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疑惑は深まる

「奴はただ十剣と皇帝を不仲にさせるためだけに用意されたのだろうか」


 牢から開放され、家でチェアに座っている結城が言う。


「どうでしょう。皇帝を信頼させ、なにか計画を練っていたのかもしれません」


「しかし、できる計画とはなんだ? 帝国と魔族の争いか?」


「魔物に町を襲わせ、それを自ら鎮圧する。そんな出来レースもできますが、最終的にはそこに行き着きますね」


「戦争を望んでいる奴がいるということか……」


 物憂げに結城は言う。


「三千の魔物が出てきた穴は発見されたそうだ。入念に封印をされた。一先ずは安心だな」


「それは重畳」


「ただ、覇者の剣が飾られていた村は全滅だそうだ」


 一馬は、手を握りしめる。


「それだよ、それ」


 結城が悪戯っぽく微笑む。


「他人のために怒れる。それは紛れもない勇者の資質だ」


「やめてくださいよ。結城さんの方がよほど勇者だ」


「しかし、覇者の剣はお前を選んだ。どんな感じだ?」


「まだ使っていないからなんとも言えませんが、光刃を使えて折れない剣っていうのは心強いですね」


「伝説の剣もお前にかかっちゃちょっと便利な武器なんだな」


 結城は滑稽そうに言う。


「で。式はいつだ」


「結城さんも来てくれるんですか?」


「ああ。しばらく仕事は休もうと思ってな。妻の傍にいようと思う」


 一馬は、思わず微笑んだ。


「それが一番ですよ」


「おかげで仕事を回されると二席と三席に文句を言われている」


「まあ、仕方ないですよ。俺が刹那さんに修行をつけてもらっていた時も、下位の十剣は苦労したと思いますし」


「そうだな」


 結城は窓の外を見る。


「なあ、一馬」


「なんです?」


「明日も平和ならいいな」


「……そうですね」


 一馬は、噛みしめるようにそう言った。

 近しい人々も、知らない人々も、きっと多くの人がそう願っているだろう。


 だというのに、何故人は争うのか。

 魔族が影にいたとしても、人が思っているほど、人は進化していないのかもしれなかった。



第六十九話 完

今週の更新はここまでです。

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