予期せぬ敵襲
祝勝会の途中で、一馬達は帰路についた。
結城も一緒だ。
今日は結城の家に泊まることになっている。
結城はほろ酔い気分らしく、何度も結婚の件について一馬をからかった。
月と窓から漏れる光だけが周囲を照らす道。
そこで、その人間は現れた。
仮面をつけて、マントのフードを目深にかぶっている。
小柄だ。女性だろうか。
その手には、剣が握られている。
一馬は咄嗟に鞘から刀を抜き放とうとした。
そして、自分の刀は折れたのだということに思い至った。
「一馬。ここは俺に任せろ」
状況を察したらしく、結城が前に出た。
そして、剣を構える。
凄まじい殺気。
相手は少し怯んだように見える。
しかし、自棄になったかのように飛びかかってきた。
なんて正確な一撃だろう。
敵の攻撃だというのに、一馬は思わず見惚れた。
ここしかない、というラインを、見事に剣が通過していく。
それを、結城は片手で持った剣で弾いた。
剣が幾重にもぶつかりあう。
結城は片手で。相手は両手で。
理想的なラインを走る剣。それが、結城には届かない。
「酔いが覚めてきたな……」
そう呟くと、結城は片手で剣を弾いて、もう片方の手で相手の後頭部を掴んだ。
そして、結城は地面に相手の顔を叩きつけた。
敵は後退し、仮面がひび割れて落ち始める。
必死に隠したが、無駄だ。
表に出たその顔は、一条神楽のものだった。
第六十六話 完
次回『悪に堕ちる』




