。


【覚醒】

潜在能力を解放し、基礎能力が上昇する。


【英雄】

単独戦闘時、全能力が上昇する。


 思わず、苦笑した。


(都合が良すぎるだろ……)


 『勇者』スキルは仲間を強化し、仲間がいるほどに強くなるスキルだ。

 この『英雄』スキルはその逆。


 勇者の力を持ちながらその力を取得しない、縛りプレイのような戦い。

 それを続けたご褒美みたいじゃないか。


 だが。


(……ありがたい)


 正直な感想だ。


 試しに、魔力を流す。

 地面へ、剣へ、自分の身体へ。


 ――違う。


 はっきりと分かる。

 魔力の通りが、深い。


 剣を軽く振っただけで、空気が震えた。


(これなら……)


 ヴァルゼインと互角だった理由が、少しだけ理解できた。本来なら、苦戦はしつつも勝てる相手だったのだろう。

 そして同時に、足りなかったものも理解できた。


 影の者。

 魔王。


 まだ、遠いとは思う。


 だが――。


 剣を鞘に納め、前を向く。


(ようやく、スタートラインに立った感じだな)


 逃げるために力を求めてきた。

 生き残るために、選び続けてきた。


 なら次は。


 勝つために、考える。


 そう決めて、俺は再び魔族領の奥へと歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ