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29話 二人の時間

 一度、俺は自分の家に帰った。

 制服に着替えて、鞄を背負う。


 それから再び宮ノ下の家に。


「それじゃあ、行こうか」

「はい!」


 ランドセル姿の宮ノ下と一緒に道を歩いていく。


 いつもの時間と比べると、30分くらい早い。

 そのせいか、周囲に小学生や高校生は少ない。


 ただ、サラリーマンなどはたくさんいるわけで……

 これだけの人がいれば、つけられることはあっても、直接的な害意を及ぼしてくることはないだろう。


 ……油断はできないけどな。


「あっ!」


 ふと、宮ノ下が驚きの声をあげた。

 まさか、本当にストーカーが……!?


「わぁ、鈴ちゃんだ。おはよー」

「おはよう、凛ちゃん!」


 宮ノ下は応援を呼んだ。

 新しい女子小学生が現れた!


 って……どういうことだ?


「鈴ちゃん、今日は早いんだね」

「ちょっとあってね。そういう凛ちゃんも」

「私は、お花畑のお世話をしないといけないからー」

「あ、そっか。凛ちゃん、栽培委員会に入っていたもんね。今日が当番なんだ」

「えへへー。もう少しでお花が咲きそうなんだ。だから、がんばる!」

「うん、がんばれー!」

「がんばるよー、たくさん咲かせるよー」

「学校をお花でいっぱいにしたら、先生、驚くかな? 褒めてくれるかな?」

「んー……怒られそう?」

「だよね、あはは」

「でも、やっちゃう!」

「その意気だー!」


 なんだ、この微笑ましい会話は?

 普段の宮ノ下からは、絶対に想像できない言動なのだけど……


 うーん。

 どちらが本当の宮ノ下の姿なのだろうか?


「ところで……」


 女子小学生の目がこちらに向いた。


「あ、えっと。俺は……」

「この人は、直人さん。私のダーリン♪」

「ちょっ……!?」


 宮ノ下は爆弾発言をかましつつ、さらに、俺の腕に抱きついてきた。


 友達になんていうことを!?

 これじゃあ、俺はロリコン確定。

 そして事案、逮捕に……


「あぁ! この人が鈴ちゃんが話していた彼氏なんだ!」

「……あれ?」


 「このロリコン!」とか。

 「キモい!」とか。

 そういう罵声を覚悟していたのだけど、そんなことはなくて、宮ノ下の友達は目をキラキラと輝かせていた。


「大人、っていう感じでかっこいいねー」

「そうでしょう、そうでしょう」

「クラスの男子とは大違いかな? 背も高くて、うーん……いいなぁ」

「むっ。結城さんは、私のものですからね!」

「うんうん、わかっているよぉ。ちょっと残念だけど、手を出したりはしないよ」

「それならいいんですけど……」

「あ、ごめんなさい」


 宮ノ下の友達がスマホを確認して、慌てた表情に。


「私、そろそろ行かないと」

「うん。委員会、がんばってね」

「がんばるよー! またね、鈴ちゃん。彼氏さんも、今度、じっくり話を聞かせてくださいー」

「え? あ……うん」

「じゃあ、また後でー」


 どこかのんびりした声を響かせつつ、宮ノ下の友達はたたたと駆けていった。

 俺は、その背中をぽかーんと見送るしかない。


「……俺、生き延びた?」

「なにを想像していたんですか、もう」


 宮ノ下は少し怒った様子で、こちらにジト目を送る。


「私の友達ですよ? 結城さんのことを変な風に言いませんし、ましてや、通報することなんてありえません」

「そう……なのか? いや、でも俺、傍から見れば……」

「問題はあるかもですけど、でも、ちゃんと相手を選んで話をしていますから。あの子は、以前から結城さんのことをそれとなく話してて、ちゃんと理解もしてくれていて、問題なんてありませんよ」

「なる、ほど……いや、うん。そういうことなら」


 安堵して。

 それから、ちょっと申しわけない気持ちになる。


 てっきり、宮ノ下が暴走したと思っていたけど……

 そんなことはなくて、彼女は彼女なりにきちんと考えていた。

 それを信じていなかったのは俺だ。


 はぁ……

 なんか、情けないな。


 宮ノ下を守ると決意して。

 でも、信じていないところもあって。

 どう接していいか、たまにわからなくなって。


 なんというか、ちぐはぐだ。

 どう向き合えばいいか、未だに迷っているのだろう。

 本当に情けない。


 ……だからこそ。


「これからは、きちんとしないとな」

「今、なんて?」

「なんでもないよ」


 宮ノ下と恋愛をするかどうか、それはさておき。

 彼女の友達にふさわしいように、しっかりしていかないとな。


「あれ? 宮ノ下じゃないか」


 ふと、そんな声が聞こえてきた。

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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