表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/74

47話 相談は大人の先輩にお任せあれ

 学食で昼を食べて、それから中庭へ。


「あ、結城君。こっちだよー!」

「すみません、おまたせして」

「ううん。私も今、ごはんを食べ終わったところだから」


 どうやら小柳先輩は弁当らしい。

 ベンチの隣に小さな弁当箱が置かれていた。


「それで……大人な先輩に相談したいこと、っていうのは!?」


 小柳先輩はどこかの誰かのように目をキラキラと輝かせつつ、そう意気込んで尋ねてきた。

 よほど相談を受けるのが嬉しいらしい。


 おせっかいなのか。

 それとも、大人らしくあることが嬉しいのか。


 ……両方かな?


「えっとですね……女の子の友達についてなんですけど」


 友達の話なんだけど……という逃げは止めておいた。

 先輩なら簡単にごまかせるような気がしたけど、とても誠実に向き合ってくれそうで……

 なら、俺もまっすぐ向き合わないといけないと思う。


「この前、ちょっとしたことで怒らせてしまって」

「ダメだよ、ケンカは」

「あ、いえ。一応、仲直りはしたんです。ただ、お詫びになんでもする、ってことになって……いったいどんなことになるんだろう、とちょっと怯えていまして」

「なるほどなるほど。それは難しい問題だね。ちなみに、その友達は無茶なことを言うような性格をしているの?」

「うーん……基本、常識人ですよ。礼儀正しく真面目で、まあ、ちょっと小悪魔っぽいところはありますけど、あまり無茶は言いません」


 ただ……

 俺のことになると無茶を言いそうで怖いんだよな。


 鈴は賢い子で、大人びている。

 ただ、なんだかんだ子供なのだ。

 好きなものに目をキラキラと輝かせて、拗ねて、時にわがままを言う。


 だから、今回の件、子供らしく無茶を言うような気もして……

 ダメだ。

 まったく先の展開が読めない。


「その子は大事な友達?」

「はい」

「そっか。なら大丈夫。心配する必要はないよ」


 小柳先輩は即答した。


 すごく自信がある様子で……

 それだけじゃなくて、俺を安心させてくれる優しさ、柔らかい雰囲気も兼ね備えていた。


「どうして……そう言い切れるんですか?」

「だって、結城君の大事な友達だもん」

「え」

「私はその友達は知らないけど、でも、結城君のことなら知っているよ。すごく優しくて、友達想いの良い子。そんな結城君の友達なら、絶対に良い子。多少、困らされちゃうかもしれないけど、本当に困るような無茶は言ってこないよ。絶対に……ね♪」

「……」


 小柳先輩って、年上だけど小さくて可愛くて……

 でも、それだけじゃなかった。

 とても優しくて、包容力のある人だ。


 小学生みたいだけど、それは見た目だけ。

 心は立派な大人だ。


「どうしても不安なら、先輩がおまじないをかけてあげる」

「おまじない、ですか?」

「ここ」


 小柳先輩は、自分が座るベンチの隣をぽんぽんと叩いた。

 隣に座れ、ということだろうか?


 不思議に思いつつも、その通りにベンチに座る。


「良い子、良い子」

「ちょ……!?」


 ふわりと香り甘い匂い。

 優しく、柔らかい感触。


 小柳先輩に抱きしめられている……!?


「えっ、いや、あの……」

「大丈夫、大丈夫。きっとうまくいくよ、大丈夫だから……ね?」

「……」


 なんだろう。

 よくわからないけど落ち着くな。


 小柳先輩は子供みたいだけど、でも、今は俺が子供のような気持ちになっていて……

 癒やされる。


「……って、まずいから!?」

「ひゃっ」


 色々とまずい状況ということを思い出して、慌てて小柳先輩から離れた。


「どうしたの? もっと甘えてもいいんだよ?」

「いえ、それは、まあ……十分なので」

「そう? 残念……」


 なんで小柳先輩が残念がるんですか?


「とりあえず、落ち着くことができました。ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしましてー」

「先輩には助けられてばかりですね。なんか、お礼をしたいんですけど……」

「そんなことないよー。私も、結城君に何度も助けられているからね。そのお返しと思ってくれていいよ」

「えっと……なら、そういうことで」


 小柳先輩のことだから、しつこく食い下がっても迷惑をかけるだけだろう。

 ここは素直に好意に甘えておくことにしよう。


(……それにしても)


 小柳先輩って、本当に良い人だな。


 見た目は小学生で。

 お姉さんぶることが多くて。


 でも、とても優しい。

 心が清らかで澄んでいて、一切の濁りがない。

 こんな人、なかなかいない。


 まるで鈴みたいだ。


(って……なんで、そこで鈴が出てくるんだ?)


 確かに、あいつも綺麗な心の持ち主だ。

 やや小悪魔的ではあるものの、それも子供特有のものと思えば可愛いくらい。

 優しくて温かい笑顔を持っている。


(いや、待て。鈴にしろ小柳先輩にしろ、見た目が幼い相手にこんな評価をするなんて、俺は、偏っていないか? 自覚していないだけで、本当は、とても偏った性癖の持ち主なのか……?)


 ……上昇した気分が再び下降した。


「どうかしたの?」

「……いえ、なんでもありません」


 うん。

 深く考えないようにしよう。


 困った時は現実逃避が一番だ。


「それじゃあ……小柳先輩、ありがとうございました。この恩は、いつか必ず」

「だから気にしなくていいのに。でも、せっかくだから期待しようかな♪」

「そうですね……そうだ。今度、俺のバイト先に来てください。コーヒーがとても美味しいところなので、ごちそうしますよ」

「……コーヒー……」

「パンケーキとかもありますよ」

「パンケーキ!」


 とてもわかりやすい反応だ。


「楽しみにしているね」

「はい。じゃあ、また今度」

「うん、ばいばい」


 互いに手を振り、その場を後にした。


 ……うん?

 俺、もしかしなくても、デートの約束をしたのだろうか?

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


「面白そう」「続きが気になる」と感じていただけたのなら、

『ブックマーク』や『☆評価』などをして、応援をしていただけますと嬉しいです!

(『☆評価』は好きな数値で問題ありません!)


皆様の応援がとても大きなモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 結城君、認めると楽になりますよ…(ロリコン沼からの囁き
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ