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25話 お泊まり会

「私は、世界で一番、あなたを信じています」

「……宮ノ下……」

「だから、守ってもらえますか?」

「もちろん」

「ありがとうございます……大好きです♪」


 改めて、宮ノ下を守る決意を固めた。


 とはいえ、俺にできることは限りがある。

 先輩やマスターにアドバイスをもらったように、まずは警察に連絡をしよう。


「宮ノ下、警察に連絡するけど、いいよな?」

「はい。結城さんにお任せします。ただ……」

「ただ?」

「私達の関係については、ちょっと言い訳を考えておいた方がいいかなー……と」

「……そうだった」


 女子小学生に告白された高校生。

 下手したら事案だ。


 ストーカーよりも先に俺が捕まってしまうかもしれない。


「えっと……遠い親戚、っていう設定にするか?」

「調べられたら簡単にバレちゃいますよ。事件性のある内容ですから、そこら辺は、向こうもきちんと調べると思います」

「そう言われると……なら、家庭教師と生徒、っていう関係にしておくか」

「そうですね……はい。それなら問題ないと思います。パパとママに話が行くかもしれませんけど、その辺りは今、辻褄を合わせておきますね」


 宮ノ下はスマホを軽快に操作した。


「これでよし、です。じゃあ、警察に行きましょうか」

「了解。念のため、なにが起きてもいいように心構えを」


 事件が起きないことを祈るが……

 もしもそうなったら、絶対に宮ノ下は守る。




――――――――――




 警察に相談をした。


 以前、先輩が言っていたように、すぐに警察が動いてくれることはない。

 犯人もわからない状態なのだから当然だ。

 それに、現状の制度では事件が起きるまで動くことはできない。


 ただ、スマホのメッセージの件を知らせると、かなり重大に受け止めてくれたらしい。


 なにかあれば、迷うことなく110番をすること。

 変化があれば、また相談に来てほしい。

 それと、家から学校までの見回りを強化してくれることを約束してくれた。


「ふぅ……相談といっても、けっこう時間をとられたな」


 宮ノ下の家に戻ると、3時間くらい経っていた。

 今度は注意をしていたから、家に入るところをストーカーに見られていた、ってことはないと思う。


 ただ話をしただけなのに妙に疲れたな。

 けっこう緊張していたのかもしれない。


「それじゃあ、俺は帰るよ」


 外はもう暗い。

 これ以上、宮ノ下の家にいたら迷惑をかけてしまう。


「あ、あのっ……!」


 宮ノ下は、どこか必死な様子で言う。


「……泊まっていってくれませんか?」

「え。いや、でも……」

「その……さっき連絡があって、パパとママ、今日は徹夜みたいで……」

「マジか」

「はい、本当です」


 嘘を吐いている様子はない。

 というか、さすがにこんな嘘は吐かないか。


 宮ノ下は小悪魔っぽいところはあるものの、でも、人に迷惑をかけるようなことはしない。


 なんだかんだ、基本、良い子なのだ。

 そして、優しい子でもある。


「あー……」


 男子高校生が女子小学生の家に泊まる。

 事案。

 バレれば逮捕?


 色々と悪い想像が頭をよぎるものの……

 でも、それ以上に宮ノ下のことが気になった。


 質の悪いストーカーに狙われている。

 そんな状態で、夜、一人で過ごすことはかなりの恐怖だろう。


「……わかったよ」

「本当ですか!? やったー、やりました!!!」


 怯えていた姿はどこへやら。

 宮ノ下は満面の笑みを浮かべて、さらに、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現する。


「……怖いんじゃないのか?」

「怖いですよ? でもでも、それ以上に、結城さんとお泊りできる方が嬉しいです!!!」

「えっと……」

「せっかくだから、今日は夜更かししましょうね? あとあと、やっぱり同じベッドで寝たいです! それと、明日の朝は、モーニングコーヒーとやらを楽しみたいです!」


 ……やっぱり帰ろうかな、と思ってしまうのは仕方ないことだと思う。

 仕方ないよな?


「それじゃあ、さっそく準備をしましょう!」

「準備って……なんの?」

「ご飯ですよ?」


 当たり前じゃないですか、という感じで言われてしまう。


 宮ノ下のことだから、てっきり……


「おやおや?」


 宮ノ下がニヤリと笑う。


「今、なにを想像したんですか?」

「……なにも」

「本当ですか? 女子小学生と一緒にお泊りと聞いて、なにかこう、いけないことでも想像したんじゃないですか? むふふな妄想ですか? やーん、えっち♪」

「帰るか」

「あああああぁ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 置いていかないで、帰らないでくださいいいいいっ!!!」


 腰の辺りにしがみついてきて、必死に引き止めてきた。


 まったく……

 最初から、これくらい素直ならいいものを。


 でも、まあ。

 怖いから、無理をして元気にしているところもあるわけで……

 それを考えると怒るつもりにはなれない。


「俺はなにをすればいい?」

「へ?」

「ご飯、作るんだろう? ちょっとくらいなら手伝えるよ」

「あ……はい! 一緒に作りましょう! 愛の共同作業です!」

「まったく……」


 すぐに笑顔になる宮ノ下。

 でも、そんな宮ノ下は、純粋に素直に可愛いと思った。


「えへへ♪ ご飯、がんばって一緒に作りましょうね! 結城さんと一緒なら、きっと、すごく美味しいご飯ができますよ! よーし! やる気が出てきました、えいえいおーっ!」

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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