5話 運命と必然
「すごいと思いません?」
翌日も宮ノ下と一緒に登校していた。
今朝はチャイムを鳴らして、「さあ早く行きましょう」と催促してきた。
もう諦めた。
「なにが?」
「全世界で3000万人がプレイしているネットゲームで、私達が出会い、そしてリアルでも出会う。すごいと思いませんか?」
「言われてみると」
日本のプレイヤーは150万人くらい。
それでもサーバーが複数に分かれていて、その150万人が同じ場所にいることはほとんどない。
人によっては海外サーバーで遊んでいる人もいる。
そんな中で俺と宮ノ下は出会った。
同じサーバーで遊んでいて。
同じクランに所属して。
その上、リアルでは家が近い。
どれだけの偶然が重なればこんなことになるんだろう?
「偶然じゃないですよ、運命です」
「そんな大げさな」
「私は信じていますよ。あるいは、必然といってもいいですね」
「それなら、まあ」
納得はしてしまう。
そうでもないと、偶然で片付けてしまうのはあまりにも確率がすごい。
「それにしても、宮ノ下は難しい言葉を知っているんだな」
「むー……私のこと、子供扱いしていませんか?」
「ごめん」
実際、小学生ではあるのだけど……
年頃の女の子は子ども扱いされることを嫌う。
俺だって嫌だ。
なので、素直に頭を下げた。
「運命とか必然とか、突き詰めていくとわからないけどさ。でも、縁はあったんだな、って思うよ」
「ならなら、もっと深い縁を結びませんか? 具体的に言うと、結婚♪」
「縁が深すぎる……というか、さすがにできないから」
俺は17歳で、宮ノ下は10歳だ。
倫理観だけじゃなくて法律も許してくれない。
「私、こう見えて尽くすタイプですよ?」
「いじるタイプじゃなくて?」
「なんでもしてあげますよ。えっちなことも、もちろんアリですよ♪」
「ごほっ!?」
最近の子供は早熟と聞いたことがあるけど……
宮ノ下はその典型的な見本かもしれない。
「やめて、本当に事案になるから」
「むー、納得いかないです。どうして大人の歳の差恋愛は許されるのに、私達、子供はダメなんですか? 結城さんにあーんなことやこーんなことをしてあげたいのに。べったべたのどっろどろに甘やかしてあげますよ? えへへ♪」
「お断りします」
「えー」
「まあ……子供は保護するべき対象だからだろ?」
「それって、子供のことを侮っていますよね? お前達は保護されないとまっすぐ歩くことができないんだぞ、って」
「そこに怒る気持ちはわからなくはないけど、実際、そうだからなあ……」
失敗なんて毎日のようにして。
たまに大きな失敗もしてしまう。
そして、その自覚を持つことも難しい。
大人に保護してもらい、導いてもらわないと簡単に道を踏み外してしまうだろう。
それ以前の話、金銭的な問題で一人で生きていくことができない。
大人に養ってもらっているからこそ、なのだ。
俺はバイトはしているものの、それだけで生活費や学費は賄えない。
仕送りなどがないと干からびてしまう。
「でも、結城さんは私と一緒なら喜んで道を踏み外してくれますよね♪ 愛の逃避行とか、それ以前に、愛の合体とか」
「合体いうな。それと、やめろ。俺を巻き込もうとするな」
「ぶーぶー、愛する人と一緒ならなにも怖くないじゃないですか」
「愛してはいないんだけど……」
「ひどい! 一緒に熱い夜を過ごした仲なのに」
「ゲームをしていただけ」
「結婚したじゃないですか」
「それもゲーム」
「私のパンツを見ましたよね?」
「それもゲーム……いや、ゲームでもアウトか」
「なら、責任をとってください♪」
「ごめんなさい」
でも、まあ。
「友達としては大事だよ、宮ノ下のことは」
「……結城さん……」
「その……宮ノ下の善意に付け込んでいるみたいで申しわけないんだけど、でも、これからも仲良くしてくれると嬉しい」
「はい、もちろんです! まずは友達から、というやつですね? 半年後くらいに恋人になって、そして来年に結婚ですね♪」
「だから、できないから」
こういうポジティブなところは見習わないとな。
「ふふふ、絶対に私を好きになってもらいますからね?」
……ポジティブというか執念?
「ところで、今日の放課後、結城さんは時間ありますか? よかったら、一緒に遊びに行きませんか? もちろんリアルで」
「あー……ごめん。今日はバイトがあるんだ」
「そういえば、アルバイトをしているんでしたっけ。どこですか?」
「秘密だ」
「えー」
「だって、話したら来るだろう?」
「それはもちろん!」
「だからダメ」
「えー」
宮ノ下が頬を膨らませて抗議する。
そしてジト目に。
「泣きますよ? 教えてくれないと、結城さんにえっちなことをされた、ってここで泣きますよ?」
「ちょっ……そ、それは反則だろう?」
「それくらい本気ということです」
「……わかったよ」
負けた。
小学生に限らず、女の子は色々な意味で強い。
男が真の意味で敵う日はやってこないのだろう、たぶん。
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