14話 プレゼント
「はふぅ……ごちそうさまでした」
宮ノ下はグラタンを食べ終えて、とても満足そうな顔をした。
喜んでもらえてよかった。
改めて、店を教えてくれた先輩とマスターに感謝だ。
「結城さんと一緒に美味しいご飯を食べて、お祝いをしてくれて、今日は最高の誕生日になりそうです♪」
「大げさだな。というか、今度、家族でお祝いをするんだろう? それなのに、今、最高とか言っていいのか?」
「それはそれ、これはこれ。最高っていう気持ちは、その時によって変わるんですよ」
「都合がいいなあ」
「女の子は都合がいいものですから、ふっふっふー♪」
卑怯だなあ。
と思いつつ、宮ノ下らしいかと苦笑した。
「結城さん、次はどこに行くんですか? 今日は結城さんがエスコートしてくれるんですよね、えへへ」
楽しみで楽しみで仕方ないという感じだ。
尻尾があれば、間違いなくぶんぶんと振られていただろう。
やはり、忠犬に見えてしまう。
頭を撫でたら、わんと鳴きそうだ。
犬耳のコスプレをしたら似合うかもしれない。
その姿を妄想……してどうするんだ、俺は!?
「どうしたんですか、結城さん。いきなりテーブルに頭をぶつけたりして?」
「いや……なんか、思っていた以上に、俺、毒されているんだなあ……って」
「???」
「気にしないでくれ。それよりも、この後のことだけど……」
「はい! デートですね♪」
「……デートでいいけど、その前に」
喜んでもらえるかな?
苦笑いとかされたら気まずいな。
あれこれと考えつつ、プレゼントが入った包みを取り出した。
「ハッピーバースデー」
「……」
プレゼントを差し出すと、宮ノ下は目を丸くして驚いた。
「宮ノ下?」
「……」
「どうかした?」
「……」
「おーい」
「……はっ!?」
ややあって、宮ノ下が再起動した。
「結城さんが……私にプレゼント?」
「うん」
「夢? 幻?」
「現実だよ、大げさだな」
「りありー?」
だいぶ混乱しているみたいだ。
苦笑しつつ、宮ノ下の額を軽くデコピンする。
「あいたっ」
「ほら、これで現実だってわかっただろう?」
「……」
宮ノ下はプレゼントを受け取り、胸元でぎゅっと抱きしめる。
そして、嬉しそうに優しく笑う。
「えへへ」
「……」
誇張表現とかじゃなくて、宮ノ下の笑顔は天使みたいで……
ついつい視線が奪われてしまう。
いやいや、待て。
相手は宮ノ下だ。
そして、小学生だ。
見惚れていたとか、そんなことはない。
ありえないぞ。
「どうしたんですか、結城さん?」
「いや……なんでも」
「……ふーん」
宮ノ下がニヤリと笑う。
「その反応、もしかして私に見惚れていましたね?」
「そんな、ことは……」
「え? あれ? もしかして本当に?」
「……」
「……」
これは宮ノ下も思わぬ展開だったらしく、キョトンとした。
次いで、嬉しそうにしつつも、頬を染めて照れる。
「そ、そうですか……えっと、その……ありがとうございます?」
「ど、どういたしまして?」
「う、嬉しいです……ありがとうございます?」
「ど、どういたしまして?」
「……はぅ」
「……むぅ」
なにをやっているんだ、俺達は?
「えっと……あ、そうだ! プレゼント、プレゼントです! 今、中を見てもいいですか? 結城さんの愛が詰まったプレゼント、家まで待ちきれそうにありません!」
「犬か」
「わんっ!」
吠えるな。
「せっかくだから、どうぞ」
「わーい」
宮ノ下は笑顔で包みを開けた。
「ショルダーバックですか?」
「色々迷ったんだけど、実用的なものがいいかな、って」
相手は小学生で、しかも俺に恋心を抱いている。
そんな宮ノ下にアクセサリーなどを贈れば勘違いさせてしまうかもしれない。
そもそも、付き合っていないのにアクセサリーは重い。
誕生日なので形に残るもの。
毎日、気軽に身に着けてもらえるようなものが理想的。
そして、選んだショルダーバッグは、最近、若い子に人気があるというもの。
可愛らしくもあり、実用性もあるという素敵な商品だ。
……という情報を真白から得たので、ショルダーバックを選んでみた。
「ありがとうございます! すっっっごく!!! すごくすごくすごくっ……ものすごーーーーーく!!! 嬉しいですっ!!!」
宮ノ下は満面の笑顔で、ぎゅっとショルダーバックを抱きしめる。
よかった、喜んでくれたみたいだ。
「神棚に飾り、家宝にしますね」
「いや、普通に使ってほしいんだけど……」
「えー。でも、汚れたり壊れたりするのが心配です」
「修理すればいいだろう?」
「他人の手が入るのが嫌です」
「なら、その時はまた買うよ」
「えっ、いいんですか? あ、でも、その場合は来年の誕生日プレゼントが……」
「来年は来年で、また別のプレゼントを用意するから。気にせず、気軽に使ってほしい」
「……来年もお祝いしてくれるんですか?」
「え? そりゃ、お祝いするだろ」
「……結城さんの中では、私達、来年も一緒にいるのが当たり前なんですね」
言われて気が付いた。
友達になるか、恋人になるか。
それは、さっぱりわからないのだけど……
でも、宮ノ下と離れ離れになっている可能性はまるで考えていない。
告白をされたのだから、来年は関係が変わっているかもしれない。
悪い方向に進んで、縁が切れているかもしれない。
でも、その未来はまったく想像していなかった。
宮ノ下が隣にいるのが当たり前に考えていた。
「おかしい、かな?」
「ううん、いいんじゃないですか? だって私も、来年も結城さんと一緒にいたいですからね♪」
宮ノ下はにっこりと笑う。
「いいえ。来年だけじゃなくて、再来年もその次の年もその次も……ずっとずっとずっと、ずぅーーーーーっと一緒にいたいです♪」
「……プロポーズみたいなんだけど」
「私はそのつもりです♪」
色々と段階を飛ばし過ぎではないか?
「まあ……来年は一緒にいよう」
「むぅ、ごまかされました」
「一緒にいたい、っていう気持ちは本当だから」
「ならよしです! えへへ♪ ちゃんと来年もお祝いしてくださいね」
そう言う宮ノ下は、とびきりの笑顔を浮かべるのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
「面白そう」「続きが気になる」と感じていただけたのなら、
『ブックマーク』や『☆評価』などをして、応援をしていただけますと嬉しいです!
(『☆評価』は好きな数値で問題ありません!)
皆様の応援がとても大きなモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!




