表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/74

13話 あちち

 今年の宮ノ下の誕生日は平日だ。

 学校が終わってからだとあまり時間がないので、きちんとお祝いをすることができない。


 なので、数日早いけど日曜日にお祝いをすることにした。


「おまたせしました!!!」


 駅前でのんびりしていると、息を切らせつつ、キラキラ笑顔の宮ノ下がやってきた。

 もしも彼女に犬の尻尾が生えていたら、ぶんぶんと振られていただろう。


「まだ約束の時間になってないから、そんなに急がなくてもいいのに」

「なにを言っているんですか! 今日は、結城さんが私の誕生日をお祝いしてくれるんですよ!? お祝いしてくれるんですよ!? 急ぐのは当たり前です!」


 大事なことだから二回言ったらしい。


「時間はあるんだから、のんびりいこう」

「いえ、のんびりなんてもったいないです。濃厚で甘くてドロっとした時間を過ごしましょう♪」

「言い方」

「でも、早くても私は気にしませんよ。その分、回数をこなしましょう」

「だから言い方」


 というか、本当、最近の小学生の知識はどうなっているんだ……?

 偏りがすぎるんじゃないか……?


「おやおや? なにを想像したんですか? 女子小学生にこんなことを言われて、あんなことを想像しちゃいましたか? エッチ♪」

「あのな……」

「でも、私はウェルカムですよ♪ 結城さんなら、いつでもどんなプレイでも受け入れますからね。あ、でも痛いのはちょっと嫌です。やっぱり気持ちいい方が好きです♪」

「そっか、お祝いしてほしくないか。それなら今日はこれで解散に……」

「あわわわ!? 待って、待ってください!? 私が悪かったので、冗談が過ぎたのは謝りますから、すぐ解散なんて殺生なことはしないでくださーーーい!」


 ふふん。

 いつもからかわれているものの、今日は俺の方が立場は上だ。

 誕生日という人質がいるからな。


 ……とはいえ、女子小学生に口で勝ったからといって、まったく誇れないが。

 虚しい。


「じゃ、行こうか」

「はい!」


 時刻は昼過ぎ。

 まずは、ちょっと遅いご飯だ。


 この日のために、美味しいと評判の店を探して、ついでに予約もしておいた。


 付き合ってもいないのに気合を入れすぎかもしれないけど……

 俺にとって宮ノ下は、それくらい大事な友達だ。

 美味しいご飯を奢るくらいはさせてほしい。


 雑談をしつつ、目的の店に移動した。


「わぁ……ここ、素敵なお店ですね。お花とか飾られていて、とても綺麗です!」

「女性人気は高いらしいから、喜んでくれてよかった」

「でも、うーん……ここ、なんの店でしょう? チーズの匂いがするのはわかるんですけど」

「グラタンがメインの店らしい。色々な種類のグラタンがあって、あと、トッピングもけっこう自由にできるとか」

「それは楽しみですね!」


 『アマリリス』の先輩とマスターに教えてもらったところだ。

 今度、なにかお礼をしないと。


 それぞれ注文をして、まずは雑談に興じる。

 といっても、俺達が雑談をすると、大抵、とある話題に固定されてしまう。


「結城さん、次のエンドコンテンツはどうしましょう? ノーマルはもちろん行くとして、ハイレベルはどうします?」

「んー……次って、フルパーティー三つの24人レイドだよな? かなりの魔境になりそうな気がするんだけど」

「固定を集めるとしたら、相当大変ですね……」

「それな。さすがに24人も集めるのは辛いから、野良か募集になるか。でも、それでクリアーできるのかどうか」

「ひとまず1週間くらい挑んでみて、いけそうならがんばる。ダメそうならすっぱり諦めて、奈落でも挑みますか? 確か、あっちも200層が解放されるんですよね」

「そうしようか」

「そうしましょうか」


 ファンネクの話で染められてしまう。

 俺も宮ノ下も生粋のゲーマーで、しかも、重度のファンネクファン。

 のんびり会話をするとなると、自然とこの流れになってしまう。


 色気もなにもないけど……

 でも、これはこれで心地いい時間だ。


「おまたせしましたー!」


 しばらくして注文したグラタンが運ばれてきた。

 たっぷり乗せられたチーズが焦げていて、ゆらゆらと湯気が漂っている。

 そして香ばしい匂いがして……やばい、ものすごく美味しそうだ。


「はわー♪」


 宮ノ下も瞳をキラキラと輝かせていた。


「「いただきます!」」


 これ以上我慢できないと、二人で一緒にグラタンにスプーンを入れた。

 そのまま、ぱくりと出来立て熱々を食べる。


「「おぉ♪」」


 これまた同じタイミングで声をあげた。


 ホワイトソースは濃厚だけど、くどくないのでいくらでも食べられそうだ。

 大きな具がゴロゴロと入っていて、溶けたチーズを絡めて食べるのがたまらない。


「これ、すごく美味しい!」

「はい、そうですね! あひゃっ!?」


 宮ノ下がはふはふと吐息をこぼしつつ、目をばってんにした。


「あうー……」

「大丈夫か?」

「ついつい一気に食べてしまいました……舌、火傷していませんか?」


 宮ノ下は涙目になり、べーっと舌を出して見せてきた。


 涙目の小学生。

 舌を見せている。


 なんていうか……

 よくわからないけど、ものすごい犯罪臭がした。


「だ、大丈夫だと思う」

「本当れすか?」

「ああ、本当だから」

「よかったれす」


 宮ノ下は舌を引っ込めて、指先で目の端を拭う。


 こんなところでドキドキするなんて、俺は変態だろうか?

 変態だな……

 どうしようもない変態だ……ロリコンかもしれない。


「どうしたんですか、結城さん?」

「……妙な悟りを開いて、虚しく悲しくなったところだ」

「???」

再びジャンル別日間ランキング1位になれました!

もう無理かな? と思っていたので、とても嬉しいです!

たくさんの応援をいただき、本当にありがとうございます!


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


「面白そう」「続きが気になる」と感じていただけたのなら、

『ブックマーク』や『☆評価』などをして、応援をしていただけますと嬉しいです!

(『☆評価』は好きな数値で問題ありません!)


皆様の応援がとても大きなモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ