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22話 忍び寄る悪意

「あ、あの……部屋の中に……」


 余裕のない声。

 女子小学生の部屋に入るなんて、とか妙なことを考えている場合じゃない。


 ドアノブを捻り、中へ入る。


「……」


 宮ノ下はベッドの上に座っていた。

 いつもの笑顔は消えて、わずかに涙がにじんでいる。


 その視線の先に、スマホ。

 投げたような感じで床に転がっていた。


「宮ノ下?」

「……っ!」


 親を見つけた猫みたいな感じで、ぎゅっと抱きついてきた。


 震えている。

 いったい、なにが……?


「大丈夫だ」


 気になるものの、今は宮ノ下を落ち着かせないとと思い、ゆっくりと彼女の頭を撫でた。

 子供扱いになってしまうが……

 こういう時、頭を撫でられるなど、なにかしらの接触があれば落ち着くものだ。

 抱きしめるのも効果的だけど、さすがにそれは……となる。


「……ありがとうございます」


 ややあって、宮ノ下がそっと離れた。

 よかった、落ち着きを取り戻したみたいだ。


「どうしたんだ?」

「その……これを見てください」


 宮ノ下は床に落ちているスマホを拾い、こちらに画面を見せる。

 メッセージアプリが起動していた。


 そこに書かれているのは……


『僕ではない男を家に招いたのかい? ダメだ、それはダメだ。いけない。君の隣にいるのは僕であるべきだ。すぐに間違いを正そう、間違いに気づいて欲しい』


「これは……」

「さっき、いきなりこんなメッセージが届いて……それで、ものすごく怖くなってしまって……すみません」

「謝る必要なんてないよ。こんなの、誰でも怖い」

「……ありがとうございます」

「それにしても、これは……」


 どういうことだ?


 メッセージにある『僕ではない男』というのは、俺のことだろう。

 そして、送り主はストーカーであることに間違いない。


 宮ノ下をストーカーしているのなら、俺の存在にすぐ気づく。

 だから、この部分の意味は理解できるのだけど……


 犯人は、なぜ宮ノ下にメッセージを送ることができた?

 そこが謎だ。


 メッセージアプリは、基本、相手のIDか番号を知らないとメッセージを送ることはできない。

 犯人は宮ノ下の個人情報をすでに手に入れていた?

 でも、どうやって?


 宮ノ下は小学生だけど、とても賢い。

 見ず知らずの人に連絡先を教えるはずがない。

 流通させるような人に教えることもないだろう。


 宮ノ下の友達が犯人……っていうのは、さすがにないよな。

 これは、子供がやることじゃない。

 悪意がすさまじいというか、えげつなさが半端ないというか、子供のいたずらのレベルを軽く超えている。


 だとしたら、同じ子供経由で情報を手に入れた?

 あの子の情報を教えて、みたいな。

 あるいは、電子的なツールを使用した?

 クラッキングとか?


 ……ダメだ。

 推測はできるものの、これだ、と決めることはできない。


「宮ノ下。辛いかもしれないけど、細かい話を聞かせてほしい」

「は、はい……さすがにちょっと怖いですけど、結城さんが一緒だから、大丈夫です」

「ありがとう。えっと……こういったメッセージが来るのは、今回が初めて?」

「はい……今まではないです。だから、すごく驚いて、怖くて……」

「アプリのIDなどを見知らぬ人に教えた?」

「いいえ、まさか……友達だけです。あと、パパとママ」

「嫌な質問をするけど、友達は、IDを知らない人に教えたりするような子?」

「それはないと思います。あ、でも、騙されるとかはあるかもですから、絶対とは言えませんけど……」

「ふむ」


 考えてみるが、やはり答えは出ない。


「ちょっと借りてもいいか?」

「はい……」


 宮ノ下のスマホを受け取り、相手の情報を見る。


 名前は、『ハヤト』。

 IDも番号も見ることができる。特に隠されていない。


 ただ、これ以上の情報を掴むことは難しい。


 それでも収穫はある。

 犯人が、こちらが思っていた以上に狡猾で、俺達の情報をすでに掴んでいるということ。

 つまり、かなり身近にいる存在なのだ。

 それを知らないままだったら、警戒が緩み、いつか痛い目に遭っていたかもしれない。


 そういう意味では、気を引き締めることができてよかった。

 チャンスと考えることにしよう。


「私、どうしたらいいんでしょう……?」

「……どうもしなくていいよ」

「え」

「俺がなんとかするから。宮ノ下は、物語のお姫様のように守られてくれ。大丈夫。絶対に守ってみせる」

「……結城さん……」


 少しキザな台詞だったかもしれない。

 でも、本心だ。


「……ありがとうございます。結城さんがそう言ってくれて、すごく安心できました」


 宮ノ下は頬を染めつつ、そっと抱きついてきた。

 その体はわずかに震えている。


 それを少しでも収めたくて。

 宮ノ下の頭を優しく撫でる。


「ん……」

「嫌だった?」

「いえ……もっとしてほしいです」

「了解」

「……結城さん」


 宮ノ下がこちらを見上げた。

 その瞳は少し潤んでいて、かつ、情熱的に見えた。


「私は、世界で一番、あなたを信じています」

「……宮ノ下……」

「だから、守ってもらえますか?」

「もちろん」

「ありがとうございます……大好きです♪」


 純粋な好意が伝わってくる。


 それが今は嬉しくて。

 心地よくて。


 ……そして、それらの想いが俺の決意を燃え上がらせる。


 ストーカーなんかに宮ノ下を渡してたまるか。

 絶対に守る!

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] まさか、このストーカーの正体も女子小学生で、主人公の周りのJSが増えるとか…? あなたのビステマとかでも物語が進むうちにヒロインが増えていったし、バスケ選手や竜王とJSの物語とかでも物…
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