74話 三人で……
「おまたせしました、直人さん♪」
「ごめんね、まったかな?」
いつもの駅前のハンバーガーチェーン店でのんびりしていると、鈴と小柳先輩が、ほぼ同時に姿を見せた。
二人は恋のライバルなのだけど……
そんなことは感じさせないくらい、仲が良さそうだ。
こうして並んでいるところを見ると、姉妹みたいだな。
……小柳先輩が妹に見えてしまうのは、絶対に本人に言えないが。
「じゃあ、行きましょうか」
「おー!」
今日は、三人でデート。
二人と向き合うとか、そういう小難しいことは置いておいて……
色々な偶然が重なり、無事、出会うことができたことを記念して、という感じだ。
色々と泥沼にハマっているような気がするのだけど……
もう、どうしようもないと諦めることにした。
「今日は、二人のオススメの場所に連れて行ってくれるんだよな?」
「はい。楽しみにしててくださいね」
「きっと、結城君も気にいると思うんだ」
……心配だな。
鈴のことだから、ラブホテルをチョイスしかねない。
さすがに、小柳先輩が止めてくれると思うが……
「大人っぽいところを見せるためですよ」
とか言われたら、ノリノリでOKしてしまいそうで怖い。
――――――――――
「到着です!」
「ここは……漫画喫茶?」
恐る恐るやってきた場所は、歩いて数分のところにある漫画喫茶だった。
「すみません、予約してた者ですけど」
「……はい、三名様ですね? あちらの4番をどうぞ」
「ありがとうございます」
店員から鍵を受け取る鈴。
「予約なんてしていたのか?」
「はい。三人で利用できるっていう、ちょっと画期的なところですよ」
それは助かるのだけど……
俺、鈴、小柳先輩……この三人だと、変な風に見られたかもしれない。
事実、店員はちょっと態度がおかしかった。
……気にしないようにしよう。
「へぇ、けっこう綺麗だな」
個室に移動すると、しっかり掃除がされていた。
仕切りもしっかりと作られていて、のんびりくつろぐことができそうだ。
「ところで、漫画喫茶でなにをするんだ?」
「ふっふっふ、それはもちろん……」
――――――――――
「やばいですやばいですやばいです、ヒールが間に合いません!?」
「すみません、死んじゃいました、師匠……」
「待ってくれ!? アタッカーのコヤナギが死んだら、時間切れに……」
三人で漫画喫茶に集まり、やることはゲーム。
ファンネクを漫画喫茶で、互いの顔が見える距離で遊ぶ。
今までは相手の顔なんて見えなかったから、とても新鮮なことで……
ちょっとしたイベント一つで、大騒ぎしてしまいそうなくらい楽しい。
まあ、漫画喫茶なので、本当に大騒ぎしたら叱られてしまうので、そこは我慢したが。
「ふぅ……なんとか倒せたな」
「ギリギリでした……」
「さすが、結城君と師匠です!」
「あなたが一番、役に立っていないんですけど」
「あぅ、すみません……」
「でも、まあ……」
鈴は、ちょっと頬を染めつつ、照れた様子で言う。
「これ……思っていた以上に、楽しいですね」
「師匠!」
「か、勘違いしないでくださいね! あくまでも、私が正室。あなたは妾ですよ!」
「はい、それで問題ありません!」
法律の方に問題がある。
思い切りある。
ただ、まあ……
「これからも、がんばって師匠についていきますね!」
「ま、まあ……仕方ないですね! ちょっとは面倒を見てあげましょう!」
この二人、意外と気が合うようで……
今は、もうしばらく、この歪な関係を続けてもいいと思った。
歪かもしれない。
倫理に反しているのかもしれない。
でも……
俺達は、それを受け入れている。
問題ないと捉えている。
もちろん、このままずっと、というわけにはいかないけど……
それでも今だけは。
「楽しい夢を見るくらい、いいよな」
「なんですか、直人さん?」
「いや、なんでもないよ」
俺と、小学生と、小学生のように見える先輩と。
この三人の関係が、どこまで続いていくのか。
どんな発展を遂げて、どんな終わりを迎えるのか。
それは今、まだ、なにもわからない。
ただ……
それはそれ。
これはこれ。
今は先のことなんて気にしないで、この時間を楽しもうと思う。
それくらいは許されるだろう。
「さあ、次の冒険に行きますよ、直人さん!」
鈴は、張り切った様子で言う。
その調子で、いつものように、俺に対してアプローチを続けるのだろう。
そんな俺は……
「事案になりますか?」
久しぶりに書いた現代恋愛もの、どうだったでしょうか?
楽しんでいただけたら嬉しいです。
次は直球のものとか書いてみたいですね!




