作戦会議
「まずは手の内を確認しよう。戦力を把握しないことには作戦の立てようがない」
そう言って、結城は地図を広げる。
一馬一行は、各々のできることを申告した。
「ほう、遥さんは飛燕が使えるのか」
結城は感心したように言う。
「と言っても、まだまだ射程距離が短い。私の飛燕ほどではない」
スピカが淡々とした口調で言う。
「時間さえあれば私を超えたかもしれないけれど、今はその時間がない」
「いや、範囲攻撃は一つでもあるのがありがたい。なにせ、十対三千だからな」
十対三千。その一言を告げられるたびに気が重くなる。
結城は、顎を撫でてしばらく考え込む。
「北門。天道寺結城」
周囲がざわめいた。
結城は淡々と、彼の名前を書かれた札を城の北に置く。
「あやめ。君の範囲攻撃は遠くには届くが横幅は広くないはずだな」
「ご明察ってね」
「西門、鬼龍院あやめ、静流」
静流が呼ばれて、難しい表情で一つ頷く。
「私の炎の壁はどんな相手も通さないだわさ」
「その意気だ」
結城は微笑んで、あやめと静流の名前が書かれた札を城の西に置いた。
そして、再び彼は考え込む。
「東門、スピカ、雲野朝」
「は、はい!」
「はい」
朝がひっくり返った声で返事をする。
「朝も、夕も、存分に活躍してくれ。序盤は朝の矢で、中盤は夕の剣技で」
そう言って、結城は二人の名前を書かれた札を東に置く。
「南門、二神一馬、遥、赤羽刹那、来須新十郎」
「まあ妥当だな」
新十郎が呟くように言う。
「遥さんの飛燕は未知数だ。三人でそれをフォローしつつ、新十郎の八撃彗星で敵を削ってくれ」
「八撃?」
四撃彗星だったような気がするが。
「新十郎の必殺技は八撃彗星だぞ?」
一馬は、戸惑うように新十郎の顔を見た。
「十剣が旅人に本気をだすわけにもいくめえ」
「手加減していた、ということですか」
「まあ、どの道負けていたとは思うがな。断界。あれは厄介だ」
確かに、新十郎は断界を破れずに一馬に敗退した。四本が八本に変わろうと結果が変わったとは思えない。
「十剣見習いはドラゴンライダー対策として残す。正味、我々は空の敵まで対処する余裕はないだろう」
「まあ無難だな」
新十郎は頷いた。
四人の名前を書かれた札が南に置かれる。
「いかがでしょうか、我が主」
結城が皇帝に目を向ける。
「任せよう。軍事面に関して私は凡庸だ」
そしてしばし地図を見て考えた後、口を開いた。
「王都、をいい加減帝都に名をあらためなければと思っていたところだ。今回の件はその良いきっかけとなるだろう」
彼は、結城を見ると、肩に手を置いた。
「任せるぞ。十剣」
「期待に応える戦果を上げてご覧に入れましょう」
そう言って、結城は胸を張った。
皇帝は部屋を去っていく。
結城は安堵したように、その場であぐらをかいた。
「自信の程はいかほどだい? 大将」
新十郎が問う。
「ドラゴンライダーの数が未知数だな。目撃証言はないのだが」
結城は頬杖をつきながら言う。
とにかく、十対三千の手筈は整ったわけだ。
「これ、このメンツじゃなかったらただの処刑会場だわさ」
静流が呆れたように言った。
第六十一話 完
次回『一時の休息』




