手作りケーキじゃなきゃイヤ!
※ 2025/12/18 一部修正済み
☆ ☆ ☆ ☆
クリスマスイブの1週間前、突然、ひとり息子のシュートがいった。
「パパ、ボクも手づくりのケーキがたべたい!」
「手作り? そんなこといってもパパはケーキなんて作れないぞ。クリスマスはコンビニのケーキでいいって、シュートいったよな?」
「いったけど気が変わった!」
「なんで?」
「だってほいくえんで、リサちゃんも、きなちゃんも、クリスマスケーキはママがつくってくれるって!だから、ボクも手づくりケーキがいい!」
「ええ、もうコンビニで予約しちゃったよ~!」
「ヤダ、ヤダ~!ボク、手づくりケーキがいい!」
「シュート、コンビニのケーキ大好きっていったろう?」
「すきでもイヤなの、クリスマスケーキは手づくりがいいの!」
シュートはぷぅっとかわいい頬をふくらませる。
「わがままいうんじゃない、シュートも来年は小学生だ、我慢しなさい!」
「ヤダヤダ、パパのバカ!ボク手づくりがいい、わあああん!」
シュートは手足をバタつかせて泣きだした。だがよく見ると涙はでていない。
──ちっ、シュートのウソ泣きがはじまったよ。
こいつは駄々をこねるとすぐにウソ泣きする。まったく誰に似たんだか。
こうなると息子はテコでも引かない。
まったく、弱ったな。
☆ ☆
息子のシュートの名前だが、サッカーを連想させるが関係ない。
本名は未来秀人。
名付けたのは俺の父さん。
『未来は秀でた人間に育って欲しい!』と語呂合わせみたいな名前だ。
まあ俺もけっこう気にいってる。
そう、シュートのママ。俺の奥さん。
ママは4年前に病気で遠いお空に旅立ってしまった。
シュートはまだ2才だったのでママの顔を覚えていない。
赤ちゃんのシュートを幸せそうに抱きしめているママ。
シュートはアルバムで笑っているママしか知らないんだな。




