35話 16歳
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休日。
俺は、駅前のハンバーガーチェーン店にいた。
注文したコーヒーを飲みつつ、スマホを操作する。
メッセージアプリを起動。
『到着。入って左の角の席』
『了解です! ちょっと遅れているので、あと3時間ほど待ってもらえますか?』
『さようなら』
『嘘ですごめんなさい! 彼氏の気を引きたい一心でおちゃめしちゃいました!』
『遅れるなら遅れるでいいけど、どれくらい?』
「実は、もう到着しました」
不意に、背後から声がした。
振り返ると……
「こんにちは、結城さん」
テレビに出演するアイドルのような……
いや。
それ以上に、綺麗で可憐な美少女がいた。
夜空のような黒髪は腰まで伸びていて、枝毛一つない。
スラリと伸びた手足はモデルのよう。
体の凹凸は若干寂しいものの、引き締まっている、と表現すればよし。
背はわりと高い方だろう。
俺よりは下だけど、もう顔ひとつ分くらいしか違わない。
顔のパーツは、一つ一つが芸術品のよう。
街を歩けばすぐにナンパをされるだろう。
あるいは、誇張抜きで芸能界にスカウトされるかもしれない。
そんな美少女……宮ノ下鈴がいた。
「おまたせしました」
「すぐ到着するなら、アプリでやりとりする必要なかったんじゃないか?」
「ちょっとしたいたずらです、てへ♪」
「まったく……高校生になったっていうのに、心は小学生のままだな」
宮ノ下は、俺の母校の制服を着ていた。
よく似合っていると思う。
「って、なんで制服?」
「ちょっと部活関係で学校に用がありまして。その後に、ここへ」
「そっか。部活、がんばっているよな」
「はい! 泳ぐのって、けっこう楽しいですよ」
宮ノ下は水泳部に所属していた。
1年ながらレギュラーの座を勝ち取り、期待のエースとして注目されているらしい。
「私の体って、水泳に向いているのかもしれませんね。手足は長いですし」
「そうかもな」
「あと、胸もないので水の抵抗力を受けませんよ!」
「……」
「なにかツッコミ入れてくださいよー!? 私、自爆じゃないですか」
「ツッコミを入れづらい話題はやめてくれ」
女子高生にそんなことを言ったら、セクハラだ。
というか、これはこれで事案かもしれない。
宮ノ下は成長したものの……
もちろん俺も成長して、今や社会人。
なにかあれば簡単に仕事を失う。
「結城さん、仕事はどうですか?」
「まあまあ、ってところかな。まだ新人だけど、ようやく仕事に慣れてきたよ」
「そっか、よかったです。一時期、結城さんは酷く疲れた様子だったんで、心配で……でも、大丈夫になったのなら安心です」
「宮ノ下のおかげだよ、ありがとう」
「えっと……私、なにかしましたっけ?」
「いつも明るく話をしてくれて、それに、弁当も作ってもらっているし……本当、色々と助けられているよ」
「ふふ。好きな人の力になれるのなら、なんでもしますよ」
「ほんと、俺にはもったいないくらいの恋人だよ」
そう。
俺と宮ノ下は正式に交際を始めた。
少し迷ったのだけど……
宮ノ下が高校生になり、もういいだろう、と彼女の告白を受け入れることにしたのだ。
「恋人として、色々とがんばりますよ」
「ありがとう」
「……夜もがんばりますよ?」
「照れるなら、言わないでくれ」
「えへへ、ごめんなさい」
なんて言いつつも、宮ノ下は嬉しそうだ。
ようやく付き合うことができて、幸せなのだろう。
もちろん、俺も幸せだ。
「でも……うーん」
「どうしたんだ?」
「やっぱり、もう少し欲しいなあ、って」
悩み顔を見せる宮ノ下は、自分の胸元に手を伸ばしていた。
なにを考えているか一発でわかるのだけど、コメントに困る。
「結城さんは、どっちの方がいいですか?」
「いや……なにが?」
「胸の大きさですよ。ほら。やっぱり、男の人は大きい方が好き、って言うじゃないですか?」
「まあ……否定はしない」
「なら私も、って思いまして。どうですかね?」
「……否定はしないけど、でも、今の宮ノ下がダメっていうわけじゃないから。俺は気にしないよ」
「そうですか、やっぱり大きい方が……なら、大きくしますね」
「え?」
「大きくなーれ、大きくなーれ、はんにゃら~」
気の抜けるような、妙な呪文。
すると、宮ノ下の胸が急に膨らみ始めて……
「ほら、大きくなりました」
「お、おい!? なんだそれ、風船でも仕込んで……」
「あ、まずいです。止まらないです、これ。失敗ですね」
「なんでそんな気楽に……うあ、うわあああああっ!?」
――――――――――
「……結城さん、結城さん」
「はっ!?」
ガタッと椅子を鳴らしつつ、目が覚めた。
「ここは……」
いつも待ち合わせに使うハンバーガーチェーン店だ。
そして、テーブルの対面に宮ノ下。
ちんまりと。
すとーんと。
小学生の宮ノ下がいた。
「……よかった、小さいままだ」
「えぇ!? なんですか、それ!?」
「頼むから、宮ノ下は小さいままでいてくれよ?」
「嫌ですよ!? 大きくなりたいですよ!? いきなりなんなんですか、もーっ!!!」
その日……
小学生の小さい宮ノ下を見て、俺は、ほっこりと癒やされるのだった。
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